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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
785/790

第785話 旁。

注意・この作品はフィクションです。実在の人物や団体、事象などとは関係ありません。

また作中の登場人物達の価値観なども同様ですのでご了承ください。



 『誰もがロムの事をかっこよく思っている』云々の話は、正直エアのキスではぐらかされた様な気もした……。


「…………」



 『表現』を知り得た事で『笑顔』を手に入れられた事は良かった。


 ……だがしかし、その逆に『心』のあやふやさも増したのだろう。


 それに伴って『心』の中に生じた情けない『悩み』の数々が、表立ってしまったのだと私は自覚した。


 ある意味、かつての『ロム』はその『表現』を持ち得なかったからこそ『不惑』でもあったのだと今なら思うのだ。



「…………」



 普通の『人』の様に、私も『よく惑うようになった』のだろう……ただそれだけの話である。


 『日常』に対する悩みは、私からすれば『一大事』であっても、エア達からすれば『当たり前の出来事』の一つに過ぎなかったのだ。



 彼女達とっては、その『道』は『日常』の中の一部とも言えるもので……。

 寄り添うエアの『表現』には、そんな深い『理解』が窺えたのである……。



 エアは凄い。私の知らぬ『表現』をたくさん知っているのだ。

 私に生じたその『悩み』も、先のキス一発で晴らしてしまったのだから──。



「…………」



 以前との『差異』に戸惑う事は誰にだってあるものだと──これはそういう話でもある。


 無論、かつては『ロム』も、それを手にしていたのだとは思うのだ。


 ……『原初』から笑えていなかった訳ではない筈だから。


 ただ、その手にしていたその『力』は精霊達へと渡り──『力』を授けた結果が、今の私に繋がっているだけだ。



 無論、その事に関して今更とやかくいうつもりは微塵もない。後悔などもない。

 ……ただ、『失くしたものをまた一から拾い集める事の大変さ』は、思ったよりも困難だっただけである。



 折角手に入れた『表現』も、思うような役立ちをせず、その未熟さから『心』は打ちひしがれ、己のこれまでの『道』さえも無意味なものに感じる程に……一瞬だけ『心』は挫折を味わいかけもした。


 この『心』はなんともあやふやで、揺るぎやすく、情けなかった……。


 それを自覚したのだ。



「…………」



 ……だがしかし、言い換えてしまえば、ただそれだけの話ではある。


 それこそ『人の気持ち』が、なんとも『歪』なものであるかを知り──それが己の『心』にも芽生えた事に、戸惑っただけなのだ。


 良くも悪くも『心』は揺れ動き、複雑に変化し、様々な『表現』をみせる。


 そして、それこそが『人の普通』なのだと知った。


 かつての『ロム』の単純さだったら……きっと気づかなかった『痛み』も『喜び』も、そこには深く隠されていたのだと。



 それを深く深く、自覚しただけなのだ。



「…………」



 ……そして、その『心の成長痛』とでも言う様な出来事と『心の変化』を、私は己の『未熟』を知った事で、色々とまだまだこの先も経験しなければ『人の気持ち』というものをちゃんと窺い知る事が出来ないと悟り……その『道程』に、また少々億劫にもなっている。



 何とか折り合いをつけては受け止めていき、その都度、是非を何度も何度も己に問い続けるしかないのだろうかと……。



 正直、それをなんとも『面倒だ』とは思った。


 ……だが、例え『面倒だ』とは思っても、やっぱり『欲しいな』とも思ってしまう訳で──その『心』もまた否定する事はできなかったのである。



「…………」



 なによりも、『表現する力』に魅せられたのだと思う。

 エア達の『笑顔』然り、『ロムの笑顔』を見て『喜んでくれる大切な者達の笑顔』然り、そこに在る『表現』が何とも眩い『宝物』に思えて、手に入れたい『欲』に駆られてしまったのだ。



 それを想うと、この『道』を歩き続けていきたいと自然と思ってしまう。



「…………」



 それこそ、『大樹の森』と言う『領域』があれば、大切なもの達の『命』だけを守る事にかけては不備はなかっただろう……。


 だが、しかし、『ロム』はその先を求めて歩き出したのだと今なら理解する。


 これから先の『笑顔』を知り、『喜び』を守り、より良い『幸福』を築いていくためには、この『道』がきっと必要になるだろうと、そう思ったのだと。



 そして、その為にはきっと『深い理解』が必要になるだろうと『ロム』は思ったのだ。


 己の満足を追い求めるだけではなく、周りの満足も満たしてあげたいと、その気持ちを理解してあげたいと思ったのだろう。



 ──ただ『笑う』だけではなく、より『良い笑顔』になる為に……。



 だから、願わくば、『ロム()』の『笑顔』がこの先も皆の『笑顔』に繋がる『表現』となり得るように……私はもっともっと『表現』を磨いて行こうと、そう思ったのだった。




「…………」



 なのでまあ、そんな『心』の難儀な話も一旦はここまでにしておく事にして……次はもっと明るい話をしていきたいと思う。



 ──正直、ここ暫くは頭を悩ませてばかりで、エアからも『ロムはちょっと考え過ぎかもねっ』と笑われてしまったのである。……考え過ぎも、時として『毒』となるらしいのだ。気を付けようと思う。



 そこで、今日からは『心』も身体ものんびりとする為に、何か気分転換になる様な『楽しい事』をしたいと先ずは考えた。



「…………」



 するとだ、不思議な事に、真っ先に思い浮かんだのは『ロム』も好きだった『お裁縫』であり、私もそれを思い浮かべた瞬間から『うずうず』としたため、早速手掛けてみる事にしたのである。



 この『耳長族(エルフ)』の姿に戻ってからは、笑えるようにもなった訳だし、ある意味ではずっと『表現』の練習をしてきたとも言える──。


 なので、今ならば自分らしい『お裁縫』もできる様になったのではないかと、そんな期待も内心上がっていた。



 ……と言うのも、かつての『ロム』は自分で『新しい意匠(デザイン)の服』を作る事ができなかったらしい。だがしかし、その点今の私ならば、それができる様になっているのではないかと、そう思い立った訳だ。



 新たなに挑戦する気持ちが『わくわく』と──私の『心』を沸き立たせてくるのを感じる……。



「…………」




 と言う訳で、早速私はその日から、周りの皆をも巻き込んで『新たなロムの服作り』を始めた訳なのだが──。



 しかし、それがまさか後の世で『伝説の武具』とも呼ばれる事になる『意匠のひな型』になるとは……この時はまだ誰も予想し得ぬお話なのであった。



またのお越しをお待ちしております。

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