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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
748/790

第748話 錯節。

注意・この作品はフィクションです。実在の人物や団体、事象などとは関係ありません。

また作中の登場人物達の価値観なども同様ですのでご了承ください。




 『教えとは残酷だ』──と言う、その言葉の裏には『教える側の損失』がある事を忘れてはいけない。


 またその『損失』は、単純に時間の消耗だったり『力』の浪費だったり、大小様々、有形無形含めて多岐にわたるだろうが……そこには常に『思い』が関わる事は言うまでもないだろう。



 ──要は、『どうでも良いと思える相手』にはそれ相応の教えになってしまう事がある、という話でもあると……。



 『…………』



 ……だがその逆に、それは教える相手が『大切な存在』だったならば、時に『命』すらも惜しくはないと感じさせるものではあった。



 本来、野生などにおいては、『子』に狩りの仕方を教える事すら『親』にとっては命がけだったりする。

 それはある意味で、『親の命を削って子を育てている』と言っても過言ではないだと。



 ……だがしかし、教わる側は中々に、その事に気づくのが難しくはあるのだ。

 気づくためには、それ相応の立場になってみないと分からない事も多い筈……。



 だから、実際に何かを教える上では、『やってみせる事』と『失敗する事』、『考える事』、『試してみる事』、『改善していく事』は大事なのだと思うのである。



 無論、その『教え』を聞いているつもりになってしまう事──その実『分かったつもり』になっているだけで分かっていない事は、とても勿体ない事でもあると……。



 『…………』



 ──ちゃんとその事を、理解するべき……なのだろうな……。


 『ああしなさい』『こうしなさい』と言う、その言葉の一つ一つすらも実は『命がけ』なのだと。


 当然の様に軽々と聞き逃していいものでもなく──それは『重たき教訓』であると同時に、ある意味では『遺言』そのものでもあるのだと……。



 だから『教わる側』がその事に気づけていないと、どれだけの『思い』が悲しくも損なわれてしまうのか……分かったものではないのである。



 『…………』



 『世界』の中で、『ロム』だけが『損失』をしながら『教え』ていた訳でもないのだ。

 『ロム』は不器用ながらも『エア』の為に出来る事をしようとしただけ……。


 だからそれは『世界』の中で行われる『日常』の一幕に過ぎないのである。



 ……無論、そこに残されたものが有効ではない場合も、時にはあるだろう。

 本当に無意味だったり、逆により大きな『損失』を招く可能性すらもあったとは思う。



 ──だがしかし、そこには常に何らかの『心』が寄り添っている事だけは忘れないで欲しい。



 要は『力』は使い方次第であるが……『心』の存在とその『損失』に『気づけるか気づけないか』では、また『力』の意味合いも大いに異なって来るのだと……。



 『…………』



 そして、その『差異』に気づけたであろうエアは、きっとまた一つ、大きく成長したのだと思う。


 『思い』は伝わり難いものだが……真に伝わった時、その『心』には大きな実を宿すのだと。


 そして、その実の『種』はいずれ芽吹く事にもなり……また次々と広がっていくものなのだと。



 もう『ロム』が居なくても、その『思い』はきっと繋がっていく筈である……。



 刈り取る事よりも、育てる方が余程に難しいのは言うまでもない話……。

 だが、もっと早くに育っていれば……それをちゃんと理解していれば、違った道もあったのではないかと、そう思うようになるのかもしれないと……。


 もしかしたら、もう『損失』を嘆かなくても済むかもしれないと……。



 ──ただ、もしもそこで嘆く事になったとしても、その『気づき』にはそれだけで充分に意味はあるのだと。



 『エア』が気づいてくれただけで、きっと『ロム』も十分満たされるとくらいにそれは素敵な事だと……。


 少なくとも、『ロム』がもう居なくなっても平気なくらいに──エア達の『日常』はずっと続いていける様になったのだ……。




「『ダンジョン』とドラゴン達が深い関りはあることは分かった。けど、昔から何らかの『意思』がそこにはある様にも感じていたからあまり不思議ではないかな。……でもね、きっと今そこに行くのは危ない気がするの。明らかに『罠』もあると思うし──」



 『対処法を話そうか!』と言い出したエアに対し、『聖竜()』は何故だか言い様のない感覚を覚えて瞳をぱちくりさせていた。……ただ、それ以上に『白銀のエア』の話す『ダンジョン』に関するあれやこれやの考察は純粋に興味深くもあって、大人しく耳を澄ませている。



 現状、私達は今『風竜くんの母親を助けに行きたい気持ち』に無性になっているものの、『危ないから幼竜三人をダンジョンには近づけたくないというエアの気持ち』にも理解が及んだのだ──。



