テンションアップダウン第二回罰ゲームじゃなくてご褒美だ
冷や汗と脂汗の違いが解らなくなってから、指先は震え頭の中では赤ちゃんが打楽器を乱暴に叩いている。
周りをゆっくりと見回す。いつもと変わらない部室に奇妙な物が二つ、一つは卓上にあるお菓子名前はマフィン、綺麗な茶色をした物体。製作者雨月マナ。
少し先輩の話をしよう。
雨月マナは料理が下手だ、しかし努力して人並みに料理が出来るようになりたいと頑張っている、いわば何も書かれていない真っ白なキャンパスに近いだろう。しかし白は直ぐに染まる、ふざけたことを教える者が居たら先輩は疑わずに信じてしまう、例えるならマフィンを作っている最中に「これを入れたら美味しくなるよ」等と言われ酒を渡されたら躊躇なく全てを入れる。一滴残らずだ……。
そして奇妙な物の二つ目は……奇妙な者の二つ目はそのお菓子を食べた僕以外のみんなだ、目が虚ろになり「頭大丈夫?」と言うような発言しかしていない。
「『じゃあ次はみんなで王様ゲームをしましょ!』」
いつもの吠天先輩では有り得ないほどテンションが高い。
「やりましょやりましょ!」
大人しかったフィーは既にいない。
「はじゅかちぃー」
すでにキャラ崩壊している海苔ちゃん。
「フィーちゃん落ち着いて、暴れたら怪我をしてしまうよ」
最早原型がないよ……先輩。
ボクは痛む頭で止めにかかる。
「みんな水を飲め!」
「『じゃあ始めるわよ!』」
ボクの話を無視して事が進む。
いつの間にか作られていた数字の書かれた割り箸を各々が指で摘まむ。
「「「王様だーれだ」」」
一回目。
「一番が下着を脱ぐ」
「『私だ!』」
何故か嬉しそうに下着を脱ぎ出す吠天先輩。
二回目。
「『一番が二番の頬にキスをする』」
「いちばんはわたちぃ!」
「二番は私に御座います」
海苔ちゃんがキャラ崩壊している先輩の頬にキスをし始める。
三回目。
「一番が……四番のお胸を揉むなどは如何ですか?」
「よんばんでちゅ」
「私の番ですね!」
海苔ちゃんのデカ乳をフィーが揉む。
最高じゃん!一番になったらご褒美がもらえるなら……。
「一番を引くしかない!」
四回目。
一斉に引いた割り箸を確認する、ボクは予定通りに一番を引いた。後は王様を引いた人が最高の奴を選択すれば……。
「私が引きました!」
引いたのはフィーだった。
内心思わずガッツポーズをする。
「じゃあ……一番が……」
心を躍らせつつ吉報を待つ。
「一番が全裸になる!」
はぁ?
「一番誰?」
「一番は誰ですか?」
「『速くぅ』」
全員の目線がボクに刺さる、最初から仕組まれていたのだ……。
「早く脱ぎなよ」
海苔ちゃんが肩に手を置いてにこやかに微笑む。
「いやっちょっ…みんな落ち着いて!」
じわじわと部屋の隅に追いやられる。
その後部活棟に響きわたった悲鳴は直ぐに消えた。




