表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/40

30 火山迷宮の罠 その2

「大丈夫だ。ルシア。でもユアを殺さないでくれ」

「ユア? 目の前の魔法使いのこと?」

「ああ!」


 レイとルシアが会話している最中にも魔法の火球が飛んでくる。

 それをルシアが魔法の水球で相殺した。


「な、なんで?」

「魔貴族のノエラに操られてるだけなんだ」

「解く方法は?」

「……ない! らしい」

「ないらしいって」


 従騎士アスが笑う。


「はーっはっは! ノエラ様の支配は絶対だ。それに動くな!」


 アスはドワーフ娘レイナの首に爪をさらに深くめり込ませた。


「ひっ」

「動いたら掻き切るぞ。な!?」


 瞬間、アスの両腕が宙に舞っていた。長身の剣士が支えるものを失ったレイナを受け止める。

 剣士の剣筋は見ることもできなかった。


「ぐわあああああぁっ!」

「ガーランドッ!」

「こんな魔族に苦戦するな。後はお前がやれ」


 ユアの魔法攻撃はルシアが止めている。

 レイは聖剣の自動回復でかなり回復していた。

 両腕を失って逃げようとするアスの前に立ちはだかる。


「く、くそ! あと一歩で聖剣の英雄を殺れたのに! ぐあっ! ノ、ノエラさま~!!!」


 レイが正中線からアスを両断する。

 するとアスは灰となって消えた。魔族の最後の姿だ。

 レイは休んでいる暇も無かった。 

 背後から攻撃を受けたような衝撃と轟音が響く。

 ルシアとユアが魔法をぶつけ合っていた。

 やっぱり〝使い魔〟を倒しても魔貴族の支配は解けないようだ。

 相殺しているところを見ると二人の魔法の威力は同じ。いや、ルシアが合わせているんだろうとレイは思う。

 案の定、ルシアが悲鳴をあげた。


「こ、殺さないなんて無理よ。早くなんとかして~」


 なんとかしようにもレイには魔神の支配についてのことなどわからない。


「ティファ!」

『ごめんなさい。少なくとも私は支配を解く方法を知りません……』


 ガーランドが剣を構える。


「斬るだけなら容易いぞ……」

「ま、待てっ。ユア止めろ!!!」


 レイが必死に呼びかけても、火球は飛んでくる。

 それを聖剣で二つにした。

 やはり魔貴族の魔族や魔物に対する支配は絶対なのかとレイが思う。


「きゃっ!」

「あ、しまった!」


 ルシアの水魔法の威力がややユアの火魔法の威力を上回ってしまい、ユアが吹き飛ぶ。

 こめかみから血が流れる。火山の岩で打ったのだろう。


「レイイィィィィィィ!」


 だが、ユアはすぐに立ち上がり、レイに魔法攻撃をする。

 ルシアが割って入り、また魔法攻撃で相殺するが、またユアの魔法攻撃の威力を上回りそうになる。

 魔法攻撃を続けることよりも加減に苦労している。

 このままだといつかルシアの魔法攻撃の威力が決定的に上回り、ユアを殺してしまうかもしれない。

 そして殺しきれなければ、襲ってくる。永遠に。

 レイが静かに聖剣を構えた。


「アドバンスは今日、俺が残った二人を斬って終わりだ」


 いつか地獄で会おうユアと、レイが覚悟を決めた時、男性なのか女性なのかわからない声がした。


「来てもすることないかと思ったけど、僕の出番じゃないか?」


 レイが振り向くとサキュラがフワフワとわずかに浮かんでいた。


「サ、サキュラ! ノエラの支配を解けるのか?」

「ノエラの支配を解けるわけじゃないけどね」


 魔法詠唱の合間、合間にルシアが叫ぶ。


「……なにか……出来るなら……早く~!」


 ルシアの魔法攻撃とユアの魔法攻撃がぶつかり光った瞬間、サキュラが風のようにスーッと移動してユアの目の前に立つ。

 手の平で額をつかむとユアは膝からクタッと倒れてしまった。


「な、なにをした?」


 レイが剣をサキュラに向ける。


「や、やだな。彼女を救ったんじゃないか。同盟の仲間として」

「殺すなって言っただろう!」

「殺してないよ」

「支配は解けないって言ってたじゃないか?」

「解けないから、同じ魔貴族の僕が、より強い力で支配を上書きしたんだよ。直接ね」


