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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
729/790

第729話

注意・この作品はフィクションです。実在の人物や団体、事象などとは関係ありません。

また作中の登場人物達の価値観なども同様ですのでご了承ください。


(この場を借りて、また少しだけ報告させてください!腰痛の件ですが、おかげで『明日からは平常』に戻れると思います!無理せずにここ数日をちょっと安静にしておりました。更新が遅れてしまい申し訳ないです><)




 ──とある街で泥だらけの男が叫んでいた。



 『なんでこんな酷い事をするのか』と。

 『俺達はただ祝っていただけじゃないか』と。

 『みんな幸せだったのに、それをなんでぶち壊したんだ』と。



 『…………』



 無論、そこには加害した側の──私達の思惑などは一切考慮に入っていないだろう。

 いくら説明しても理解は得られず、彼にとってはただただ私達は『悪』であった。



 いや、実際彼だけではなく、『街』の多くの者達も同様の気持ちを抱いているようだ。

 彼らは皆それぞれが声を荒げ、感情を昂らせていた──。



 『──ふざけんじゃねえっ!あれが俺らを思ってやった事だと?『ドラゴン』に対して油断していたから?その警戒心を持たせるために?……てめえら、いったい何様のつもりだっ!!馬鹿にしてんのかっ!折角の祝いをぶち壊しやがってっ!お前らに言われる筋合いなんてこれっぽっちもねえ!余計なお世話だ!!出てけっ!今すぐこの街からさっさと出ていきやがれ馬鹿野郎ーーーっ!!』と。



 『…………』



 そして、そんな彼の言葉を筆頭に、周りの者達も言うのである。



 『警戒は必要だったかもしれないが、何もこの祝いの最中にやらなくても良かっただろう』と。

 『今日無事だったんだから、明日から始めれば良かった話だろう』と。



 ……無論、それはある意味で予想通りの反応ではあった為、私達も反論はしなかった。

 伝える事を伝えて、それを受け取った彼らがどう判断するのかは彼らの判断に任せるのみだと。



 最終的に、素直にその言葉に頷いて私達は『街』から去る事に決めたのだ……。



 当然の様に今回の『余興での被害』を要求してくる者達もいたが、元々『ドラゴン』という存在と戦わせてくれと頼んできたのは向こう方だし、『街』は不思議な光に包まれはしたが、それで崩壊はしていなかった為結局は罰する事もできなかったらしい。



 『街』の中という縄張りにおいて、その地位を守りたいと思う者達はこれ以上刺激して下手に『竜使いの怒り』を買いたくはなかったという気持ちもあったのだと思う。



 ……まあ、罰せるだけの『力』が最初からあったならば、彼ら自身で『水竜達』の襲撃も防げていただろうし、今こうして泥だらけになる事もなかっただろうと。



 『…………』



 ……そもそも、結局私の放った『ブレス』も『街』を光に包みはしたが、『無傷の街』と言っている様に『余興』前と変わりない様相を『街』は保っていた。



 建物や『人』、そこに存在するありとあらゆるものにその『力』が過剰な影響を及ぼさない様に──不思議と事前に『調整』も済んでいたので、それを利用したのである。



 ……正直、そんな配慮をしていたつもりはなかったのだが、気づいたら不思議な既視感もあり、ちょうどいいからとそれを活用した。



 『…………』



 だが、実際にこれで本当に『街』がなくなっていたとしたら、彼らの怒りは今の比ではなかっただろう。……なので、これでよかったとも思うのである。



 無論、一番の気がかりは、この件によって『白銀の竜使い』ことエアの『名声』を大きく損なってしまう事だったが──エア自身はそれを全く気にしていない様子であった。



 『──ううん!わたしは、全く気にしないから大丈夫だよ!きっとこれで良いんだと思う』と。



 現状、『街』の住人達は当初の親しみがほぼ皆無になってしまったと思える程にエアへと厳しい視線を向けるようになっているが、全く構わないと微笑んでいるのだ。



 『それはわたしがしたい事でもあったから……』と。

 『それに、ロムを手伝うって決めたしね』と。



 『街』の者達から罵声に近い金切り声を幾度も向けられても──サッと魔法で【消音】を施し、相手へと自然な微笑みを返してしまうくらい、エアのそれは余裕な対応で……まるで、以前にも似た様な状況を経験したことがあるかの様に手慣れていた。



