13 日向の君。(ジェレミー視点)
ーー……夕陽を背にした君は、確かに笑っていたんだ。
自分が乙女ゲームの世界に生まれ変わっていると知ったのは、気まぐれに使ってみた魔法のせい。前世を思い出す魔法。
オレは病弱で、いつもベッドの上にいた。
そんなオレに、活発な妹はベッドの上でも楽しめるゲームを紹介してくれていた。自分でハマったものを執拗にオレに見せてきたものだ。乙女ゲームなんて、興味がなかったのに。
そんな世界に生まれたのは、何故だろう。
それは神様にでも聞かなくちゃわからないことか。
妹がお気に入りのゲームの中の【シャルルーン学園〜恋の魔法〜】に出てくる悪役令嬢の容姿が好みだったからなのだろうか。
入学式前日。エールー車というもふもふの電車に乗ってオレは、その悪役令嬢を捜した。
そして、白金髪の彼女を見付ける。
悩ましい表情で俯いていた彼女を見つめて、それから向かい側の座席に腰を落として話しかけた。
「何を悩んでいるか知らないけれど、君は君のままでいいんじゃないか」
オレの言葉を聞いて、彼女はゆっくりと顔を上げる。
オレの目を見ると、微笑んだ。
納得しように、頷くように、感謝を示すように。
青く澄んだ瞳に、オレを映す。
夕陽を背にした彼女の笑みは、とても美しかった。
日向のように温かな笑み。
思えば、その瞬間、恋をしたのかもしれない。
それから、彼女、シェリエル・サリフレッドのことを気にかけた。
話しかけてみたり、からかってみたり、追いかけっこをした。ちょっと楽しい。にやけるなぁ。
楽しい追いかけっこは、終わった。まさかシェリエルが三階の窓から飛び降りてまで追ってくるとは驚き。女の子に押し倒されるのは、悪くなかった。
互いに前世を打ち明けて、これからのことを少し話す。
そこでクラウドが来て、終わる。ちょっと残念。
クラウドは、エミリーといるわりにはシェリエルのことばかり気にかけている。幼馴染と自慢しているし、実は好きなのかもしれない。
なら、オレのライバルだ。
ジェラルドも、気があるようなことを言った。
獲物だなんて、オレ達が攻略対象者なのにね。
ジェラルドも、ライバルか。
そりゃそうだ。惚れるのもわかる。オレだって惚れたのだから。楽しいんだもん。シェリエルと遊ぶことも、話すことも。好きなんだ。
このまま、一緒に過ごしたい。
ずっと、一緒に居たい。
その願いを叶えるために、オレは告白した。
シェリエルは夕陽のように真っ赤になったものだから、オレは恋をしたあの瞬間を思い出す。
どうか、オレに悪役令嬢を攻略させてください。
これにて終わりです。
アイガットも出したかったのですが、別作品に登場させることにしました!
ここまで読んでくださりありがとうございました!
20171020




