10
その場に到着すると周囲は血に汚れ、人だったものが幾つも散乱していた。
しかし、それを行ったのは怪物ではなく、今は味方であるはずの男性の5人だ。
彼らは今も倒れている死体を切り刻み、次の犠牲者を探して部屋を荒らしている。
タツトはそこに歩み寄ると男性の1人に声を掛けた。
「自分が何をしているのか分かっているのか?」
「あぁ~・・・リリス様の為に決まってるだろ。」
「こいつら、またリリスに魅了されてるのか。しかも前回よりも酷そうだな。」
「フフフ!待っていたぞ!」
すると廊下の奥から執事の声が聞こえ重い足音が聞こえてくる。
そちらへと視線を向けると大きな二足歩行の牛が斧を持って歩ているのが視界に映った。
「まさか執事か!?」
「そうだ。ようやく貴様をこの手で殺せる時が来た。」
「まさか山羊じゃなく牛だったとは。これは黒い執事さんも驚きの展開だろうな。」
「何の話をしているのだ?」
「こっちの話だ。それで、リリスは一緒じゃないのか?」
「リリス様は最後の仕上げの為に最奥の部屋に行かれた。貴様らを殺せばすぐに仕上げを終えてあの方を呼び出せるようにな。」
「それがお前たちの言う7人目だな。」
「そうだ!あの方がこの世に顕現すれば全ては我らの思いのままだ。この星に住む全ての命が家畜となるのだ。そして悪魔が神に、神が悪魔と言われる時代が来る。」
そして執事の声に釣られるようにして魅了されている男性たちが周りに集まってくる。
手には血で汚れた剣を握り、体も返り血でベットリと濡れている。
どれだけ人をその手で殺したのかは分からないが、顔には笑みを浮かべ正気を感じ取ることが出来ない。
しかも自分達以外を敵と認識している様で執事を取り囲んで剣を向けている。
「邪魔をしないでもらいましょうか。」
「ううぅ・・・!」
「おあーーーー!」
だが言葉が通じておらず、獣のような唸り声を上げながら執事へと襲い掛かって行く。
アレではどちらが化物なのか分からない光景だ。
しかし、相手は今まで殺して来た女性達とは違い手には巨大な斧を持っていた。
「お前たちもそろそろ処分しようと思っていました。この際ですからここで始末しておきましょう。」
執事の持つ斧にも血の跡が付着しており、ここに来るまでに犠牲者を出していることが分かる。
そして斧が新たな犠牲者の血で上塗りされるのは一瞬の出来事だった。
「人間は等しくあの方の糧となれ!」
「グギャ!」
「ゴブオ!」
しかし、その光景を目の当たりにしてもタツトは動く様子は無く、声さえも漏らさない。
既に犠牲になる者が出るのは想定済みで何人も見捨てて来ている。
それにタツトも理性を失った者を助けている余裕は毛先程もない。
「これで邪魔をする奴等は居なくなりましたね。さあ、貴様の命運もここまでです!」
執事は斧を振り上げると足の蹄で甲高い音を響かせながらタツトへと向かって行く。
しかし斧の間合いに入れた瞬間に足元へと違和感を感じ取り視線が僅かに下へと逸れる。
それでも斧は振り下ろされ踏み出され足は地面に広がる液体を踏み締めた。
「ヌオーーー!こ、これはまさか!」
「石の床にエンジンオイルはよく滑るだろ。俺がただ立って見ているだけだと思ったのか?」
「おのれ小癪な!」
「モート。」
タツトは完全に体勢を崩して倒れている執事の体に触れると一度めの呪文を唱える。
しかし、執事も油で滑る体を利用して体を捻るとタツトへと蹴りを放った。
「くらえ!」
「おっと。危うく頭をカチ割られる所だった。」
そしてタツトはその場から下がると安全圏に移動し、靴の上から履いていた靴下を脱ぎ捨てる。
この靴下は生地が厚く、登山などにもよく使われる物で持っていたのはシロウだ。
それを貰い多少の油なら靴の裏に油が付着するのを防いでくれるのは実験済みである。