 その上更にエアは『街』の者達に対してこうも言うのだ──。



 『今回の事はただの気まぐれでしかないけど……貴方達にも未来で笑っていて欲しい』と。


 『何が起きるかわからない世の中だから、油断はして欲しくなかったの。……でも、貴方達の様子を一目見て、わたし達は貴方達が『ドラゴン』に対してちゃんとした危機感を持てているのか不安になってしまったから……』と。



 『今この瞬間を大事にするのは分かる。その為に『力』を使い、『力』を蓄えるのも凄く分かる……けどね、時と場合で判断を誤ってはいけない。その『力』はただの飾りではないんだ』と。



 『『力』を備えたつもりで満足せずにいて欲しいの。その『力』の使い方は誤れば当然痛い目にもあってしまうから』と。



 『……貴方達は明日からやればいいと言ったけど、その明日には『水竜達』がまた襲ってきたらどうするの?昨日の内から対策を進めておけば良かったと、そう言いながら今日みたいに叫んで終わりを迎えたいの?』と。



 『──今日だけの笑顔じゃなく、これから先も笑顔で生き続けられるように……気を付けて歩いていって欲しい』と。



 『…………』



 ……無論、それに対して『明日また竜が攻め込んでくるかなんて決まってないだろう!』と反論する事はできただろう。



 だが、それも『ドラゴンへの危機感』を思い出すまでの話だ……。

 既に泥だらけになってしまった彼らは、『聖竜()』のせいでその話が現実味を帯びているだけに真剣に聴かざるを得ない状態になってしまっている。



 そもそも、『心』の在り方こそが一番大事なのだと、エアは彼らに諭そうとしていた……。



 簡単に言えば、あのままだと『何となく』で終わっていたかもしれない『ドラゴン』への対策が、より現実的になるようにしたかっただけなのだと。



 『ドラゴン』への対処を講じるとしても、彼らの考えでは『冒険者や戦える者達を増やせばいい』というものでしかなかったのだろうが、それではきっと『痛い目』を見る事になるよと、それを知って欲しかったのだと。



 より多く成長できるように、より一歩でも多く『幸せ』な道を歩めるようにと、気づいて欲しかっただけなのだと──。




 『貴方達は『街』という『道具』を使って──何を守り、何をするつもりなの?』



「…………」



 『貴方達がしなければいけない事は、お酒を飲んで騒ぐこと?……嫌な事から目を背けて忘れる事?……辛い日常を耐える為に、何をすれば本当に『心』から笑える様になると思う?』



「…………」



 『勿論、貴方達の全てを否定をしたい訳じゃないし、考え方を変えろとまでは言わない……』



「…………」



 『……けどね、このままだと貴方達はきっと『ドラゴン』達とまた争う事になって、負ける気がしたんだ。そして、次来た時にはもうこの『街』がなくなってしまっている気がした……。だから、わたし達はそれが『嫌』で、あなた達の事が少しだけ心配になっちゃったんだ。……要らぬお節介を焼いちゃったかもしれないけど──貴方達には必要ないと思えたとしても、少しだけ考えて欲しかった。ちゃんと自分達だけで歩いていけるって言うならそれでもいい……でも、明日にはわたし達はもうこの『街』には居ないから……』と。



「…………」



 ……すると、そんなエアの話に聴き入っていた者達は、上手く言葉を返せぬままに少しずつだが項垂れていっている様子が私にも見て取れた。



 『色々と考えさせられる出来事になった』と、彼らがそう思ってくれるかはわからない。



 だが、何かしらの得るものはあった様にも思う……。



 『…………』



 なにより、エアの言葉は彼らの『心』にもよく響いた様子である。


 だから、この先は彼ら次第だろうと……。


 此度の機会が彼らにとって良き経験となる事を私達は望むばかりであった──。




またのお越しをお待ちしております。

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