第615話 際立。
「──ロム、わたし思ったんだけどっ!やっぱり最初はあの子達を探そうっ!わたし、あの子達にロムの凄さを教えに行きたいっ!」
「…………」
……ま、眩い。
『私に似た魔物が生まれた』事をきっかけにして、エア先生主動による『ロムのイメージ改造作戦』が発案された。
この作戦の意図としては、『魔物のせいで悪い噂が流れそうだから、それに負けない位の良い噂を先に広めておきロムの名誉を守りたいっ!』という何とも素晴らしくもあたたかなお考えである。
……流石はエアだ。完璧な計画である。私も全力で支える所存だ。
と言うかまあ、自分の事なので私が主動で行うべきなのかもしれないが……。
でも正直、自らの事とは言え、私はそう言う噂などにはほとほと無頓着な方なのだ。
今まで己の情報が漏れないようにしていたのも、敵対者に利用されない様にする為にと言う思惑が主で、言わば奇襲などを受けない為の対策と言う考えが強かった。
魔法使いの世界では、『一瞬で相手に気付かれない内に最大威力をぶっ放す!』と言うのが言ってしまえば必勝法みたいな部分がある為、それへの備えでもある。
だから、『噂』などは別の思惑が絡まない限りは無視しても構わないと思っていたし、『人との繋がり』においてはある程度はそう言う話があった方が関係も育みやすいのでは?とか勘違いしていた訳なのだが……。
不器用な私はどうやらそこら辺をちゃんと愚かにもはき違えていたらしく──身近にいるエアなどにはずっと『我慢』や『辛い思い』をさせてしまっていた事を知って深く反省したのであった。
「…………」
……よって、これらは私の為でありながらエア達の為にもなる訳で、本心では多少恥ずかしい思いを抱きながらも、全力でそれらの『悪い噂』に対処していこうと今では考えているのである。
まあ、早い話が『良い意味で目立てばいい』と言う話だろうし、基本的には今までの様に冒険者活動をしながら『人との繋がり』を意識し、困った人達をもっと積極的に助けていこうと言う方向性だと私は認識していたのだ。
たぶん、エアの作戦では敢えて他の人が受けない様な依頼や、困難過ぎる依頼などをこの際にどんどんと受けて、私の『冒険者ランク』も上げつつ、人気者になってしまおう!とか言う話だとばかり思っていた訳なのだが──
「…………」
──実際は、そんな私の予想の斜め上の話が最初から出て来てしまった状態なのである。
……ただ、うむむー『双子達との仲直り……』か。
それはなんとも……複雑で難解過ぎる問題であった。
勿論、それをする事は確かに私も必要な事だと思うし、この『二十年』であの子達が無事に生活できていたのかも心配している部分は多大にある。
友との約束だってあるし、出来る事ならば私もあの子達には会いに行きたいのだ……。
「…………」
……だがなー、正直あの子達との関係においては、今回とはまた別件であると考えた方がいい気もするのだ。
繰り返しになるかもしれないが、正直あの子達は別に私の凄さとかにはあまり興味関心がない気がするのである。
寧ろ、無関係で私の事を嫌っている節もあり、もっと言えば『エアの想い人』が私だから嫌われてしまっていると私は本気で思っているのだが……『二十年』も経てば、そんな気持ちも変わるものだろうか?
「…………」
……だが『耳長族』的な視点で言うと、実際はまだ会いに行くには少しだけ早い気がしてならなかったのだ。
むむー、でも正直判断の難しい所ではあった。
基本的に、長命種においてはこういう場合に二極化する事が多く……。
意外とあっさり忘れる場合が殆どなのだが、千年かけても『根に持つ』場合も時々あるのだ……。
因みに、双子達の母親であるティリアの場合は……。
「…………」
……いや、すまぬ、今のはなんでもない。忘れて欲しい。
不思議と今、私に対して『超短弓』を射る構えを取ったティリアの姿が急に頭に浮かんできたりとかは全然ない。本当にない。
ただ、ないけどとりあえず私はその先を考える事を止めたのだった。
まあ、そんな訳もあり、尚更に拙速な判断をしていいものかと困ってしまうのだが……。
無論、私としてはこれ以上『双子達に嫌われたくはない』というのが『本心』からの望みではある訳で……。
当然、そんな想いは今もエアには筒抜けな筈で、私が何に対して懸念を抱いているのかも伝わっているとは思うのだが──え?それでも行きたい?本当に?大丈夫だと?そ、そうか……。
「……ねっ?お願いロム。一緒に行こうっ?それに『あの魔物』があの子達が居る場所で『黒い雨』を降らすかもしれないし、あの子達の安否確認の為にもさ。陰からこっそり覗くだけでもいいから──ねっ?
?」
「エアがそう言うならば……うむ、わかった。行こうか」
「うんっ!行こうっ!きっとあの子達も迎えに来てくれるのを待ってるからっ!」
……確かに、『例の魔物』とあの子達が接触する可能性もない訳ではないのだ。
双子達の旅立ちから数年以上のブランクはあり、その可能性はかなり低いだろうとは言え、また『万が一』という可能性も当然ある。その為、あの子達の無事な姿を確認するだけでも行く意味は十分にあると私も納得したのである。
無論、もしも会いに行って『まだ会いに来るのは早過ぎたかもしれない!』と察したのならば、双子達に私達が来た事を悟られなければいいだけの話でもである……。
「……では、基本的に良い意味で目立ちながらも──」
「──あの子達には絶対に気づかれない様に、今回は冒険しようかっ!」
……と、そう言う事に決まったのだった。
──正直、冒険の趣旨としてはなんとも矛盾する様にも聞こえるが、私とエアならばそんな矛盾も楽しんで歩いて行けると想い合って、私達はまた旅立つのであった……。
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