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桃ちゃんから出された宿題とは、次のとおりのものだった。
『普通の男子高校生+(プラス)パンダ傘=(イコール) その答えは?』
なんのことなのか、さっぱりわからなかった。いや、その答えは紛れもなく、おれ自身だ。でも、それでは簡単すぎるしな。……うーむ。
桃ちゃんのことだから、仕事から余りにもかけ離れた問題ではないだろう。
そう考えたおれは、ヒントをつかむため、この数日ネットで検索したり、片っ端からビジネス本を読んだりした。その努力の甲斐があり、母ちゃんのおかげでもって答えを知ることができた。
ようし、待ってろよ。桃ちゃん!
次の日、おれは宿題の回答を持って意気揚々とバイト先へ向かった。
ああ、それなのに。
「佐古くん、準備はできた?」
桃ちゃんのくぐもった声が聞こえてくる。
「あ、はい。だいじょうぶです」
と返事をかえしたものの、厚い障壁により、おれは外界と隔たれている状態であった。声が届いたか心配になる。しかし、そんな心配など無用であった。
「だめじゃない、佐古くん。しゃべったりなんかして。今の君は人間じゃないのよ!」
桃ちゃんに叱られてしまったからだ。
なんだ、返事をしたらダメだったのか。訊かれたから答えただけなのに。それならそうと、最初からはっきり言ってくれよっ。
仕方がないので、わかったの返事のかわりに、手で大きな丸をつくって合図をする。
「そうそう、その調子。今のを忘れないでがんばって。段差には気をつけてよ」
おれは、おそるおそる足を一歩踏みだした。




