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どっと汗が出てきた。ほっぺたがカーッと熱くなる。
ああ、そうか。そうだったのか。
おれ、桃ちゃんのことが好きだったんだ。
だから、彼女に親切にされるとうれしかったし、彼女が他の男と親しくしてるところを見たら面白くなかったんだ。
今まで二人だけで仕事をしていたせいで、自分の気持ちに気づいてなかった。堀越の兄さんに彼女をとられてしまったと、被害妄想を起こしておきながら――。
こぶしを固く握りしめる。
なんか、今のおれ、カッコ悪いんじゃね?
ひとりで勝手に思い込んで、それがすべてだと信じて、仕事を放りだした。
彼女から直で聞いたわけじゃないのに。スケッチのモデルの仕事だけじゃ、バイト代をもらうのは申し訳ないと堀越に言ったくせに。おれはいったい何をやってるんだろう――。
「佐古くん、顔色が悪いわよ。風邪が悪化したんじゃないの? 彼には伝えておくから、無理をしないで帰った方がいいわ」
「いえ、だいじょうぶです」
おれは、あやのさんの申し出を断った。
「おれの割り当て分、まだ残ってますから。作業の続き、やっていきます。すいません」
ぺこりと頭を下げ、自分の席につく。
再びハサミを持って、両面テープを切りだした。