 『…………』



 寧ろ、エアの『力』を知り、深く信頼している者としては、直ぐに話に納得もした。


 ──存外、簡単に納得したようにも思えるかもしれないが、エアの話はそれほど懇切丁寧で、『敵』がどういうものなのかも確りと教えてくれたのである。



 因みに、その内容を簡単に話すと、私達は『世界との繋がり』を介して『まやかし』を掛けられている可能性が高いのだと。


 そしてそれは『世界の管理者』である『聖竜(ロム)』でさえも防げない強い『干渉』であるらしいと。


 ……かつて、『呪術師達の成れの果て』と言う存在もいたが──彼らも『世界』の影から『人々』を操る存在だった訳で、その存在が行った手法と今回の状況はとても酷似している部分があるとエアは感じたらしい。



 だから、その場合は今の私達の様に『人』は無自覚のまま操られてしまう場合が多かったそうで……それに対処するには、それ相応の『力』が必要となるから今は私達をそんな脅威から引き離しておきたいのだと。



 実際、そんな『呪術師達の成れの果て』も、別の『領域』(『音の世界』)へとエアが離してくれたから平気になっている訳で、エアにはその『力』が既に具わっている事は言うまでもない。



 ただ、『人』を操る事を主軸としていた『呪術師達の成れの果て』がいるのならば、『ドラゴン』やその他の存在を主軸に操る存在が居ても不思議ではないとエアは考えたらしく──。



 元々『ダンジョン』と言う存在には何らかの『意思』が存在している事も推察していた事から……エアはそこに『黒幕』の存在を感じてならないのだと。



 ──よって、以上の事からもその対処には『世界との繋がり』が不思議(・・・)と切れている『白銀のエア』こそが最も適しているだろうという話でもあったのだ。



 彼女のみが、現状では唯一無二『世界』とは別の『領域』たる『大樹の森』とだけ『繋がり』を有する存在であり──『音の世界』の『領域の管理者』でもある為、対処するだけの『力』も有していた。


 その『力』を用いれば、『世界』からの思わぬ『干渉』を防げる事はこれまでの経験から可能だと分かっているし、此度の様に『まやかし』を直ぐに察知する事もできるからと……。



 『だから三人も『風竜くんのお母さん』を助けに行きたいかもしれないけど、ここはわたしに任せて欲しいんだ。……大丈夫。『お母さん』はわたしが連れてくるから。ここで待ってて欲しい』と、エアは頼もしくもそう語るのであった。



「……がゆ!」


「きゅっ!」


「……ぱう」



 無論、そこまでちゃんとした説得をされてしまったら、流石に駄々をこねる暇も反論も一切出なかった訳で……私達は三人揃って──『コクコク』とエアに私達は頷きを返していた。


 内心、エアの言う『干渉』の影響からか『うずうず』として反論したくなる気持ちも少しだけあったが、それよりもエアに任せた方が安心できると素直に思ってしまったのだ。


 ……『音』に親和性のあるエアの言葉だからか、すーっと私達の『心』に染み渡る感覚もあった。



「──よし!それじゃあ、実際に助けに行く前に、先ずはその『干渉』がどれほどか一時的で断ち切れるものなのか、既に根付いてしまっていて断ち切れないものなのかを知る為にも……みんなで一旦、一緒に歌でも歌おうかっ」



 ……ただ、そうすると『エアに任せる』事を選んだ私達に対して、エアはいきなりそう言いだしたのだった。彼女曰く、その『干渉』がどの程度の『力』を持つのか、対処を考える上でも知っておきたかったらしい。


 なので、エアは私達の前で『喜びの歌』と呼ばれる『精霊の歌』を綺麗な声で静かにゆっくりと歌い出したのである。



 ちゃんとした歌詞すらもなく──聞こえる音としてはただただ『ラ』と言う単音の連なりだとも思えるのだが……その歌は不思議と節が進むぬつれて様々な感情の『色』を宿している様な不思議な歌であった。



 何処かで聞いた事がある様な、そんな既視感を思い起こさせる不思議な歌だ……。



 ただ、そんな突然の歌に『え?今歌うのっ!?』と驚きはする……。

 でも、エアは歌いながらも目線で私達に……『思い思いで良いから好きに歌って欲しい』と促してくるので──まるでその歌に導かれるかの様に私達も続いて歌い始めたのである。



 当然の様に、私達の歌い始めは、ただの『音』の羅列でしかなくへたっぴではあっただろう。

 正直バラバラで上手くない事は確かだったし、ある意味では『不協和音』とさえ言えたかもしれない。



 ……だがそれも、気づけば次第に私達の声がエアの歌声を真似して追いかけていく内に、意外と近づいていって──段々と私達の『音』はエアの歌声と一つに合わさって、繋がっていく感覚に包まれたのだった。



 言ってみれば、それはまるで『音』に包まれた『疑似領域』の様にも思え──。


 気づけばいつの間にか私達が居る『宿』の中の一室、その限定された空間は『音』の響きで満ちていき──その様子はまるで『白い翼』がふんわりと私達を覆い隠すかのように私の目には視えたのであった……。




またのお越しをお待ちしております。

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