第15話 探せ!新たなるザンバ―候補者!
【クレアーツィの収入】
騎士としての活動で基本的には生活しているものの、趣味で作った魔導具が売れた場合は一回で騎士としての収入の五年分に匹敵する収入が入ってくる。
魔導具で得た収入の大半は魔導具の素材などに飛ぶし、なんなら騎士としての収入も大半は魔導具作成のための道具などに使われている。結果としてクレアーツィは貧乏というほどではないものの家の格に見合わない質素な暮らしをしている。
「新型ザンバーの設計プラン自体はできてるっちゃできてる……けど、結局はこれって完全オーダーメイドの特定の誰か専用仕様の魔導具だからなぁ」
魔導石を複数使用する以上はその全てに適性を持っている必要がある。とまでは言わないものの、その大半に適性を持っている必要はあるし、当然適性のない魔導石はただのデッドウェイト、性能が落ちてしまう以上は避けておきたい。さらに言えば魔導石の組み合わせによって外装なども変えておかねば出力が安定しないなんて事態も発生する。結果として搭乗者が決まらないと新型ザンバーを製作するなど土台無理な話であった。
「である以上は知り合いを仮想搭乗者として設計すると……竜希位だけどもそれはだめ」
そもそも論として彼女がいなければマルチドラゴネットを動かす難易度が跳ね上がる。それ故に彼女がザンバーパイロットになるというのはできるだけ避けたい案件である。
そうなると現状は候補者すらいなくなってしまうわけで、どうにかしてその候補者を探す必要性が出てくる。
「という訳で新しいザンバー搭乗者候補を探すために協力してもらえませんかねぇ」
「会ってそうそう、一方的に頼むか普通」
クレアーツィがそう問いかける見た目若そうな男、長い金髪にとがった耳、そしてどこか腹の中に一物ありそうな笑みを浮かべたそれこそがフォストの国王であった。
「いや、俺はその位しか話すこともないですし」
「だとしてもいろいろあるだろ、年長者を敬うとかさぁ」
さて、フォスト王は血筋の問題で非常に長命な人物である。具体的に言うと彼自身は少なく見積もっても百歳は生きている。それでも若く見えるのは彼自身が若くあろうとしているからだろうか。
「それで、候補として来てくれそうな奴っている?」
「ほんとブレないなお前、と候補はどんな奴がいいんだ?」
それに対してクレアーツィが出す条件はシンプルなものであった。
「射撃が上手いやつ、魔導石もその辺の適性が高ければなお良しだ」
結論から言えばそれで候補として成立する人間はいた、そりゃあもうすこぶるいたのだ。
「まぁ、フォストはそのレベルの条件なら適当に王都で石投げたらほぼ間違いなくいるからな」
「つまりはもう少し条件を絞れと」
「そういうこと、射撃でも何を使っての射撃なのかってのは大事な視点だ」
銃でも弓でも、大砲でも射撃は射撃である。しかしながら銃が上手くても弓が上手いとは限らないのだ。クレアーツィは乗る人間に合わせるつもりであっても、そもそも求める方針位は固めておけということのようで。
「全部上手い奴」
クレアーツィは全部とかいう、強欲な阿呆であった。
「それで……父上から呼び出しを受ければ、かの魔導具の頂点にある方とは……どのような御用で、などと聞く必要はないですわ」
フォスト王同様にとがった耳に金色の髪、どちらかというと可愛らしいというよりも綺麗といった容姿の女性。そんな彼女の視線はじっとクレーアツィを品定めするように見つめていて。
「かのゴウザンバーの雄姿については話に聞いています、この世でただ一つあのマギアウストに対抗できる勇者だと」
「訂正させてくれ、ゴウザンバーだけじゃない。ゴウザンバーの兄弟のブレイドザンバーもいるし、さらなる兄弟も誕生する予定だ」
「そしてその兄弟を託す人を探しにこのフォストまでやってきた。ですわよね?」
そう問いかければ、当然クレアーツィも首を縦に振る。
「ではこのフォスト国第一王女、アーロ・フォストがその託されるものとなって差し上げますわ」
その発言を聞いてはクレアーツィは大きく目を見開く。
(この女なんて言いやがった? 第一王女? フォストに王子がいたとか聞いてないから間違いなく次の王じゃねぇか!?)
即座にフォスト王の方を見ては意図を問うようににらみつける。何が悲しくて次の国を統べる女を最前線に送り出そうとしているのだ。勝ってもこの子に何かあったらこの国はまずいことになるぞと。
止められなかった。
そう言わんばかりに死んだ目をした王が、力なく目線をそらしたのであった。
「……あ、あのアーロ王女、我々が向かうのは最前線ですよ?」
「当たり前のことを言わないでくださる?」
(この女、まさか本気で覚悟して最前線に出るなどと言っているのか? 立場理解しているのか?)
クレアーツィは頭を抱えたくなった、人目があるし目の前にいる相手が相手だからそれはできなかった。
「あの、ところで射撃の得意な方を探しているんですが」
「この国で一番の射撃の名手は私ですわ、弓、銃、大砲なんでもござれですわよ」
(……まじか、マジなのか?)
フォスト王に視線を向けて事実なのかと問いかける。結論だけ言えば事実であった。
この国で最も射撃と呼ばれる行為に長けているのが彼女である。ちょっと洒落にならない事実がそこに在った。
「ふふっ、では文句はあります?」
「ないです」
嘘である、クレアーツィは物凄く文句が言いたい。だけど立場上の問題で文句は言えない、当然だクレアーツィは騎士の家系だが別に国のトップとかそういうものに関わる立場では断じてない。大陸一の機械技師ではあっても、別に偉い人では断じてないのだから。
「では、大陸一の機械技師の作品、期待しておきますわね」
だけどこの時の彼女の笑みはすこぶる美しいモノであったのも事実であった。
「お任せあれ、王女様」
だから、まぁ受け入れたのも仕方ないだろう。クレアーツィも男だったということだ。
【エストの剣】
ファネッリ家に代々伝わる宝剣。
強力な魔導具で、所持者の意思に合わせて刀身を形成する液体金属が形状を変えるという仕様である。
実はブレイドザンバーの武器、ザンバーソードはこの剣を参考にして制作されている。




