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魔鎧戦記ゴウザンバー  作者: 藍戸優紀
第二章 転生騎士団編
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第50話 天翔ける煌めき! 放つ魔導のその先へ

【飛行】

 空を飛ぶこと。

 実は現段階で単独での飛行を可能としているザンバーは存在しない。

 あくまでも跳躍の延長線上で空戦をしているのである。

 マルチドラゴネットが到着して凡そ半月が経過したころ。


 エストたちはと言えば―。


「そらそらっ、そんなんじゃマギアウストは倒せないわよ!」


「ほらっ、よーく狙いなさい! 一発の攻撃で沈めろとは言いませんが、外した攻撃は全て無駄弾だと理解するのです! 牽制誘導目的も関係なく当てたうえで誘導しなさい!!」


「は、はいぃぃぃっ!!」


 模擬戦という形で無数の兵士たちの相手をしていた。


 二対百というふざけた物量さ、もちろん実際にザンバーを動かしているわけではない、ちょっとしたシミュレーターが開発され、それでの訓練と称して、二人相手に百人で戦わせたのだ。


 マルチザンバーという軍団で相手のマギアウストを抑え、歴戦のエースである二人が思う存分暴れられるようにするというのが目的だという。


 そもそも実際に動かしてしまえば機械技師たちの仕事が増えて大変なことになるという理由でのシミュレーターなのだが、そもそもこれを開発したのはと言えば―。


「さてさて、かのクレアーツィ殿と合えなかったのは残念ではありますが……、どうですかな? 吾輩の開発したザンバーシミュレーターの感覚は」


「ふふっ、なかなかやるじゃない……魔導力が吸われる感覚もしっかりと再現してるしっ―」


「機体の操作感覚も違和感がありませんわ! 貴方のような機械技師がいったいどこにくすぶっておられたのです?」


「はははっ、それはもちろんネルトゥアーレ皇国にて、ビートゥ帝に呼ばれた転生者が一人なのですが、えぇ……私、ウサンク・サイーゾ、前世ではちょいと軍産複合体……まぁ、軍事兵器とかを作る企業に勤めていてた技術者の一人だったのですが、その時の技術の一つをこちらで再現したという訳で―」


 なんとも胡散臭い男であった。


 言葉の一つ一つが信頼に値する真実なのだと理解できるにもかかわず胡散臭い男であった。


 上向きにピンとはねたカイゼル髭に、グルグル眼鏡、竜希が見れば貴族の髪形だと思ったようなカールした長髪。


 それはもう胡散臭い男であった。


 なにせ名前からしてウサンク・サイーゾ……胡散臭いのだ。


「ふーっ、で皇国の転生者がどうやってこっちについたのです?」


 そんな胡散臭い男に、アーロは軽いノリで問いかける。彼の言葉が事実なのであればこのシミュレーターを作り出したのは彼自身。はっきりと言って皇国であっても有用に扱うことができる優秀な男であった。放り出すことに利がないのは火を見るよりも明らかであるわけで。皇国の意図を読もうとして―。


