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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
715/790

第715話 水籠。

注意・この作品はフィクションです。実在の人物や団体、事象などとは関係ありません。

また作中の登場人物達の価値観なども同様ですのでご了承ください。




 『お店に売ってないなら作ればいい!』というそんな発想は、よくある典型的な『言うは易く行うは難し』のそれだと思えるのだが……。



 『水竜の子』の為にエアは本気で自ら『可愛い籠』を手掛ける気らしく──街にある商店(素材屋)でごっそりと『籠の材料』になりそうな品物を買いあさると、荷物持ち二人(私と『水竜の子』)を引き連れて満足気な表情で宿屋へと取って返したのだった……。



「……ロムはねー、昔からわたしの為に色々と作ってくれたんだよー……それでわたしも、よく服作りのお手伝いとかしてたから、そこそこの腕前はあると思うんだー。複雑なのは作れないかもだけどー、シンプルでっ、よっとっ、可愛いやつなら、こう、こんな感じで編んでいけば出来ると思うんだよねー」


「きゅー、きゅー」



 ……ただ、そうして実際に作り始めたエアは予想外に手際が良く──植物の皮が平紐状態になった物を何本も上下左右に交差させながらスイスイと次々編みこんでいったのである。



 こういう場合『実際に作ってみたけど、全然上手くいかなくて失敗しちゃった!』みたいな法則がありそうな気もしていたのだが……エアは少々言葉が間延びしてしまうくらいで、作業には全く淀みがなかったのだ。没頭するその姿は、まるで今だけ一人の職人の様な雰囲気すらも醸し出ている。



 傍で興味津々に見つめている『水竜の子』に対しても、何をしているのかを丁寧に見せて教えてあげるくらいの余裕もある様子で……そんなエアの姿に『聖竜()』はまた一つ彼女の凄さを感じたのだった。



 それにエアは『籠作り』が順調に進んでいくと、更にはこんな話もしてくれて──



 『植物だからねー、時々水を吹きかけてあげるとー……ほらー、喜んるのか形も直ぐに整うんだよー』とか。


 『魔法使いはねー、物作りに適してるってロムはよく言ってたなー。こういう『力』の使い方が一番、好きなんだって。落ち着くって言ってた気持ちがわかるなー』とか。



 『それにねー、魔法の使い方だけじゃなくて、旅の仕方や、森の歩き方、色々な素材の見分け方とか活かし方も教えてくれたんだよー。冒険者になるまでの長く感じたあの日々が今では懐かしいー』とか。



 ──そんな大切な思い出の一つ一つを慈しみながらも語り続ける彼女の表情は、不愛想な状態が保てない位にニヨニヨとしており、とても『幸せ』そうにも見えたのだった。



 正直、そんな様子を見ているだけで、私も『水竜の子』も一緒にぽかぽかとした気分になったのである。



 昨日までと何一つ変わらぬ空間である筈の──『ただの宿屋の中』というその場所が、今はちょっとだけ特別にも思えた……。



 『…………』



 ……そうして、作り始めてから凡そ一時間もかからずに、『白銀のエア』作──『世界で一番可愛い水竜ちゃんの籠』は完成していた。



 基本的に素材は何らかの樹皮に近しい平紐であり、それを綺麗に編み込んで作られている訳なのだが、形が完成した後には魔法で『水竜の子』の鱗色と同じ綺麗な透き通る青色で染められてもおり、見栄えもかなり美しい逸品となっているのだ。



 ……それはまるで、一見するとそこに小さな『海』があるかのような独特の雰囲気さえも漂っていた。


 尚、それには更に『付与魔法』として【水魔法】と【浄化】も付けているらしく、好きな時に『水分補給』が出来る様にもしてあるらしい。



 他の『ドラゴン』と比べて『水竜』という種族は陸上だと鱗が乾燥し易いとも聞く──その為『ドラゴンの鱗』本来の効力や防御力を一定以上に保つ為には水が近くにあった方が『水竜の子』にとっても都合が良いだろうと配慮したのだと思う。



 また、エアとしては基本的に『お食事』は『魔力球』もある為、未だ魔法がそこまで得意とは言えない『水竜の子』の為、彼女が好きな時に水浴び出来る様にと『美容目的』で付与した意味合いも強いのだと感じた。



 ──言わば、この『籠』は『水竜の子』が『可愛く在り続けられる様に』と、それを補助する事を目的として作られた『魔法道具』なのである……。



 『…………』



 ……因みに、私も少しだけ協力しており、『籠』の内側に生み出された水が外へと意図せずに零れたりしない様にする為、横倒しになった際や水が溢れそうになった時には『籠』を包むように一時的な『疑似領域』を発生させる様にと『調整』も施したのだった。



 これでも私は『世界の管理者』なので──やろうと思えば『籠』の周囲に満ちる魔力を介してこれ位の事は出来る。……また、『籠』の使用後に残った水についても、必要が無くなれば自動で『魔力として還元され吸収する機能』も追加したのだ。



「きゅー!!」


「どう?喜んでもらえる?」


「きゅぅぅ!きゅー!きゅー!」


「うふふっ、そっか!作って良かったーっ!」



 ……結果的に、そうして出来上がった『籠』は予想よりも高性能となったが、それに見合うぐらい『水竜の子』も大いに喜んでくれたので、エアも私も大変やりがいを感じられてとても満足であった。


 なので後は、出来ればどうか末永く大切にして欲しいとそれを願うばかりである。



 『…………』



 ……因みに、心なしか私の持っている方の『()』が、なんだか少しだけ寂し気にしている感じもしたので、機会があったら()の事もどうにかしたいと、そんな風にも思う私なのであった──。





またのお越しをお待ちしております。

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