そのためタツトの足には十分なグリップがあり、普通に立つ事が出来る。
しかし、全身に油を付けてしまった執事は別である。
それでなくても斧という超重量武器に加え足は硬い蹄で出来ている。
今の状況では立つ事も出来ず、地面に這い蹲っている状況だ。
「このまま牛の姿焼きにしてやる。」
タツトはカバンの中から他人の車を物色して手に入れたライフル型水鉄砲を取り出すと執事に向かって浴びせ掛けた。
執事は臭いでそれが何かを理解すると両腕で顔を覆い防御の体勢へと入る。
「ガソリンとは!貴様も炎に巻かれて死ぬぞ!」
「モート!」
「おのれ!これが狙いだったか!」
タツトは執事が防御を固めて視界を塞いだ瞬間を狙い、その体に触れて2回目の呪文を唱えていた。
しかしその作戦に咄嗟に気付いた執事は丸太のように太い腕を振りタツトの体に拳を叩き込んだ。
「がは!」
「自ら近寄るとは愚かな。」
「そう・・・でも無いぞ。」
「なに!確かに手応えがあったはずだ!」
「そんな体勢と足場で人間を一撃で殺せる攻撃が放てると思っているのか!?」
「クソー!これも貴様の持つ天命だとでもいうのか!」
「そんな事を俺が知るか!」
タツトはそう言ってポケットからジェットライターを取り出すと火を点けたまま執事へと投げ付けた。
そして、その火は狙い通りに執事に引火するとガソリンと油に引火して大きく燃え上がって行く。
「グオアーーー!!」
「俺がこの程度を躊躇すると思うなよ!」
「グ・・グフフ!しかし、ここに来て貴様は判断を誤った。言葉を返すようだがこの程度の火力で俺が死ぬと思うなよ!この火が消えた時がお前の最後と思え。」
「モート。それまで俺が待っていればの話だろ。」
「なんだと!!貴様も火達磨になるぞ!」
しかし、ガソリンで火が着いたとしても激しいのは最初だけでミヤの時のように追加しなければすぐに燃え尽きてしまう。
そして、タツトは火に服が炙られてもすぐに引火しない様に水で湿らせいる為に簡単には引火しない。
しかも同じ様に濡らした軍手を装着していれば燃えている体に触れても火傷の心配は不要だ。
ただ、頭だけはどうにもならないのでタオルを巻いて保護をしても所々は燃えて縮れてしまっている。
「な!何故だ!なぜ人間如きにこの俺が!?」
「お前は最後だと思って焦り過ぎた。それに俺を自分の手で殺したい思いが先行して思考が停止していた。」
「そ、そんな馬鹿な!」
「それならどうして今日の昼間は俺達を自由にさせた?妨害しようと思えば出来たはずだ。なんでさっきの男共を殺した?お前が下がれば次に狙われたのは俺だ。そうすれば俺はアイツ等を止めるために1つくらいは手の内を明かしていた。そうすればお前が負ける事は無かったんだ。」
タツトは崩れていく執事に向かい負けた理由はお前自身にあると言い切った。
そして、それは事実であり油断さえしていなければ確実にタツトが負けていただろう。
何故なら他の2人の悪魔に関してはノートにも書き込みがあり、ある程度の対策を取ることが可能だった。
しかし執事とリリスの事は最後まで書かれておらず、手元にある物だけで戦わなければならない。
そこにはタツト自身の命も含まれており最初に有利な状況へと持ち込めなければ逃げるか死ぬかを選ばなければならなかった。
「終わりだな。」
「お、覚えていろよ!ここで死んだとしても悪魔にとって大した意味はない!元の世界に強制的に戻されるだけだからな。いつかこちらに戻って来た時は今度こそ貴様を・・殺して・・・やる・・・ぞ。」
執事は最後にそう言い残すと砂のようになって消えていった。
それを確認するとタツトは屋敷の奥へと進み始める。
しかし、その足元はフラついており、先程のダメージが小さくない事を示していた。
「デカい事を言ったけど最後に良いのを貰ったな。」
