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36 魔貴族ノエラとの戦い その4

 襲い来る吸血鬼をレイが左手の鋼の剣だけで次々に斬り伏せる。


「す、すごい! 聖剣を使ってないのに……」


 吸血鬼も羽虫の大群のように押し寄せてくるのに、レイを中心として竜巻のごとく吸血鬼が散っていく。

 右側を守るジョン達の出番はレイの戦いぶりの解説だけになっていた。

 レイもまるで自分がアンジェのごとく強くなったと感じる。

 もちろん本人がそう思っているだけで、実際にはアンジェよりも遥かに強いが。


「体が軽い!? 力が溢れる!?」

『感応率が上昇しています』


 吸血鬼と戦いながら自らの変化を驚くとティファが答える。


「なに? かんおうりつ?」

『私の力を引き出す力が上がっているのです』

「ティファの力か? うお?」


 レイの使っていない右手の剣が光る。

 

『こんなに早く、これほど大きな力を出せるとは』

「なんかよくわからねえけど、全く疲れねえぜ!」


 レイの動きは増々スピードが上がっていく。

 だが、徐々に吸血鬼の勢いは増していく。

 レイが扉を守る番になってから既に二時間は経っているが、時にレイが吸血鬼に組み付かれそうになる。


「どうして? 吸血鬼が増えているのか?」


 ジョンが叫ぶ。

 そうではなかった。


「峰打ち?」


 レイは聖剣と鋼の剣で吸血鬼を峰打ちしていたのだ。


「だって元々冒険者だろう?」

「し、しかし……」


 ジョンの周りの人間も言いたいことは同じだろう。

 吸血鬼に峰打ちをしてもすぐに復活して襲いかかってくる、と言いたいのだ。

 斬り伏せるしかないのだ。

 解説だけしていたジョンも既に剣を振っている。

 レイは吸血鬼になった冒険者も殺したくないのだ。

 右手の聖剣は光を更に増し、レイの動きのスピードも更に増しているが、斬られておる吸血鬼はレイ以外が斬った吸血鬼だけ。

 復活する吸血鬼のほうが圧倒的に数が多い。

 時間は少しづつ経過していくが、レイに倒れていた吸血鬼も立ち上がっていきに数を増していく。

 

