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テンションアップダウン第三回六月の花嫁は突然に反撃編

「ここ……は」

 目が覚めるとボクは見慣れない、光が入らない埃っぽい小部屋で倒れていた。

 借り物のタキシードは汚れているだろう。

 全身は酷く痛み立つ気力さえも奪っていた。

「もう無理なのかな……」

 彼女の気持ちはボクらだけじゃ止められない、それは最初からわかっていたはずなのに。

 自然と涙を流していた。

「うぅっ……ぅっ」

 全ては自分達のワガママから始まった、しかし彼女を救えなかった、救えないどころか彼女を悲しませてしまった。

「くそっ……くそくそくそくそくそくそくそくそくそ!」

 拳をきつく握りしめ床に叩きつける。

 強烈な痛みが全身を駆け巡る、身体の骨は多分折れているだろう。

しかしもう一度拳を振り上げ下ろす。

 今頃みんなはどうしているだろうか、無事だろうか。

「……だから止めときなさいって言ったのに、あの人に勝てるはず無いでしょ」

 薄暗い部屋に光が入り込んでくる。

「じゃあ何であんたは此処にいる……」

「…………」

 ボクの前に現れた人物の表情は読めないが多分酷く悲しい顔をしているだろう。

「あんたは父親から逃げられたんじゃないの?」

「そうよ……でもね勝ったんじゃなくて逃げたのよ、負けたから逃げた……ただそれだけ」

「あんたが逃げたからあの人は!」

「そうよ!あたしが逃げたからあの子があんな目にあったのよ……」

「何で助けてやらないんだよ!」

「助けなくていい……」

「っ!」

 先程のやりとりを思い出して息を呑んでしまう。

「言われたんじゃないの?助けなくていいってあの子に」

「でも……」

「本人も言っていることだし良いんじゃないの?」

 そう言うと彼女はボクに背を向けて立ち去ろうとする、その姿は最後に見たあの人の後ろ姿にそっくりだった。

「じゃあ……何で…………」

 「そんなにも悲しい顔をしているんですか?」、この一言に目の前の女性は足を止めゆっくりと振り返えった。口は開かなかったが彼女の表情は語っていた。

 「助けて」っと。

「ボクらはあの人と一緒に今まで人助けをしてきました、求めて下さい……助けを!」

「…………」

「絶対に助けます、だから!」

「無理よ……」

「無理じゃありません!だって」

 そこでやっとみんながやってきた。

「大丈夫ですよ!あの人を必ず助けてみせますよ!」

「アイツとは腐れ縁ですから気にしないで下さい、何時もの事ですし」

「……助けてもらった恩返ししたいです!」

「みんな…………」

「求めて下さい、助けを……梅ちゃん先生!」

「………………助けて」

 先生の口から本音が漏れる。

「妹を助けて……」

「「「わかりました!」」」

「妹さんを……丹沙さんを必ず助けて見せます」

「可能な限り手伝ってくれる人に連絡して!」

 全員が一斉に携帯を取り出す。

「先輩一つお聞きしたいのですが」

 先輩の耳に口元を寄せ小声で喋る。

「……わかったは番号はこれよ」

 自らの端末画面をこちらに向ける先輩。

「てか何で知ってるんですか?」

「仲がいいのよ家族全員と」

 先輩は番号を教えるとみんなに指示を出し始めた。みんなは指示通りいろんな人に連絡をし始める、作戦がバレているならこちらは数でしょうぶするまでだ。

 そしてさっきの戦いで敗れた事も考え、こちらも秘策を用意することにした。

 ボクを散々痛めつけたあの黒眼鏡のハゲに負けないために……。

「……もしもし」




 結婚式まで十八時間。

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