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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
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第264話 氷釈。




「フフフッ、どうやら途中でわたしの正体に気が付いたみたいですね。流石です」


「…………」



 魔法で自分の姿を少年ものへと誤認させていた学長は、そう言うと魔法を解いて嬉しそうに胸を張っていた。


 まあ、その手の魔法は私には効かないので、最初から少年の正体は学長だと分かっては居た。

 だが、その目的までは見えてこなかった為、何の思惑をもってやって来ているのかをちゃんと見極めるまでは、少し泳がせておこうと思っていたのである。



 ただ結局は、普通に楽しそうにしていただけであったし、果物を食べている間などはエアと同様にとても幸せそうに見えた。

 ……なので、もうこれ以上は過剰な疑いをかけるのは止め、普通に話かけてみる事にする。



 『私を倒すみたいな』発言をしていたので一応は警戒をしていたのだが、それらもどうやら平気であろう。

 あれらは全部フリであったと判断し、私はとりあえずの一安心を得るのであった。



「でも、普段からやってるこれはただの査定のようなものなのですが、本音を言えばもう一度魔法戦をしたいという気持ちは、まだあるにはあるのですよ?」



 ……おっと?

 どうやら彼女が言うに、こうした抜き打ちのチェックを入れるのはいつのもの事らしく、結構な頻度かつ定期的に学長は色々な講義を見て回ってきたのだという。



 そして、他の講師達は私が今使っている様な講師用部屋では講義は行わず、大きな部屋に移動してやるのが普通だったりするので、そっちであれば学長ももっと上手くこっそりと紛れ込めたのだと残念そうにしていた。


 私がここの講師用部屋でばかり講義をするので、仕方なくこの様な方法を取る事にしたのだが、今回は苦肉の策だったそうだ。



 ……最近の私はこの部屋と『大樹の秘湯』を行ったり来たりしてばかりだったので、大きな部屋を借りてまで講義をするという事など全く頭にもなかった。

 こればかりは配慮が足りていなかったような気がする。

 だが、こちらものっぴきならない実験があって、し、仕方が無かったのだ……。

 これからはもう少し気を付けるので許して欲しい。




 私は、学長に『お手を煩わせてしまって申し訳ない』と反省し、素直に頭を下げる事にした。

 すると、彼女は『気にしていません』と言って『実際に体験したあなたの講義は想像以上に話が面白かったので問題はありませんでした。あなたにならば今後も十分に講師をお任せできそうです。どうか今後もよろしく頼みますね』と私に微笑んでくれたのである。



 それはなんとも嬉しいお話だったので、私も『もちろん今後とも講師として頑張らせて貰いま……』と思いかけた所で、私はハッと気づいた。……これは少しおかしいのである。

 いつの間にか、私は彼女の口車に乗りかけてはいないか?……危ない危ない。



 もしここで、『ありがとう。私も頑張って講師を続けます』なんて言ってしまえば、私はここで講師として働き続ける所であった。


 まあ、学長がそれを狙って話をしている様な雰囲気は今は皆無なのだが、私に向けてくるあの微笑みも段々と怪しく感じられてしまう。

 意識すると私を罠に嵌めようとしている熟練の狩人のニヤリ顔にも見えてしまって、『あの細くなった瞳の奥は、よく見たら笑っていないかも知れない』等と考えてしまうと、途端に少しだけ怖くなった。



 だが、これだけお世話になっているのに、素っ気無くも『やっぱり嫌です。さようなら』と告げ、突然消えてしまうのは流石の私でも礼儀に反すると思った。

 なので、真摯に学長へと断りの返事をした後、出来る限り丁寧に言葉を紡いで、もう少ししたらここを去るであろう事と、私もエアもこの学園の皆には凄く感謝している事を告げる。


 これだけの魔法使いが一堂に会すると言うのは本当に希少な場所だし、居心地も凄く良い。

 何よりも、素直に楽しいのだ。



「だから、ありがとう。ただ、期待には応えられず、本当に申し訳ない」


「いいえ、もう何度も聞きましたから……納得もできました。旅に出たいのだという事も分かっています。……私達も、少しだけ長く引き止めすぎてしまってごめんなさい。素直に寂しいとは感じますが、お二人の旅先が良きものになる事をこの場にてわたしも想う事に致します」



 相性の悪さからか、ずっとギスギスしていた最初の時の空気感からはもう信じられない事だが、私と学長はもう普通に話せるようになっていた。その事に私も素直な喜びを感じている。


 それはまるで、新たな友が出来た様なそんな心持ちであった。

 ……無論、本人を目の前に『私は君を友だと思っている』等とは恥ずかしくてとても言えないが、心はまさにそれであった。



「またいずれどこかで会おうか、『燃焼の魔法使い』よ」


「あっ、ちょっと。その呼び方はさっきの役作りで必要だっただけで、もう終わりなんです。それで呼ぶのは止めてください。『白銀の変なエルフ』!」



 学長は恥ずかしそうにしながらもそう言い返してきて、微笑み。

 私もまた内心で同じように微笑み返すのであった。




またのお越しをお待ちしております。

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