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クライマックスなう!~彼女の秘密とおれのうそ~  作者: このはな
3.彼女のひみつとおれのうそ
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「いったい、何をしたっていうんだよ……」

 ひとりごちたあとに、おれはうなだれた。足元がぐらんぐらんと揺れているような気がする。その場にへたり込む。

 なんてこったい!

 大きな声で叫びそうになってしまった。けど、ここは病院だ。ぐっと歯を食いしばり、耐えるしかなかった。


 そうだ。落ち着いて考えてみるんだ。

 桃ちゃんが逃げるように去ってしまったのには、ちゃんとしたわけがあるはず。まずは、それがなんなのか知らなければ……。

 いま一度、彼女の会話を思い出そう。どうして、こうなってしまったのか。その原因を探るのだ。


 さっき、桃ちゃんはなんて言ったんだっけ。

 確か、おれが「中に入ったらどうですか?」と訊いたんだ。そうしたら、彼女は「佐古くん、汗をいっぱいかいてるから……」と言って……――。


 げげっ!

 おれって相当、汗臭いのか? ペットボトルを投げつけられるほど、ガマンできないとかっ?

 だとしたら、やばいかもしんないー。めちゃくちゃ、へこむよう。ううっ。


 鼻をクンクンさせていた、ちょうどそのとき、携帯の鳴る音がした。のろのろと立ち上がり、椅子に掛けておいたコートのポケットから携帯を取り出す。着信画面を見ると、堀越からであった。

 グッドタイミング。堀越は野球部だから、デオドラントについて詳しいかもしれない。よっしゃ、訊いてみよう。


 喜び勇んで、携帯を耳にあてる。

「もしもし?」

 堀越の声が飛び込んできた。

『おい、佐古っ。大変やぞ! 非常事態やっ』

「は? 非常事態……?」

 非常事態と言うことだけあって、堀越は焦っているようだった。こんなにも動揺してる堀越、未だかつてお目にかかったことがない。


 なんか、嫌な予感がする……――。

 

「あー、もう。どうしたんだよ。なんかあったのか? おれの方だって困ってるところなのに」

 すると、堀越は『おまえのことなんか、後回しだ』と冷たく言い放った。

『なあ、落ち着いて聞けよ。さっき会社の方に連絡があってだな』

 堀越の声が一段と低くなる。

「お、おう」

『おまえちの母ちゃん、倒れたんだと。救急車で運ばれたらしいぞっ。早く中央病院へ行け! そっちから行った方が近いだろ?』


「なっ、なんだって……?」


 携帯がおれの手から滑り落ちた。



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