持っていたカバンをクッションにしたとは言っても肋骨には何本か罅が入っていた。
左腕も自由に動かず持ち上げようとすると鋭い痛みが走り自由に動かせないほどである。
「これで残りの鬼が2人か。頼むから最後の切り札が効いてくれよ。」
タツトは首へ手製と分かる単純なネックレスを着けると館の奥へと進んで行った。
それに目的地もある程度は目星を付けており、そこへと向かって行く。
そして幾つかの扉を開けて調べていると部屋ではなく地下への螺旋階段を発見した。
タツトがそこを降りて行くと地下にある大きな空間へと辿り着いた。
しかもその中央には1つの古い家が立っておりその周りには荒れ地と人の白骨死体が転がっている。
一部はまだ新しいがそれは今回のゲームに参加して殺された犠牲者だろう。
死んだ後に何処かへ運ばれていたのは分かっていたが、彼らの行き先がここだったようだ。
そして階段を下り切るとタツトは足元にある骨をなるべく踏まない様にしながら家へと向かって行った。
「おいリリス!お前がここに居るのは分かってるんだ!最後の勝負と行こうじゃないか。」
「まさかここまで辿り着くとは驚きですね。」
すると入口の扉が軋みを上げながら開きそこからリリスが姿を現しタツトの前に立った。
「単純に敷地の中心を探したら見つけただけなんだけどな。それに館を囲んでいる広大な柵だが執事の野郎はそこからどうしても出て欲しくないみたいだった。そうなればそれ自体にも何らかの意味があると思って調べたんだ。すると地中に金属の杭が等間隔に埋め込んであるのを見つけた。」
「地中の魔法陣まで見つかっていましたか。あの者には後でしっかりとお仕置きをしておかなければなりませんね。それで、ここにはあなた一人で来たのですか?」
「ああ。どうせ最後の1匹は召喚前の魔王か何かだろ。」
これは読書マニアであるアケノの考察である。
クレナイも悪魔が主と呼ぶならそれで間違いないと断言し、タツトも内心ではそう思っていた。
そしてアケノの知識ではリリスが女王であると仮定するとサマエルの伴侶とされている。
サマエルは堕天した後に魔王となったと言われているらしく、予想の1つはそこから来ている。
またリリスはサタンの妻であるや、サマエル自身がサタンと同一視されることもあるらしいという事でこの2者が候補に挙がっていた。
「フフフ。やはり名がバレたのは痛手でしたね。ならご褒美に教えてあげましょう。私達が呼び出そうとしているのはサタンです。私達は彼によってこの世界へと送り出された先兵に過ぎません。まさか最後にここまで追い詰められるとは思いませんでしたが。」
「それならいっそのこと諦めて地獄なり悪魔の世界なりに帰ってくれないか。俺もその方が楽が出来て助かるんだけどな。」
「それは出来ませんね。あの方はあなたの命をいたくご所望です。」
「憤怒の魔王な癖に傲慢な奴だ。」
「本当に困った方です。しかも、生き残りが10人以上も残っています。あなたを殺したら私が収穫に向かわねばなりませんね!」
するとリリスは背中に蝙蝠のような翼を生やして飛び上げると翻弄するように周囲を飛び回り始めた。
しかしタツトはそれに臆することなく腰に差していたナイフを抜いて両手で構える。
その姿は素人にしか見えず、リリスは口元へ笑みを浮かべた。
「そのナイフは銀製の様ですがあなたに私が殺せますか?」
「ここに来るまでに5匹の悪魔が仕留められているのを忘れるなよ。」
「私は彼らとは格が違います。夜の女王にして邪悪なる魂たちの主です。」
「そう思うなら俺を殺してみろよ。それが出来るならな!」
「良いでしょう。その言葉を後悔して地獄に落ちなさい!」
リリスはまるで空気を蹴って移動するかのように空中でジグザグ飛行すると素早い動きで襲い掛かった。
しかも、その口には今まで見せなかった長い犬歯があり、まるでバンパイアのようである。
