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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
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第108話 井蛙。






 ちょっと不思議な出来事を経てからの改めての挨拶となったが、私達へと目の前の少年魔法使いが話しかけて来た理由は明確であった。



「実はさっきから見てたんだ。そしたらそっちのお姉さんが面白そうなことしてるなって。それで良かったら、さっきのを俺にも試させてもらえないかなって思って声かけた。……俺、自分より上の魔法使いって出会ったことなくってさ。ちょっと噂に聞くエルフの力ってのも見てみたいし」



 少年のその顔には自信しかなかった。確かにその『天稟』をもってすれば、大凡の人間では並び立つ事適わないだろう。

 先ほどやらかしてしまった侘びも兼ねて、私はエアを背負ったまま『構わない』とだけ告げた。

 私の背中でエアも少し楽しそうにしているのを感じる。他の魔法使いの実力が気になるらしい。



 この少年もエアも、恐らくはまだ自分の力がどれほどのものかを正確に理解できていないのだろう。



「よっし。やった。なにかルールがあったりする?」


「特にはない。私が目標物である水球を周囲に浮かべるので、それを魔法で撃ち落とすだけだ。あえて言うなら使用魔法は周囲に影響のないものであることが望ましい」


「了解。そんだけだね」


「私は君の感知範囲がまだ分からないから最初は近場に、それから段々と距離を伸ばしていく。準備は」


「いつでも?」



 少年は生意気かわいい笑みで手に持った木製の杖をクルクルと回す。そんな彼の楽しそうな姿に隣の少女は自分を忘れて魔法に夢中になっている事に『しょうがないんだから』と首を竦めつつも少しだけ距離をとった。



 私は小手調べとして、先ずは大凡彼の感知範囲内の半分位の距離だろうと思われる場所、それもまだ視認できる空中へと水球を浮かべた。大体破壊難度も彼にとってはかなり楽な部類である。



「おっ、楽勝」



 という言葉通り、案の定私が魔法を発動すると、彼がそれを破壊するまではほぼ時間がかからず、それもほぼ過不足無く破壊出来ている事を確認した。



 魔力の察知能力に関して言えば、この時点で現状のエアよりも上である。

 そして、私は方角と出現場所を所々変えながら、距離だけをどんどん離して出現させた。



「おっと、おおー段々遠くなる。スゲー、自分だけだとこういう練習って出来ないんだよなー」



 少年はまだまだ喋る余裕があるらしく、顔はとてもにこやかである。

 この時点でも感知範囲はかなりの距離だ。恐らくは五百メートル以内ならば、かなり精密に魔法の制御が可能だろうと言う事も分かった。

 因みに、彼が使っているのもエアと一緒で【風魔法】である。

 見ていたと言っていたので、そこは合わせてくれたのだろう。



 ……ふむ。それでは限界距離はこれくらいか?と私は内心で大凡の予測をして、約一キロメートル弱の地点、大凡彼が感知できる最大であろうその場所に同じ魔法を使った。



「うっ、マジ?」



 いきなり倍の距離になっては少年も驚くだろうけど、流石にその距離を段階を踏んでやっていくのは時間がかかり過ぎると判断したため、勘弁して貰おう。

 私は、その範囲の前後で彼の最大値を探っていく。

 少年は、少しだけ驚いた顔をして私を見ると、今は集中して感知範囲へと意識を割いていった。



「次からは硬度が変わる」



 私は、かなり正確な最大範囲を察知できたので、次に彼の魔法がどれだけ硬度に対して正確に適応できるかを調べた。

 まあ、硬度が変わると言っただけで強くもなるし弱くもなる。

 それに適した魔法を使えるかを見る為であった。



「う、壊れない」



 それも最小と最大を調べ、彼は範囲内なら威力の制御にも優れていることが分かる。

 だが、その逆に威力的な面で言うとエアよりも落ちるらしい。

 ……ふむ。試しにやってみたわけだが、これは何気に私も楽しくなってきた。



「次は複数の標的を用意する。硬度と範囲は最初の時と同じだ」



 そう言って、私は彼がどれだけ複数の魔法を多方向に同時に使えるのかを次に調べた。

 感知で一つの枠を既に使っている上に、攻撃魔法で更に多方面へと魔法を使うのはかなり難易度が跳ね上がる。



「ぐっ……」



 どうやら、それによると彼は感知の他に三カ所同時が限界らしいことが分かった。

 上々の出来だと思うが、本人は何処か悔しげにも見える。

 こと魔法に関してこれまでは絶対の自信があり、そんな彼をずっと傍で見てきた剣士の少女の方もそんな少年の姿に驚いているようであった。



 ただ、少年もエアと同じで完全に感覚のみで魔法を使う事が出来る純粋な魔法使いである。

 それも、まだ訓練自体をそこまで受けた事がない様にも見えた。

 それでこれならば、この少年の力量はまだまだ伸びるだろう。

 それに、このまま成長してくれれば、いずれは彼も『差異』へと至れる人物になれるだろうと私は思った。



「よし。では、これから、全ての要素を全て乱雑に行う。出来るだけ対応して見なさい」



「へっ?……まじ、これからが本番……やばいなー、エルフってこんなに凄いのか……ふぅー、よしっ!いつでもっ!!」



 『違うぜ少年。旦那がおかしいだけだ』『他のエルフの人は普通だよ!』『例外』『少年の認識はこうして歪んでしまうのですね』



 ……君達、ちゃんと聞こえているからな。それとその評価は心外である。私など大したものではない。普通である普通。



 少年は私の言葉に少々の唖然と歓喜が複雑に混ざった表情をすると、深呼吸を一つしてから心を整え声を張り上げた。



 ──そうして、少年がガス欠になって魔力を使い果たすまで、私は延々とその訓練を続け、少年が完全に気絶した所で止める。……精霊達が何やらその後も反論していた気がするものの、私には良く聞こえなかった事にした。



 私は少年を魔法で浮かしながら、気絶した彼を見て驚いている剣士少女の元へと彼を運んでいった。




またのお越しをお待ちしております。

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