第270話 華胥。
「……ろむ?」
「……ん?」
……しまった。
エア達の夢見が良くなる様にと、回復や浄化をかけて頭を撫でていたら、そのエアが起きてしまったのである。
だが、それも当然の話だ。誰だっていきなり頭を触られれば驚くだろう。
それに、いくら無邪気で幼子の様にぐっすりと眠っている様に見えたとは言っても、それはただ私から見えるエアの姿と言う話であって、本当のエアは凄腕の魔法使いであるし、五年以上の経験を持つちゃんとした冒険者でもあった。
だから、そんなエアの頭を軽くとは言え勝手に撫でたりすれば、そりゃ異変を感じて直ぐに目を覚ましてしまうのは、もう火を見るよりも明らかである。
私も普段ならば寝ている人様の頭をそうそう軽々しく撫でたりはしないし、起こさない様にもう少し気を配った行動ができるとは思うのだが、どうやら私もまだ寝ぼけていたらしい……。
……それに、白い糸目のプニプニドラゴンのぬいぐるみこと、バウの方も、一見して変化は無いかと思っていたが、少し注意深く探ってみると、ほら、バウも薄目を『すーっ』と開けており、こちらの様子を窺っていることが直ぐに分かった。
普段から街中ではエアに抱っこされたまま脱力しぬいぐるみのフリをしている事も多い為か、その脱力感があまりに自然過ぎて、私も直ぐには気づけなかったけれど、すっかりとこちらも目を覚ましてしまったらしい……。
「……二人とも、本当にすまない」
気持ち良く眠れるようにしたかったのだが、結果的に私が二人の幸せな眠りを邪魔をしてしまった様なものであった。
これはなんとも申し訳ない事をしたと、私はすぐさま二人に謝る事にする。
何だかんだとは言ったが、夢の中の自分よりも余程ポンコツを晒してしまった私なのであった。
「…………」
「…………」
だがしかし、そんな私の謝罪に対し、二人からは何の返事も返ってこない。
「……ん?」
いやそれどころか、今起こしてしまった筈なのに、直ぐにまた二人とも寝る準備へと入ろうとしているのがわかった。……これはまさかの『三度寝』だろうか。
ただ、その様子は先ほどとはまた少し違っており、私のお腹に頭を置く位置、と言うか角度、と言うのだろうか、二人とも微妙に首の角度とその向きが私から撫でやすい様になっているのがとても印象的なのであった。
……と言う事は、これはもしかして『撫でたいんなら、もう少し撫でても良いんだよ?』と言うサインなのかもしれないと受け取った私は、先ほどよりも丁寧に魔力を込めて、優しく撫でてみたのであった。
「ふふっふふふっ」
「ばうっばうっ」
なんだろうか。少しくすぐったいのか、二人からは時々そんな微妙な笑い声が漏れ聞こえてくる。
それにどうやら、悪くはない声色をしていたので、私は二人が満足するまで撫で続ける事にした。
あまり撫でられ慣れていないからか、暫くは二人ともくすぐったそうにはしていたものの、ずっと楽しそうにしていたのが見ていてよく分かった。
……そんな二人を見て、私はやっぱり思ったのだ。
こんな笑顔こそが、やはり一番であると。
ここ最近は忙しかった事もあり、あまり構ってはあげられなかったけれど、今日は思う存分二人を甘やかしてあげる事にしよう。
──そんな穏やかな事があった日の翌日。
私達はまだ『大樹の家』の中におり、次の旅ではどの方向へと向かおうかと言う話し合いをしていた。……因みに、今居るのはまだ最初の『大樹の森』である。
そして、私達は『第五の大樹の森』をどこに作ろうかと話し合いながら、これまでの振り返りもしていったのだ。
別の大陸に『大樹の森』を作っていった事は、どこも思い出深い。
最初はそう、涼しい大陸だった。そこで羊飼いの少年が暮らす街の傍に作ったのだ。
炎の滝と透き通るような大きな湖が特徴的なのが『第二の大樹の森』である。
次は、日差しの厳しい大陸にて、色々な出会いと奇跡が絡み合って作られた『白銀の館』、その一室を借りて作る事が出来た『第三の大樹の森』。
更に、吹雪きの大陸にある魔法学園において、『学園地下の隠し部屋』や『大樹の秘湯』として、遊び心のままに作りあげた『第四の大樹の森』。
そして、その次がもう『第五の大樹の森』と言う訳なのだが、こうして改めて考えてみると、大凡は似ている様に見えるが、実はそのどれもが千差万別であり、違った面白さを感じる事が出来た。
精霊達も出来上がった『大樹の森』には大層大喜びらしく、どこも人気で皆普段から楽しんでいると言う話である。
なので、当然そんな話を聞けば、私達としても作って良かったと思えたのであった。
この次の、『第五の大樹の森』も精一杯頑張っていこうと思う。
ただ、ここ最近は何かと行きたい方向を私が決めてしまう事が多かったと私は途中で気づいたので、次はまた『エアが行きたい場所に向かうのはどうだろうか』と提案してみた。
すると、エアもこの考えには直ぐに同意してくれる。
「じゃあ、ロム、だったら私『例の場所』に行ってみたいっ!」
──だがそうしてエアが告げてきたその場所は、想像していたものとはだいぶ異なり、私は驚く事になるのであった。
またのお越しをお待ちしております。
祝270話到達!
『10話毎の定期報告!』
皆さん、いつも『鬼と歩む追憶の道。』略して『おについ。』を、読んでくださってありがとうございます。
最近は暑さのせいでバテる事も多い作者ですが、『書く』と言う事に対する油断や緩みは無く出来ておりますので、更新速度は変わらないと思います。
水分補給や睡眠時間には確りと気を配り、身体にも少し気を遣って、このまま突き進んで頑張っていきたいです。
読んでくださっている皆さんも、この時期はお身体に充分な注意を払ってあげてくださいね。ご自愛ください。
そして、今後も引き続き応援していただけると幸いです^^。
ブクマをしてくださっている七十三人の方々(前回から五人増)!評価をしてくださっている十五人の方々!
皆さんのおかげで、この作品の総合評価は292ptに到達しました!
本当にありがとうございます!
──さてでは、この暑さでモチベを落とさない為にも、目標を確りと見据えて声に出し、頑張っていきましょう!
「目指せ書籍化っ!尚且つ、目指せ先ずは総合500pt(残り208pt)!」
今後も『鬼と歩む追憶の道。』略して『おについ。』を、是非とも宜しくお願いします!
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