このまま行けばタツトは成す術もなく捕まり首に牙を突き立てられてしまう。
「今度こそ私の僕になりなさい!」
しかし、その腕がタツトを捉えようとした直前にリリスの動きがピタリと止まった。
その目はタツトの首に下がるネックレスに向けられ驚きに顔を強張らせている。
「効果があって良かったよ!」
「ギャーーー!!」
タツトは動きの止まったリリスの胸へ向けてナイフを深く突き刺した。
場所はミヤが何度もレクチャーし、そこには生物の急所である心臓がある。
そしてタツト達はリリスの正体が怪物と言われる存在の中でもサキュバスかバンパイアではないかと考えていた。
何故ならこの2つは異性を魅了し従わせる能力を持っていると考えられているからだ。
そして、どちらも漫画や小説などではエロい衣装が良く似合う超絶美女である確率が高い。
これに関してはアケノがちゃんとした理由を先に述べたのだが、クレナイとタツトのオタク援護と激推しにより命を賭け戦いに趣味の要素が加えられる事となった。
ただし、アケノとミヤから冷たい視線が注がれたのは言うまでもない。
「タツト・・・何故あなたがそれを・・・。」
「アケノが言うにはお前への切り札らしいな。この様子を見ると効果覿面って所か。」
リリスはナイフの一刺しで完全に心臓を破壊されている。
その傷は無敵に近い生命力を持っているリリスでも弱点である銀製のナイフを使われている為に回復が出来ない。
しかも常人では有り得ない程の血を流して足元を真赤に染め、その足も地面へと付いて倒れる寸前になっていた。
「セイノ、サンセイノ、セマンゲロフ・・・あの忌々しい3天使の名前の書かれた護符。」
「アケノが言うにはこれを持ってるとお前が手を出せなくなるかもしれないって言ってたな。」
「・・・その通りよ。・・・もう・・・今回はケチが付いてばかりね。でも・・・最後にちょっとだけ仕返しをしておかないと気が済まないわ!」
そう言ってリリスは前のめりに倒れるとタツトに頭をぶつけながら一瞬だけ唇を奪った。
それは僅かではあってもタツトにとっては大事なセカンドキスである。
「テメー!俺に手を出せないんじゃなかったのか!」
「これは不可抗力。事故なのだから仕方がないわね。」
「絶対にワザとだろ!」
「フフフ、これであなたに一泡吹かせられたわね。次はもっと容赦しないから覚悟しなさい。」
リリスはそう言って塵となると完全に消えていった。
他の怪物と違って美しく輝く粒子だったのはリリスが女性だからか、それとも他に理由があるのか。
しかしタツトはその場で溜息を零すと諦めて地下にポツンと立っている家へと向かって行った。
「流石にこれは衛星写真にも移らないから取材にも来れないな。」
そんなどうでも良い事を言って気分を紛らわしながらタツトはリリスの出て来た扉へと手を伸ばした。
すると思った通り自動ロックではなかったらしく鍵は開いていたので簡単に中へと入る事が出来た。
「ここが儀式の中心か。」
そこには大量の棚が並び大量のドクロが収められている。
数は既に600を超えており、この100年で集められた物になる。
そして、棚は中心で輝いている魔法陣へと向いており、ドクロはまるで物言わぬ観客の様で眼下の奥には闇しかない。
タツトは嫌々ながら不規則に並べられている棚の間を通って中央に到着するとそこで声を上げた。
「こちらからの声は聞こえるのか?」
『話をしたければ我を呼び出せ。』
すると耳ではなく頭の中に直接声が聞こえ、その不快感にタツトは顔をしかめた。
しかし罠の可能性もあるためタツトは保険としてカバンに残っていたガソリンを周囲に撒き散らしていつでも火か着けられるようにする。
そしてライターに火を点けて構えると頭に浮かんでくる呪文を唱えた。
