テンションアップダウン第二回一日だけの○○
「今日一日私は一日何か偉い仕事に就きたいな」
前触れもなく海苔ちゃんが言い放つ。
日曜日の惰眠タイムを邪魔されたため少し眠い。
「突然だなぁ」
「いやさいやさ、さっき動画でちょこっと見たのですよ!」
ずいっと目の前に携帯の画面を近づけられる。
「一日あいどるぅ?」
「そう!」
「これを見て一日体験をやることにしたのか……」
「いえす!」
こうして海苔ちゃんの慌ただしい一日体験が始まった。
一日教師。
「……」
黙々と漢字の小テストを採点していく。
「梅ちゃん先生?」
「何?磯川原さん」
隣でパソコンに目を向けながら会話をする先生。
「正直地味だから辞めたい」
「一度やると決めたのだから責任とって最後までやりなさい」
一日部長
「『今日一日部長?良いわよ』」
「……やっぱり似ている」
「『何に?』」
「気にしないでください……それで一日部長は何をすればいいですか?」
「『何も無いわよ』」
「えっ!何でですか!?」
「『だって今日部活無いし……ここ私の実家だし』」
一日寮母
「料理位ならできますよ!だから一日寮母を!」
「駄目よ磯川原さん、磯川原さんの料理を誰が食べるの?食中毒者でも出したいの?それともテロ行為?」
「私のご飯は普通ですよ!」
※ ※ ※
「それで結果は?」
結果など目に見えていると言わんばかりに優しく言われ少しムカつく、しかし私も馬鹿ではない秘策を用意している。
「大丈夫、次で最後だから」
「ほー……それで?」
私は胸元から小学校の名札を取り出しセロテープで胸にとめる。
「なっ!」
名札の名前を見て驚愕している、それもそのはず書いてあるのは。
「フィーの名札だだと!」
「そう……」
一呼吸分の間を空けてから一言。
「私は今日一日!フィーちゃんで行きます!」
付け足しで「本人にちゃんと許可を取ったから大丈夫」と言っておく。
「さっそくフィーちゃんみたいにいくよ」
私はそう言って立ち上がり、目の前に驚いたまま座っている、女子の膝に座る…………。
※ ※ ※
胡座をかいていた自らの足に海苔ちゃんが腰を下ろす……前に尻を叩く。
「あうちっ!」
「海苔ちゃんがフィーの真似など百年早い!」
「一日!一日だけだからぁ」
「ノン!許されない蛮行だ!」
「じゃあ一つ!一つだけだからぁ!」
必死に食い下がりつつも主張する海苔ちゃんを少しだけ可哀想に思いしょうがないので一つだけ許可した。
「じゃあ一つやるから目を閉じて……」
ボクは軽く目を瞑り待った……すると段々と海苔ちゃんの呼吸が近づいて来るのが伝わる。
薄く目を開くボク。
目を閉じ唇を近づける海苔ちゃん。
ドゴッと拳を腹に叩き込むボク。
「何故バレたっ!」
「…………」
最後に腹を蹴られうずくまる海苔ちゃんを無視するかのごとく時が進み、一日体験は幕を閉じた。




