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クロスゲームシンフォニー(多重奏)~従姉は悪役令嬢、俺は好感度判定キャラ~RPG風味  作者: Y.A


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第六十四話 ブラックイーグル公爵 

「城塞都市『ヒンブルク』に対する、示威行動と強行偵察を兼ねた夜行便を中止する」


「であろうな。犠牲ばかり多く益が少ない」


「暗黒魔導師殿、アンデッド公爵殿。今中止しては、これまでの労力が無駄になるぞ」


「ブラックイーグル公爵よ。ここで損切りをしなければ、さらに我が軍の損害が増えるのだ。そもそも夜行便は、貴公の率いる飛行モンスターたちの犠牲がもっとも多いではないか。人間が、『爆裂矢』を大量に配備して遠慮なく撃つのだから当然だ」


「しかしだな……」


「夜行便の中止は、賛成2、反対1だな。中止が決まった」


「そんなバカな話があるか!」


「夜行便の主力は飛行モンスターたちだぞ。飛行モンスターたちの犠牲が減ることを、なぜ彼らを率いる貴公が喜ばぬのだ? 先の目的を達成するために無駄な犠牲が出る作戦を中止する決断をし、次に備える。魔王様の四天王である貴公は、そういうことにも気を配らねばならぬのだぞ」


「わかっている! だがな!」


 駄目だな。

 ブラックイーグル公爵は納得していない。


 先日の大敗以降、我々魔王軍は軍を再編しつつ、魔王様が新たに呼び出した新しいモンスターたちを補充していた。

 大規模な攻勢はあり得ないが、我らモンスターは破壊、殺戮衝動からどうしても逃れられない。

 守りが手薄な村や町を小規模の軍団で襲撃させ、先日奪還されてしまった城塞都市に少数での夜襲を行わせている。

 人間たちが、城塞都市を改修、拡張中のため、それを阻止する必要があったからだ。

 あそこを奪還不可能なほどに強化されてしまうと、魔王軍によるマカー大陸統一が著しく困難になるからだ。

 ところが、夜行便と呼ばれる夜襲は上手く行っていなかった。

 これまでなら、暗闇に強い『デスバット』を上空中から夜襲させれば、夜警中の兵士を簡単に間引けたのだが、今はどの城壁にも『松明』が煌々と照り輝き、モンスターが人間に襲いかかる前に『爆裂矢』を放たれてしまう。


 爆裂矢は、標的に命中しなくてもその近くで勝手に爆発して破片を飛ばす。

 滅多に致命傷にはならないが、負傷したデスバットは撤退しなければならなかった。

 そうでなくても、『治癒魔法』が使えるモンスターは少ないのだから。

 回復力は人間よりも遥かに上だが、やはり『治癒魔法』の使い手が少ないと、今回のように大敗した時に響く。

 治療ができず、死んでしまったモンスターも多かったのでな。


「とにかく今は、犠牲を減らさねばならないのだ」


 補充よりも損失が大きければ、いつまでも戦力が回復しない。

 今は我慢の時なのだが、ブラックイーグル公爵を見ればわかるが、我らはそれが一番苦手だったりする。

 ブラックイーグル公爵も理性では理解できても、モンスターとしての本能が……というやつなのであろう。


「しかし、我らが兵力回復に努めたとて、人間側の戦力増強は著しい。この前の大敗が致命的ではないか。あれで天秤が大きく傾いた。ここで無理をしてでも城塞都市を落とさねば、結局ジリ貧なのではないか?」


 ブラックイーグル公爵も、別に無策で夜行便の続行を続けようとしているわけではないのか。


「暗黒魔導師殿よ。私も一つ気になることがあるのだ」


「気になることか? アンデッド公爵殿」


「城塞都市は巨大だ。ここに住民を戻し、他国からの派遣軍も含めた守備隊を置き、さらに城壁の強化。周囲に砦などを建設しているが、そんな物資がバルト王国に存在するのか? 我らにかなりの領地を蹂躙されたバルト王国がだぞ? 今までなかった夜行便を行うモンスターを狙う『爆裂矢』を大量に使用され、なにより人間が死ににくくなっている。噂では、連中は治癒効果のある魔法薬を潤沢に所持しているとか」


 つまり、このまま城塞都市を放置すればますます防衛体制が整い、余計に落としづらくなるというわけか。

 しかし、アンデッド公爵は夜行便の中止に賛成したのでは。


「『狼男男爵』に『プラチナナイト』殿。共に、ホルト王国にて命を落とした。狼男男爵は知らないが、プラチナナイト殿は件の錬金術師の抹殺を狙っていた」


「新しい素材の武具、城塞都市への潤沢な補給。そうか!」


 つまり、今の魔王軍による戦力増強策が成功するためには、人間側の補給の要。

 ホルト王国の錬金術師を始末する必要があるのだ。


「アンデッド公爵殿……」


「やるしかあるまいよ。暗黒魔導師殿」


 しかし、今の魔王軍に別大陸に大軍を派遣する余裕などない。

 となれば少数精鋭による奇襲になるが、それが難しいのはプラチナナイト殿の最期を見ればあきらかだ。


「ならば、俺が行こう」


「いいのか? ブラックイーグル公爵」


「俺は飛べるからな。どうせ『冥界の門』は潜れないが、あれを使った二人が失敗したとなれば、多少の供を連れて空からホルト王国の錬金術師を殺るしかあるまい」


「そうだな……それしかないか……」


 少なくとも、今の魔王軍の戦力ではな。


「では、お願いしようか。ブラックイーグル公爵」


「任されたぜ! 行こうぞ! 飛行モンスター軍団よ!」


 ブラックイーグル公爵は、数十の飛行モンスターたちを連れて一路ホルト王国を目指し始めた。

 上手く錬金術師の暗殺に成功してくれればいいのだが……。

 失敗したら、四天王が半減か……。

 一日でも早く、魔王軍の戦力を立て直さねば。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 既に、四天王は、二人殺られているのでは?
[一言] つうか人類側勢力軍需物資の大半が既に他大陸勢力からの援助品だろ いざ窮地になってからそこに思い当たるとか人類軍に勝てなくて当然だな。
[気になる点] 誤字なども数カ所あるます。 もちつきましょう。
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