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この謎が解けますか? 2  作者: 『この謎が解けますか?』企画室
この謎が解けますか?
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殺人クイズ

Author:山本正純


関連作品 奇妙なラブレター  http://book1.adouzi.eu.org/n8858bs/

 ある日の放課後。月守学園つきもりがくえんに通う高校二年生の春上博也はるうえはくやは金髪碧眼の少女と帰り道を歩いていた。

 その少女の名前はテレサ・テリー。彼女は帰国子女で推理オタクとして学園内では有名になりかけている。

「テレサ。二階堂晴男(にかいどうはれお)のサイン本が欲しくないか。しかもタダで貰えるかもしれない」

 その春上の言葉を聞き、テレサは目を輝かせる。二階堂晴男はテレサが一番好きな推理作家である。その大好きな作家のサイン本がタダで貰えるというのは彼女にとってとてもうれしいことだった。

「どうやったら貰えるの」

「推理クイズだよ。インターネットの懸賞サイトに載っていたんだ。ある推理クイズに正解した人の中から抽選で十名様に二階堂晴男のサイン本をプレゼントするって。一応そのクイズを印刷したけど、応募するか」

「もちろん」

 その答えを聞き春上は推理クイズを読み上げる。


「ある旅館の共同トイレの洗面所の前で南蘭子(みなみらんこ)という女将が後頭部を鈍器で殴られて殺害された。遺体の近くには血で書かれたSというダイイングメッセージが残されていた。さらにこの旅館に泊まっていてアリバイがなかったのは三人だけだった。さて南蘭子を殺害したのは次の三人の内誰でしょうか。一番。図書館司書の佐倉花陽(さくらはなよ。二番。シェフの加々美四朗かがみしろう。三番。格闘家の遠藤克己(えんどうかつみ)

 その問題を聞きテレサは頬を緩ませた。

「一応その問題を印刷した紙を見せて。確認したいことがあるから」

 春上はテレサに問題が書かれた紙を渡す。その紙を見た瞬間、テレサは答えを確信した。

「答えは分かったけど、春上君は誰が犯人だと思う」

「それは佐倉花陽か加々美四朗だろう。ダイイングメッセージはSだ。これは犯人の頭文字がSだということを示している」


 テレサはその推理を聞き、腹を抱えて大笑いした。

「残念。見事に引っかかったね。ダイイングメッセージに注目したのはよかったけど、間違っているよ。ヒントは殺害方法と殺害場所にある物。そして容疑者の名前」

 そのヒントを聞き春上は首を傾げた。

「さっぱり分からない。犯人は誰だ」

「答えを知りたいなら、犯行現場に行こうよ」

「犯行現場って。これは推理クイズだから現場なんて実在するはずがないだろう」

「大丈夫。犯行現場は実在するから。それもこの近くに」


 夕日が沈もうとする頃、春上はテレサに連れられて公園にやってきた。

「どこまで歩くんだ」

 春上が聞くとテレサは立ち止まり、前を指さした。

「あそこが犯行現場だよ」

 テレサが指さす先にあるのは、トイレだった。

「トイレか。でも俺は男だから一緒に行けないのではないか」

「大丈夫。ここのトイレはクイズと同じ共同トイレだよ」


 二人は共同トイレの中に入った。共同トイレ内は明るいが、蜘蛛の巣が目立っている。

 そのトイレ内でテレサは春上に聞く。

「犯行現場に来て何か気が付かないかな」

「何も分からない」

「それでは事件を再現してみようかな。春上が被害者役で私が犯人役。まず被害者はトイレの洗面所の前に立つ」

 春上はトイレの洗面所の前に立ってみる。鏡に背を向けて。向かい合うように立っているテレサはそれを見て言葉を付け加えた。

「それだったら後頭部を殴れないでしょう。私に後頭部が見えるように立って」

 指示に従った春上はテレサに背を向けるように立つ。その瞬間春上は気が付いた。

「そうか。犯人は加々美四朗だ。犯行現場には共同トイレ。トイレ内には必ず鏡があるはず。現場にある鏡が意味しているのは犯人の苗字。ダイイングメッセージが意味しているのは、犯人の名前の頭文字。だから加々美四朗が犯人だ」

 春上は名推理をしたつもりで威張る。だがその推理を聞いたテレサはため息を吐く。

「残念。ダイイングメッセージと私が言ったヒントに注目したところまではよかったけど、間違いだよ」

 テレサは鞄からルーズリーフを取り出し、容疑者の名前を漢字で書く。

「犯行現場にある鏡が示していたのは、犯人を暴くヒントだよ。見えるよね。これが答え」

 テレサは容疑者の名前が書かれた紙を鏡に映す。

「ほら。見えるでしょう。犯人は格闘家の遠藤克己。己っていう漢字を鏡に映すとSのように見えるでしょ。だから彼が犯人だと思う」

「でもそれが答えだとは限らないだろう。ミステリファンを狙った引っ掛けかもしれない」

「だったら賭けをしようよ。私は三番で応募するけど、春上は一番か二番で応募する。これで答えがはっきりするよ」

「分かった。どうせなら幼馴染の江角千穂えすみちほにも参加をお願いする。俺は二番で応募するから、江角は一番で応募してくれって」


 それから一か月後、テレサは春上がいる二年二組の教室に顔を出した。そんな彼女の手には二階堂晴男の推理小説の単行本が握られている。

「春上君。やっぱり答えは三番だったよ。昨日このサイン本が送られてきたから。同封されていた手紙によると、正解者は十名だけだったってさ。つまり正解者全員に送られてきたということだよ」

 春上はテレサが素晴らしい推理力の持ち主であることに感心する。念願の二階堂晴男のサイン本をゲットしたテレサは笑顔になった。

***The Next is:『サムシングフォーの殺人』

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