「出でよサタン!そして願いを叶えたまえー。」
すると魔法陣が激しく光り始め、その中心から山羊の頭が姿を現わした。
続いて上半身が姿を現し腰が出たところで動きが止まる。
「ハーハハハ!欲望に塗れた人間よ。我を魔王サタンと知ってここに来たのか!」
「その通りだ。お前に頼みがあって来たんだ。」
「ならばその魂を我に捧げよ。」
「いや、もう十分に捧げられただろ。」
「まだ足りぬ!我の召喚には666人の死が必要だ。貴様はそんな事も知らずに我を呼び出そうとしたのか!」
「知るかボケ!それよりも俺はちゃんとここに書かれている通りに最後の1人になったぞ。約束を守らないとイケないのはお前の方だ。」
「なに!」
タツトは招待状の紙をヒラヒラとさせてサタンへと言葉を返した。
それにアケノとミヤが館の一部に火を点けた事で既にタツト以外の全員が火事に気が付いて外に逃げている。
そのためゲームの勝者は自動的にタツトへと決まった。
「まあ、ダメなら良いや。ここを燃やしてお前の100年を無駄にするだけだ。」
「ま、待て!しかし、666人の犠牲が無ければ願いは叶えられん!」
「そういえばさっきから気になっていたんだが666人なら6人足りないよな。」
この館でのイベントと称した大量虐殺は10年に一度66人の人間を集めて行われるとタツトたちは考えている。
それなら例え今回の事が悪魔側の勝利で終わっても660人しか居ない事になる。
積めて考えれば色々と穴のある推理だが、そこにちょうど当て嵌まる数が存在した。
「お前はリリスたちの事も勘定に入れてただろ。」
「・・・。」
「沈黙は肯定と受け取っておこうか。それなら他で代用できるよな!」
「た、確かにお前の言う通りだ。」
タツトはリリスさえも騙したハッタリを披露し邪悪な笑みを浮かべて見せるとサタンは素直に肯定した。
この事から今の段階に至り立場はタツトの方が上の様だ。
「なら、それでどうにかしろ。ここには相手の死をもって勝者とするとは1文字も書いてないぞ!」
「おのれ・・・まさか全ての悪魔を打倒した者がここまで悪魔使いの荒い奴とは・・・。リリスたちは何をやっていたのだ!?」
「それなら始めようか。」
「覚えていろよ人間!」
そう言ってサタンは表情を歪めるとこの場に10人の悪魔を呼び出した。
そして、自害を命じると何も言わずに自身を切り刻みその命をサタンへと捧げた。
この事からタツトたち5人以外で生き残っていたのは女性が5人だけという事になる。
「お前は命を捧げないのか?一応は主催者だろう。」
「我が死ねばお前の願いを誰が叶えるのだ!」
「ああ、そうか。」
「フン!だがこれで準備は整った。さあ、願いを言え。どんな願いでも1つだけ叶えてやろう。」
「どんな願いでもと言ったな。」
「人類を滅ぼせと言えば皆殺しにしてやる。悪人ならば生き返らせてやろう。」
「悪人って、酷い制限だな。」
「善人は天に上るからな。その魂を奪い生き返らせる事は出来ん!」
「それなら病人なら助けられるのか?」
「容易い事だ。」
その時にタツトの頭にはアケノの事が思い浮かんだ。
しかし、その直後に首を振って頭から追い出すと1つの願いを思い付いた。
「確認だが、願いの対象は1人だけか?」
「絶対とは言わんがその方がより大きな効果をもたらす。それに願いを叶えれば消耗してしまうからな。人間の負の感情を糧とする我だが、あちらではこうして間接的にしか力を得る事が出来ん。叶えられる願いも今回集めた力の総量に依存することになる。」
「そうなると・・・クックック!」
タツトは邪悪な笑みを再び浮かべると視線をサタンへと向けた。
その視線にサタンさえも下がろうとするが、下半身が動かないため逃げる事も出来ない。
そしてタツトは思い付いた願いを口にするとサタンにも同じ様な表情を浮かべさせた。




