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「みなさーん! 今日はパンダのパン太郎くんが遊びに来てくれましたよー。はい、拍手ー」
元気でハツラツとしたお姉さんに紹介されながら、おれはステージに立った。パチパチという拍手のなか迎えられる。
ふうー、緊張するなあ。
「よっこいしょ」と足の向きを変え、ステージの正面を向いたところまではよかったけれど。
はううっ!
想像以上にお客さんが集まっていたので、おれはびびってしまった。思わずたじろぎ、じりじりとステージの後方に後ずさりする。院内学級の部屋を借りて作られた狭いステージだったから、すぐ後ろの壁にぶつかってしまった。
ど、どうしたらいいんだろうか。司会のお姉さんに任せて、ただ立っていればいいと、桃ちゃんには言われたが。どうにもこうにも、プ、プレッシャーが……。
松葉杖をついたり車いすに座ったりしている小さな子供たちが、嬉しそうな顔で、おれの一挙手一投足を食い入るように見つめているのだ。沙幕の向こう側に広がる光景を思うと、心臓がばくばくする。
ピンチヒッターだからといって、子供たちの期待を外すわけにはいかないよなあ。はやくウケることをしないと……。
迷っている暇はない。
えーい、ままよっ!
思いきって手をあげてみる。
「パンダさーん」
「パンちゃーん」
もみじのように小さな手が、いっせいに振り返されて。
あっ……。
嬉しいのと同時に胸が熱くなってしまった。




