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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
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第309話 有備。




 バウは『絵画』、エアは『歌唱』、そして私は『お裁縫』と、それぞれが実りの季節に相応しく芸術に励み楽しい日々を過ごした。……ん?『お裁縫』も芸術に入るのかと?もちろんである。


 『表現する事』、それが芸術の本質であるので、人それぞれが己の好きな事を好きな様に表現できれば極論なんでも芸術になるのだ。

 今回の経験から、バウは更に絵を描く事に興味を持ち、暇な時には夢中になって『絵』を描いて過ごす様になり、エアは自分が学んで来た様々なことを漠然と鍛えるだけではなく、ちゃんとその中にある『楽しさ』を意識するようになった。



 『絵画』の良い点は表現力が上がり、バウの心を豊かにしてくれる事だ。

 心が豊かになり、感受性を高める行為は魔法使いの世界においてとても意味があるので、お勧めである。

 また魔法的な視点において、普段見ている風景をただの灰色の光景だとするのならば、そこに色がつく様な感覚だろうか。それを鍛える事で、魔力で探知をした際などに、より細かく正確な情報を得る事が出来る様になると思えば分かり易いかもしれない。



 そして、エアの様に己が感じ取る一つ一つに意味を持たせ意識する事もまた素晴らしい事である。

 少し言葉で説明するのが難しい範疇の話にはなってしまうが、感覚派の魔法使いとしてこれもとても重要な事で、これが出来るようになると、魔力の扱いがまた一段と上手くなり威力の調整等の幅も広がるのだ。


 魔法の威力と言うのは少し不思議なもので、基本的には魔力を込めれば込めるだけ高威力にはなるのだが、その時漠然と魔力を込めるのと、意味を持たせて込めるのとでは効率的な面において大きく変わって来る。


 

 ……まあ、なんでも訓練訓練とは言いたくはないが、今回の経験が二人にとって大きな意味を持つ事は間違いないだろう。

 ただ、私的にはなんと言っても、二人が楽しそうにしている事が何よりも素直に喜ばしい。

 それに、二人が楽しそうだと私の『お裁縫』も捗るのだ。



 最近の私は『絵画』に夢中なバウには、様々な色や形のベレー帽を作ってはエアとお揃いで被せてみたり、一曲一曲の『歌唱』に拘りをみせているエアには喉を労わる用の装備として回復効果付きのマフラーだったりマスクを作ったり、身体を冷やさない様にと薄手でも暖かいカーディガンを作ったりしていた。



 旅の中で実用性のある服作りはそれこそ数えきれないほど行って来たのだが、『絵を描く時用の服』や『歌を歌う時用の特別装備』など、色々なシチュエーションに合うような服作りは中々に新感覚で、私は楽しく『お裁縫』をしているのであった。モノクルも興奮してか『ビカビカ』と光りまくったほどである。




 ──そんな『ダンジョン都市』での日々も瞬く間に過ぎた。



 そこまで長居した訳ではないが、濃密な日々が多く、毎日がお祭りに近い状況だったとは思う。


 気が向いたので、再び『ダンジョン散歩』にも『白石』冒険者側として参加した時には、かつての子供達の中から『青石』や『緑石』になっている子達が居り、彼らがギルド職員側として頑張っている姿を見ながら一緒に歩けたのは嬉しかった。



 一緒に参加した小さな子供達には、初対面からまた不思議と懐かれ、よじ登られてばかりだ。


 ……相も変わらず、私の白いローブの誘因力は強いらしい。

 だが、安心するのは分かるのだけれど、皆が匂いを嗅いでくるのだけは何度経験しても慣れるものではなかった。



 それと相も変わらずと言えば、『白石』のお母さん方達にも未だに不思議と信頼されたままで、子供達の世話も何度も頼まれた。

 『ダンジョン散歩』が終わると毎回エアと一緒にお母さん方とのお茶会にも強制参加だったな。


 最近の『ダンジョン都市』の状況も知れるいい機会だったので、基本的には楽しいお茶会ばかりだったのだが、使用した店が人気の喫茶店と言う事もあって、時々黒とんがり帽子の集団とも遭遇しかけた時にはドキリとする場面もあった。向こうは覚えていないだろうが、心情的にドキッとするのだ。



 お母さん方は各地域のギルドとも独自の情報網があるらしく情報にはとても敏感で、色々と興味深い話も多く聞かせて貰った。未だ長引いている『金石』冒険者達の高位ダンジョンの攻略話などは特に思わず前のめりになって聞いた程である。……ドライアドの店主も元気でやっているといいのだが。



 ……まあ、そんな感じで、大方の会いたい人には会え、再会を喜び楽しい時間は過ごせた。

 もちろん再会できなかった人もそこそこ居たが、それはまた次回の楽しみに取っておく事にしよう。





 ──と言う訳で、例年に比べればまだかなり早い時期ではあるが、私達は十分に『ダンジョン都市』を満喫できたので、再び『大樹の森』へと帰って来たのであった。



 ……当然、早く帰って来た事には理由があり、前回のイベント時の話し合いで今回からは多めに準備期間を取ろうと約束していたからである。

 前回は前回で素晴らしい盛り上がりはあったのだが、なにぶん時間が少なくて突貫工事的な準備になってしまった部分があった。

 なので、今回はそれを無くし、前回を超える大きなイベントにする計画なのである。



 それに、今回はバウが描いた『絵画』の数々をお披露目する『バウ個展』も急遽開かれる事が既に決定しており、エアや精霊達の合同合唱である『エアライブ』も開催予定の話が出ている。……なんか微妙なネーミングになってしまったが、他意はない。



 基本的にやりたい事は全部やろうと言うスタンスなので、この先ももしかしたらどんどんとイベントの数は増えていくかもしれない。

 だが、それが面白いとも私は感じている。

 やりたい事をやる為に力を使える事は素直に嬉しいのだ。


 それに、最近ではまた私の能力も上がってきており、『ドッペルオーブ』を介しての魔法の制御も段々と慣れてきた。開催場所を各地に分散すれば運営自体はスムーズに行えるだろう。



 また精霊達に関しても、前回のイベントで『ゴーレムくん軍団』に敗北したと言う事もあって、今回はかなりの気合を入れていると言う事前情報を、いつもの四精霊からは仕入れている。

 なので、そんな精霊達の期待に応える為にも『ゴーレムくん軍団の強化』等も私は手を抜かずにやっておきたいと思う。……正直、やる事はかなり多い。



 だが、お祭り本番も楽しいけれど、こういうお祭りの準備もそれに等しい位に楽しいので、エアやバウと一緒に頑張って行こうと私は思った。




 ──そうしてある意味では、イベント期間よりも激しいお祭り準備期間が始まる事になったのである。





またのお越しをお待ちしております。

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