「はっはっはっ、そんなの転生者なんぞ呼んでる負け組に着きたいと思います?」


「負け組?」


 ウサンクは語る、転生者を呼ぶ側は負け組なのだと。


「冷静に考えてください、勝てるのならば外部から助っ人など呼ぶ必要あります?」


「そもそも自分たちで頑張ろうという気概がない奴らに従う彼らの気がしれません」


「というか、そもそも世界征服をたくらむ悪の帝国的な連中が勝つとか、あるわけないじゃないですか」


「まぁ、つまりですね……悪党の味方何て格好よくないじゃないですか! そりゃもう死に物狂いで逃げて逃げて逃げてここで雇ってもらったのです」


 なんとも胡散臭い男であったが彼の語る、ある種荒唐無稽な、だがどこか本質を突いた言葉は納得のいくものであった。


 それはそれとしてどうやってこちらにたどり着いたかの質問には答えていない辺り、絶対に何か企んでいるのだが。


「なんて言うか、あんたアレね……クレアーツィと仲良くやれるわよ」


「ですわねぇ、ほら、子どもの理屈で大人にケンカ売って勝つタイプの子どもと言いますか、まぁお二人とも大人ですが」


「はっはっはっ! 光栄ですなぁ……まったく、死んだ人間は素直に死なせてほしいモノです」


 どこか今の自分の在り方そのものを気に食わないとばかりに呟きながら、ウサンクという男は胡散臭い笑みを浮かべてはシミュレーターの調整を再び行う。


 黙々と手を動かしながらも、ブツブツと何か独り言を言っていることに気が付いたものは誰もいなかった。




「よーし、一応は完成だな」


 リザディのその言葉とともに工房全体から歓声が上がる。


 桃色のドレス姿、巨大な鋼の箒を手に持つ巨大なソレはまさしく魔女の姿。


 第五のザンバーがそこにあった。


「名前は……マギサザンバー、とりあえず試験として動かしてみてくれるか?」


 第五のザンバー、いやマギサザンバーを指さしてリザディは未来に告げる。このザンバーが問題なく動くのかどうか、そして動いたとして想定通りのスペックが出ているのかを調査したいと。


 彼の言葉に軽く頷いた未来はさっそくマギサザンバーの搭乗口に入り込む。


 ここからは実戦ではなくただの試験、しかしながら初めての搭乗、そして万が一何かがあった時のための準備が必要だとばかりに言葉を口ずさむ。


「マギアルリカリルリズプム! 光よ我に答えよ!」


 呪文を口にすることにより、ピュアグリッターへと変身、自身の魔導力をマギサザンバーに流し込み起動させる。


 瞳に光がともったマギサザンバーは工房から出ようと一歩足を踏み出す。


 屋外に出ればその巨体は確かに理解できる、近くにある城よりも少し小さい程度。そんな彼女が自身よりも大きな箒にまたがり軽く跳ぶ。


 重力に従い堕ちようとするマギサザンバー、しかしそれよりも先に穂先に当たる部分にあるバーニアからエネルギーが噴出していく。


 その次の瞬間、マギサザンバーはリザディ達の視界から消えた。


 むろん文字通り消滅したということではない、目にも留まらぬ速さで飛び立った。


 地球での速度換算にして秒速三十万キロにも匹敵せんばかりの異様な速さ、それ以上に亜光速にまで至っている速さでありながら、搭乗者であるピュアグリッターには速すぎて何が起きているのか理解できないということが発生しないように調整されているという事実である。


 マギサザンバーとは魔女、魔法を使う者。


 そして魔法とは人間の力ではなしえない不思議なことを行う術を指す、何よりも光に近い速さで飛ぶ彼女の動きはまさしく魔法であった。


「未来、じゃなくてピュアグリッター! そっちの調子はどうだ!」


 気持ちよく空を飛んでいた彼女の耳元に男の声が聞こえる、リザディからの通信だ。


「飛行速度は想定以上です、多分今追いつけるモノはないかと」


「はははっ、さすがは俺、と言いたいがクレアーツィの設計がいいからだな」


「いえいえ、リザディさんの腕もあってこそだよ」


 などと軽い調子で口にしながらも曲芸のように、空飛ぶ箒の上で動かして見せるピュアグリッター。


 当然バカなことをするなと説教が飛んでくるものと、即座に考えたのだが。


「おっ、いい判断だ、戦闘で常にまたがったままでいられるとは限らんからな」


 むしろ賞賛の言葉が飛んできたのである。


 しかしリザディの言葉は最もであった、戦闘中に四方八方からの攻撃をどうにかして回避しなければならないかもしれない、咄嗟の回避が必要になる可能性だってあるのだからできることを増やしておくことは絶対的に正しいのだ。




 未来はそのままテストと称して風を割き、雲を割り飛び回り続ける。


「これなら行ける、私も戦える」


 未来は決して闘争を楽しむタイプの人間ではない、むしろ戦わなくて済むのならそれが一番だと考えるタイプではある。


 しかし、戦わねばならない時に戦うことを否定する人間でも断じてない。


 それは彼女が元居た世界で確かに戦い抜いたことからも分かる話だ。


 故に戦えないという状況は彼女にとって実に苦しいモノであった。


 今彼女はその苦しさから解放されたのだ。

【ウサンク・サイーゾ】

 連合軍に協力している転生者。

 たった一人で誰の助けもなく皇国から逃げ出し、連合軍に力を貸している見るからに胡散臭い容姿と、どう聞いても胡散臭く聞こえる声の男。

 当人曰く前世では軍産複合体に勤めており、ザンバーやマギアウストを見てもこの技術体系で完成していることにはともかくとして、驚きを見せていなかった。

 その話を聞いた竜希の直感によると、前世でも巨大ロボットが活躍する世界の出身だったのではないかとのこと。

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― 新着の感想 ―
[一言] マギサザンバー完成! しっかしウサンク・サイーゾ、名の通り胡散臭い奴!!
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