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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
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第241話 一味。




 元講師であった彼女を加えた私達は、吹雪の大陸へと交易船を出している大きな街へと先ずは目指す事になった。


 本来は渡ろうと思えばどこからでも海を渡る事が出来るのとは言え、今回は元講師である彼女も居る。

 そんな彼女はこっちの大陸へと来る際も交易船に乗ってやって来たらしいので、帰りもまた同じ伝手を頼って行くので一緒に私達も交易船に乗って帰ろうという誘いを受けたのだ。


 なので、折角だからとその誘いに乗った私達は、彼女と一緒に一路港街へ向かっている最中である。



 その間、エアと元講師である彼女はだいぶ打解け始めていた。

 今も、二人で横並びになりながらコソコソと何かを話し合っている。



 『──えっ、まだそんな事もできないの?もっと練習したら?』


 『してるっ!いっぱいしているよっ。ロムだって良く出来てるって言ってくれるもんっ!』


 『甘えすぎっ。あなた本当に甘やかされてるって分かってない。自覚が足りてないよ。聞いただけで特別扱いが過ぎる。何よこの練習法の数々。普通はこんなに凄い楽しい練習なんかできないんだから。完全にあの人が居ないと出来ないものばかりじゃない。羨ましい」


 『ふーーふっふっ、ロムは凄いでしょーっ!』


 『これであなたが誇らしそうにするのが正直言って一番ムカつくかも』


 『あっ、隙あり。その的は頂くねっ!』


 『あっ……くっ、まだまだ。あなたの方に一日の長がある事は認めるけど、私の方が上だと直ぐに教えてあげるからっ!』



 最初は一触即発とも言える程に仲が悪かったはずだったのに、気が付いたらもう二人で何かと話するようになっているのだから不思議なものである。

 多少何か少し言い合いをしている様にも見えるが、二人の楽しそうな姿からどちらも棘を感じていない事が分かった。……きっと良きライバルみたいな関係性なのかもしれない。



 今は、街を目指して歩きながら、二人とも私が出した的に対して魔法で破壊する訓練を早い者勝ち形式で競い合っていた。魔力制御は元講師の彼女の方が高いようだが、この訓練にだいぶ慣れたエアとはまだ少し力量差がある様に見える。



 ただ、そもそもの技量的にはエアよりも上に来ている彼女は、エアのやり方を見ながら段々とコツを掴んでいる様で、急激にエアと並ぶと、既にエアを追い越そうとしていた。

 だが、一方のエアもそんな彼女の魔法を探知して注視しながら同じ訓練を行っている様で、彼女の魔法を参考に、少しずつ自分の魔法へと取り入れられる技術があればそれを吸収しようとしていた。



 互いに自分よりも相手の方が上だと感じる部分を観察し、互いに高めていっているらしい。

 そんな風に切磋琢磨し合っている姿は、私も見ていて凄く楽しいと感じた。



 ただ、見ていると二人ともまだまだ余裕を感じる。

 なので、ただ的を破壊するだけではなく、二人の不意を突いて『【風魔法】の突風で二人を吹き飛ばす』という要素も付け加えてみた。攻撃だけではなく防御も疎かにしない様にとの考えである。



 すると、吹き飛ばされた二人は私の事を見てくるので、私が『防御もしようか』という意を込めて一度だけ頷きを見せると、二人は面白そうな顔をしてから頷きを返してきた。



 それからは、常に私への警戒も緩めることなく、距離や硬度を複雑に変えた的を途切れることなく延々と二人は撃ち落とし続け、集中する為か無駄な会話も無くなり、視線だけでお互いがやり取りする様な状況へと変わっていった。



 そんな練習をほぼ毎日続け、夜営の頃には二人とも疲れ切っており、食事をとるとぐっすりと眠りに入ってしまう。私はそんな二人に浄化をかけておくと、ぐにゃりとした二人を寒くない様にと毎回テントの中へと一緒に放り込んでおいた。



 私はその後、夜闇の中で焚火を囲みながらバウと一緒に穏やかな時間を楽しむ。

 穏やかに時間を感じながら、バウが興味がある色々な話をしてあげている。……さてさて、今日はどんな話が聞きたいのかな?「……ばうっ!」そうかそうか。それでは今日もまた鉱石について語るとしよう。




「まだちょっと、制御が大雑把過ぎるんじゃない?」


「んー、でも広範囲を捉える時には、これの方が漏れが少なくていいよっ?」


「確かにそうだけど、精度が緩い状態に慣れてしまうと、後々厄介だと思う」


「んー、そこら辺は、魔法の指定先を上手く切り替えれば対応できるんじゃない?」


「そんなこと言って、敵が複数だったらどうするっ?個別指定で複数を捉えようとしたら、あなただと最大五カ所が限界でしょ?私だって四カ所。それだったら最初から、範囲指定にして複数を巻き込んだ状態で、魔力で制御して任意の場所に威力を集中した方が確実じゃない?」


「でもそれって、集中力が段違いにかかるよっ。完全に足を止める事になっちゃう」


「うーーん、確かにね。突風が避けられない所か、上手く防御魔法を張る余裕が──」



 二人の訓練は日を追うごとに段々と進んでいき、今では状況的な判断が求められるギリギリなものになっていた。クリアは出来るだろうけど、パズル要素が入っている感じである。手順を間違うと失敗する感じだ。


 ただ、そんな風に訓練の難易度を高めていったら、エアと元講師の彼女は二人で相談し遂には協力し始めるようになった。すっかりと仲良しさんである。良い事だ。


 互いに出来る事、出来ない事を把握し、どうすれば次の訓練をクリアできるかと真剣に歩きながら話し合っている。とても真剣で楽しそうでもある。



 彼女曰く『こんな凄い練習は中々できる事じゃない』らしいので、一生懸命やっている訳なのだが、あれだけ魔法は遊具であるという事に拘っていたかと思えば、今はこうして普通に訓練に励んでいる姿を見ると、彼女も世間の魔法使い達と何も変わらないと私は微笑ましく思った。



 彼女は嘆いていた。自分以外に真剣に魔法を使う事を楽しんで使っている人達がいないと。

 だが、それはきっと杞憂なのである。

 誰だって今のエア達の様に、真剣な中で楽しんだり遊んだりする事はちゃんとあるのだ。



 彼女はそれを極端に考えすぎていただけだと私は感じた。

 皆、魔法が好きじゃないわけではない。

 少なくとも魔法使い達はみんな魔法が大好きなのである。

 それに気づいてあげて欲しい。

 みんなそんな風に見えないかもしれないけれど、皆君と同じ様に感じる心を持っているのだと。



 何でもそうだが、見方を変えれば意外と世界は近い場所にあるのだと知るのだ。

 『気付くか気付かないか』、いつだって言葉にすればたったそれだけの差なのである。



 どうだ、全力を出すのは楽しいだろう?

 精一杯楽しんで遊んで、そして真摯に魔法に向き合って欲しい。

 私から言えるのはそれくらいだ。





「──えっ、もう着いたんですかっ!?」


「早いねっ!こんなに近かったんだっ!」



 そうして、私達が港町へと到着すると、彼女とエアはそう言って驚くのであった。


 それだけ君達が、楽しい日々を過ごせたという事なのだろう。


 私はそんな二人の姿に、内心で笑みを浮かべるのだった。





またのお越しをお待ちしております。

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