 レイは魔貴族の支配の上書きという言葉に呆然となる。


「そんな手があったのかよ……」

「うん。レイを憎めって命令されてたみたい。今は眠れって命令したけどね」

「なら?」

「うん。ユアさんだっけ? 彼女は無事だよ」


 レイがほっと息をつくとルシアが膝をつく。レイがそばに走り寄った。


「ルシア、大丈夫か?」

「私は疲れただけ。それよりレイは?」

「俺は聖剣の自動回復があるから問題ない」

「そう……よかった……」


 ルシアはサラマンダーの依頼にきな臭いものを感じてガーランドとサキュラと援軍を頼んだのだろうと、レイも気づいていた。

 今思うとアンジェもそんなようなことを言っていた。


「お前、熱いところ嫌だったんじゃないのか? 素直に言えばいいのに」

「ちがっ! もうっ!」

「ごめん。さすがワイルドローズのブレインだ。あ、そうだハッサン!」


 倒れているはずの場所に、ハッサンが居なかった。

 ルシアが親指で示したところにハッサンはいた。

 ハッサンはあの怖い奥さんに看病されて包帯を巻かれている。


「こんな浅い傷で!」

「いて! 頑張ったのにそりゃないよ!」


 包帯の上からハッサンを叩く。

 ハッサンも実力者だ。半分に折れた剣で深手は追わなかったのだろう。


「ハハハ」

「彼女にここまで案内してもらったの」


 レイが笑うとルシアが教えてくれた。


「そうだったのか。助かったよ」

「どーいたしまして。それよりサキュラはあんなことができるならなんでもっと早く助けてくんないのよ」


 ルシアが怒る。魔法の連続使用は魔力だけでなく、精神力も削られる。


「すぐ助けたら同盟のありがたさを感じられないだろ? 一番、感じられる時に助けのさ」

「くっ。この!」


 殴りかかろうとするルシアをレイが羽交い締めで止める。


「で、ユアはどうするんだ?」

「どうしようか? レイに素直になれとでも命令をすれば、大丈夫だと思うけど」


 サキュラが笑い、ルシアの暴れる力がさらに強まる。


「や、やめてくれ。本人の意志に戻れとか命令できないのか?」

「できるけど僕は嫉妬の罪だからね。それじゃあ、あんまり楽しくないなあ」

「楽しい、楽しくないじゃねえんだ!」

「仕方ない。君のためだ」

「あー待て待て」

「ん?」

「戦ったここじゃショックだろ。起こすのは街に戻ってからにしよう」


◆◆◆


 レイ達はドワーフ村のハッサン達に「また来る」と別れを告げた。

 ユアを眠らせたまま馬車でダボスの街に戻った。

 ヴァンについてはガーランドが崖下を捜索したが、姿を消していた。

 今ユアは宿屋のベッドで寝かされていた。

 ワイルドローズのメンバーにサキュラもいる。

 レイは前のパーティーだったアドバンスのことを皆に話したあとでユアを起こすことにした。

 サキュラが手をユアにかざす。


「それじゃあ、起こすよ」

「あぁ」


 ユアがゆっくりと目を覚ました。


「ユア、大丈夫か? 気分悪くないか?」


 ベッドのそばにいたレイが話しかける。ユアは飛び起きてレイに抱きついた。


「ごめんなさいレイっ! 痛かったでしょ!」

「大丈夫、大丈夫だよ」

「私、本当はマウアーが羨ましくて」

「わかってる。いいんだ」


 レイを憎めと言われ、憎んでも嘘をつくわけでも、レイに対しての感情が無くなったわけではない。

 そんな心境でユアはレイと戦わされていたのだ。


「ごめんなさい、ごめんなさい」


 アンジェ達もアドバンスの話を聞いた後では邪魔することもできなかった。

 二人を置いて皆出ていくことになった。

 出ていく間際にサキュラがレイに耳打ちする。


「10%ぐらいはレイに素直になれって命令しといたよ」

「なんだって?」

「僕の罪は嫉妬だからね」


 レイは去ろうとするサキュラを止めたかったが、ユアにギュッと抱きしめられて動けない。

 二人を残して宿の部屋のドアはそっと閉められたのだった。

感想や評価があると凄く嬉しいので励みになります。

次回の更新は1月11日予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