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1 届かない祈りと灰色の聖夜



 何がサンタクロースだ

 何が助け合いだ

 何が神に祈りましょうだ


 上っ面の優しさなんざ虫唾が走る


 現実を見ろ

 強者は弱者を踏み潰しても気にしない


 いや 違うな

 奴らは踏み潰した事すら気付かねえ


 世の中なんてそんなもんだ

 俺は強者にはなれなかった





 

 約束の時間までまだ時間がかなりある。

 潰す宛てのない俺は、イルミネーションが瞬く賑やかな通りを離れ、少し外れた所にある、寂れた公園のベンチに座っていた。


 煙草に火をつけて空を見上げると、雪がちらつき始めた。


 そんな寒空の中、1人ブランコに乗っているガキがいた。

 年の頃は小学生の低学年くらいだろうか。

 もう夕方だが、親はまだ迎えに来ないのか?


 ……あ?

 なんでこっち来やがった?





「おじちゃん何してるの?」


「……お前こそ何してんだ?家どこだ?」


「家はそこだよ。あのね、おうちの人が呼ぶまで家に入れないんだ」


「……いつもか?」


「うん」



 ……何考えてやがる?

 この寒空に放り出しやがって


「くしょん!」


 ちっ 言わんこっちゃねぇ

 仕方ねえな 自販機はどこだ


「ほら、よ」


「わぁ ホットカルピス!いいの?」


「いいから飲め」


「ありがとーおじちゃん!」


 目の前で震えられても気分が悪いしな。

 それにしても……



「お前、俺が怖くないのか?」


「全然。だって《《おじちゃんは笑ってない》》もの」


「……どーいうことだ?」


「あのね。怖い人は笑ってるの。こーんな感じに」


 そう言って、このガキは指で口の端を引っ張って見せたんだ。


「……その顔か」




 ああ。よく知っている。

 それは「嗤い顔」だ。


 泣き顔を見たい

 許しを請う声が聴きたい

 どうやってさらに痛めつけてやろうか


 そんな奴らが反撃されない立場から相手を見下す愉悦の顔だ。



「私『サンタさん、今年は来てください』って毎年お祈りしてるの。でも、なかなか来てくれないんだ」


 そう言って笑うこのガキの笑い顔も、俺は知っている。


 こいつは自分の境遇を知って、受け入れて、諦めてる。そんな顔だ。


「……奴も忙しいからな。サンタを呼ぶときはな、声に出して叫べ。じゃないと届かねえぞ?」


「そうなの?でも、大声出すと怒られちゃうんだ」


「……そうか」


「……やっぱり、会えないかなあ?」


「さあな。だが、もし会えたら『合言葉』を言わされるぞ?」


「なんで?」


「いい子かどうか、奴は確認するんだ。プレゼントには限りがあるからな」


「えー知らないよそんなの」


「じゃあ教えてやる。それはな───」



 暇潰しの戯言だった。

 気紛れに過ぎなかった言葉を、俺はそのガキに告げた。



「あ、呼ばれた。早く行かなきゃ。じゃあねおじちゃん!」



 ……じゃあな。

 さて、俺も行くとするか。



 可哀そうだがお前の人生は詰んでいる。

 いつかそれに気づくまで、生き残れればいいがな。



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