第671話 心音。
注意・この作品はフィクションです。実在の人物や団体、事象などとは関係ありません。
また作中の登場人物達の価値観なども同様ですのでご了承ください。
『呪術』とは『心』に深い影響を及ぼす魔法である。
……かつて、心優しき呪術師達は、多くの『人』の為に、ひいては『世界』の為に、その魔法を鍛え上げた。多くの『心』を救う為『繋がり』を介し、彼らの魔法は『盾にも剣にも』になったのである……。
──カエセ。
……だが当然の様に、『繋がり』を介して魔法を使う事は言う程に容易いものではない。
魔法使い達の総数からすると『呪術師達』の数がそこまで多いと言えないのも──『適正』然りその魔法があまりにも難し過ぎるからである。
相手の『心』に対し、己の『心を繋げる』様な行為は、ある意味で自分の『心』を対価にして消耗しながら魔法を使う様なもの……。
つまりは、その際に相手の『心』の影響を受けるという事でもある。
そしてその影響は多くの危険が付きまとう事は言うまでもない。
相手の『心』が淀んでいれば、相応に己の『心』も淀みに触れる危険性は高い。
それも、数多くの存在と繋がればそれだけその淀みも嵩んでくるだろう。
無論、『繋がり』を得る事によって『力』を得る事はできる……。
だが実際はそれ以上に、次第に術者は『心』の『混濁』に悩まされることだろう……。
──要は、それによって『呪術師達』はいずれ己の『心』が分からなくなってしまうのである。
『…………』
……だがしかし『人の心の痛み』を知る彼らは、そんな危険な魔法であったとしても『呪術師』としての生き方を変える事は殆どないのだという。
何故なら、彼らには『誇り』があるからだと──。
『呪術師』として、『人』を助ける事に喜びを感じ、『人』を思いやる事に長けた魔法を扱う事に対する気高さがあるのだと。
『人の心』に触れれば触れるほど、『呪術師達』は自分達の魔法の必要性を知る。それが『人』の役に立つものであると信じている。
だから、例え次第に己が『淀む』事になろうとも、最後まで『呪術師』であろうとするのだと。
……無論、それが続くことで『虚』へと陥ってしまう事も覚悟の上でだ。
無論、その『虚』によって『呪術師達』の中には廃人の様な状態になってしまう者も居ると。
──カエセ。カエセ。カエセ。
……だがしかし、その果てに、一部の『力』ある『呪術師達』は、『差異』を超えるらしいのだ。
実際、『世界』で最初に『差異』を超えた魔法使いも『呪術師』だったという。
そして、『差異』を超えた『呪術師達』の多くは『世界』とも深く繋がれるようにもなるらしいのだ……。
──カエセ。カエセ。カエセ。カエセ。カエセ。カエセ。カエセ。
……だが、そうして『差異』を超え『世界』と繋がれるようになった『呪術師達』の多くは『意識』だけの存在となり──その者達は、身体の再構成ができずに戻ってこれなくなってしまうのだという。
こればかりは魔法使いとしての扱う魔法の種類の差であり、『心』の『混濁』により自分の姿を見失ってしまう事による弊害でもあって、どうしようもなかったと。
ただ、その結果、いつしか変質していった彼らの『意識』は『世界』の裏側に存在する『音』となってしまったのだという……。
──カエセ。カエセ。カエセ。カエセ。カエセ。
『…………』
……『呪術師達』の多くは『人の心』と『繋がり』を持ち、また『世界』を介して更に多くの新たな『繋がり』を延々と増やしていく存在に──そんな『縁の魔獣』ともいうべき『化け物』になっていったのだ。
そして、そんな『呪術師達』はいつしか『世界』を己が物だと考える様になってしまったのだと……。
いつしかその存在は『人』を助ける事から、その『繋がり』を介して『人』を弄ぶように変わってしまったのだと……。
『優しき魔法使い達の集合体』は、悲しくも『世界』で最も『混沌』を生む存在になってしまったのだった……。
──カエセ。カエセ。カエセ。カエセ。カエセ。カエセ。
『…………』
……そして私は、そんな『呪術師達』の『小さな慟哭』をひたすらに聴き続け、彼らの『怨嗟』を受け止め続けるのだった──。
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