「うおおおおおおおおおお!」


 レイが雄叫びあげる。

 同時にレイの速さが、他人からその体を複数に見せるほどの速度になる。


「ええええ?」


 それに気を取られた衛兵の足に倒れていた吸血鬼が取り付いた。

 同時に吸血鬼がバラバラになる。

 レイが鋼の剣で斬ったのだ。


「頑張れ! 後少しだ!」


 また峰打ちを続けながら、レイが励ます。

 しかし、それは絶妙な緊張のバランスを崩す契機となってしまった。


「ぎゃあ」

「ぐわ」

「ああああ」


 詰め所の兵士と冒険者達が立て続けに吸血鬼に噛まれてしまう。

 すぐに吸血鬼になってしまう訳ではない。

 噛まれた兵士や冒険者も懸命に戦ってはいるが、しばらくしたら吸血鬼になって敵になってしまう。

 完全に無事なのはレイとジョンしかいない。

 誰もが懸命に戦うが、最初に噛まれた冒険者が口から泡を吹き出した。


「くそっ! 限界か!」


 レイが鋼の剣をひねって刃を真正面に向ける。

 その時、詰め所の扉が空いた。


「レイ!」


 アンジェの叫びだ。


「ったく。レイのお人好し!」


 ルシアが氷つぶての魔法が周囲の吸血鬼を弾き飛ばす。


「もう回復したよ。心配かけてごめんね」


 リンスの光の空間ができて、後ろから来た吸血鬼を防いだ。


「はいはい。今から縛るからね」


 アンジェが吸血鬼になりかけた冒険者を手早く縛っていく。


「お前ら助かったよ」

「後少しで夜が明けるみたい。さあ魔貴族を倒しに行きましょう!」

「しかし……」


 レイは三娘を詰め所に残して、一人で戦いに行くつもりだった。

 だが、アンジェは噛まれた兵士や冒険者を縛り上げて詰め所の中に蹴り込み、詰め所の扉をバターンと閉めてしまった。


「危険だぞ?」

「だから何よ」


 ルシアは既に地図を広げている。


「さっ地下10層に走るわよ」


 レイがそれでも逡巡している。なぜなら詰め所を守る戦力も必要だからだ。


「レイさんが真祖を斬らなければ僕たちも結局全滅です。どうか皆さんで早く!」


 他の兵士や冒険者達も賛同する声が聞こえる。

 アレだけ怯えていた兵士や冒険者がどうしたのだろうとレイが思った時ティファが言った。


「皆レイさんに感化されたんですよ! 行きましょう!」

「わかった」


 レイと三人が走る。9層に降りる階段はすぐだ。


「アッチよ」


 ルシアが道案内をして通路を右に曲がると吸血鬼ではなく巨大なモンスターが襲ってくる。

 蜘蛛のモンスターと言われているオイドゥだ。

 実際にはカマドウマだが。


「レイとリンスは魔貴族まで力を温存しといて」


 アンジェが正面に飛び出す。

 いつもは気持ち悪いと虫のモンスターはレイに任せるアンジェが巨大なモンスターを大根のように輪切りにする。

 9層になると吸血鬼は強力なモンスターに負けてしまうのかほとんど出てこない。

 アンジェもその実力をいかんなく発揮する。

 レイはアンジェを見てアッサリと魔貴族など倒してしまうのではないかと笑ってしまう。


「何、笑ってるのよ」

「笑ってない、笑ってない」


 問い詰められながら走っているとすぐに10層に降りる階段になる。

 ルシアが地図を見ながら10層のもっとも深い場所に行く道を指でさす。


「こっちね」

『ちょ、ちょっと待ってください。道が間違っていませんか? そちらからはノエラからの気配を感じません』


 ティファの声はレイにしか聞こえない。


「ちょっとレイなにやってるの?」

「いやティファが道が違うんじゃないかって」

「だって地図が……」


 レイはティファに話しかける。


「ティファ、ノエラの気配から方向がわかるか?」

『はい』


 レイがルシアに言う。


「ティファはノエラの方向がわかるらしい。そっちに言ってみよう」

「まあどうせ10層までしかないとされているダンジョンだけど」


 ティファの誘導でレイが走る。

 三人が後ろからついていく。


『そこを左です』

「わかった」


 通路を90度曲がる。

 ところが通路はすぐ行き止まりだった。


「げっ」


 レイが急ブレーキをかけて止まろうとするも後ろからは三人がぶつかってきた。

 倒れ込む三人と飛ばされるレイ。

 しかし、壁にはぶつからなかった。

 レイが振り向くと後ろには壁がある。


「いったーい。あれ? レイは何処?」


 壁の向こう側からはリンスの声が聞こえた。

 レイが壁を触ると手がすっと吸い込まれた。


「何だこの壁?」


 レイが体ごと壁にのめり込む。

 二、三歩、歩くと三人の姿がある。


「レ、レイ?」


 後ろを振り向くと壁があった。


「なんだこれ? 幻の壁?」

「映像の幻術を壁に使ってるのね。戦闘に使われるけど施設に使われるのは珍しいわね」


 ルシアが説明してくれた。

 壁を超えて走るとすぐに11層に降りる階段があった。


「マジであったよ。未踏破の階層」

「だよね。だよね。大発見だよね」

「大儲け、大儲け」


 アンジェ、ルシア、リンスが興奮している。

 この時代のダンジョンはいわば鉱山だ。モンスターは資源ともなる。

 新しい鉱脈を見つけたのに等しい。


「早く行くぞ!」


 レイが真っ先に下に潜る。

 するとダンジョンの中にも関わらず、景色は美しい花畑になる。


「どういうことだ?」

「幻術じゃない」


 リンスがそう言った瞬間にドサッという音が二回聞こえる。

 振り向くとアンジェとルシアが花畑に倒れていた。

また少しづつ更新していきます! よろしくお願いします!

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