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第35話 作戦会議

「君は初期メンバーのはずだから、一万年前に生きてるはずなんだけど、年齢が一万年だったりする?」

「そんなわけないじゃないですか。初期メンバー?」

 どうしようか。神楽先生の言っている事が少しも理解できない。この人何を言っているんだろう。しかし、神楽先生ならば僕の秘密を知っていてもいいかもしれない。

「僕は今は「邪神」ヨシヒロ=カグラって言われちゃっててね。昔はヨース・フィーロ=カヴィラとか呼ばれてた大英雄だったはずなんだけど。最近調子悪いんだ」

 え? あの「邪神」ヨシヒロ神ですか?

「それで、井上君がなんでこんな時代に生きてるのかを説明してよ」

 ふっと振り向くと、デザイアが近づきたくないというオーラを全開にしてこちらを見ていた。すでにヨシヒロ神と面識はあるようだ。そして苦手なんだろう。たしかに大学にいたころの神楽先生と外見は一緒だけど、なんか変な感じがする。どう考えてもデザイアが好きなタイプじゃない。

「デザイア、話してもいいのかな?」

「俺に聞くな、関わるな」

「つれないなぁ、ロージーのくせに」

「馴れ馴れしく呼ぶんじゃねえよ」

 デザイアはこれ以上付き合いたくないと逃げて行った。神楽先生はデザイアに興味がないらしい。

「じゃあ、簡単に言うと、僕は召喚獣なんです。契約主はロージー=レイクサイドしかいないんですけど」

「召喚獣? こっちにきてからずっと?」

「ええ、最初からですよ」

「なるほど、そういう事か……」

 神楽先生が黙ってしまった。どうしたのだろう。召喚獣だって言ったらもっと驚くかと思っていたのに。

「でも、先生もこっちに来ていたんですね。もしかして、あの研究とか関係あったりします?」

「え? ああ、そうだね。大ありだよ。でも、今はそれどころじゃなくなったみたいだ」

 それっきり、神楽先生は何かを考えこんでしまった。ブツブツとプログラムがとかウィルスかとか言ってる。どうしちゃったんだろう。

「ヒューマ君、作戦会議してもいいか?」

 そしてそんな状態のままで僕はフォレストさんに呼ばれてしまった。もう少し詳しい話が聞きたかったし、神楽先生が神と言われている人物ならばこの世界の事をよく知っていると思ったんだけど。ハルキ=レイクサイドもそうだったけど、皆、元の世界に戻りたくはないのかなぁ。


「今現在の戦力で天龍と雷狼に勝てるのはデザイアのパーティーと同程度じゃないと駄目だというのが分かった。つまりはヴェルテ達以下だった場合は負ける可能性が非常に高いからサポートに回ってくれ」

 これを聞いてほとんどの冒険者たちが戦慄するのが分かる。ヴェルテさんたちのパーティーは押しも押されもしないSSランクの冒険者だからだ。これに勝てるのはSSSランクのフォレストさんとかしかいない。

「ああ、もうめんどくせえ。偽名とかもういいんじゃねえか?」

「いや、ちょっと待ってよデザイア。ばらしたら君の父上というか、母上になんて言われるか」

 デザイアの暴走にフォレストさんが慌てる。だけど、デザイア、いやロージーも我慢の限界だったみたい。

「俺はレイクサイド領主ロージー=レイクサイドだ。こいつは次期フラット領主タイタニス=フラット!」

 そしてタイタニスを巻き込む。巻き込まれたほうは、どうとでもなれという顔をしている。

「「「えええぇぇぇぇ~!!!?」」」

 参加していた冒険者たちはものすごいビックリしている。まあ、そうだよね。

「そして、こいつは……むぐぅ!」

「俺の事は言わなくていいっ!」

 フォレストさんが慌てて、ロージーの口を押えたけど、他にも裏切者がいた。

「この人は「邪王」シウバ=リヒテンブルグです」

「タイタニスゥゥゥゥゥゥ!!!!!!」

 シウバの絶叫がテントに響くけど、若干失神しそうになるまでにびっくりしている冒険者までいて、大混乱中である。


「ええい、気を取り直して作戦会議ですよ、ロージー様」

「うむ、頑張れシウバ」

「私は一応、元魔王で、あなたは領主なんですから、立場はこっちが上ですからね!」

 ロージーにやらかされたシウバが青筋立てながら毒づく。

「まあ、どうでもいいけど早く作戦たててしまおうよ」

 そこに現れた神楽先生。

「ちなみにこいつは「邪神」ヨシヒロ=カグラだ」

 そしてもう一回、他の冒険者連中が失神しそうになるくだりを繰り返す。

「ああ、もう! ロージー様のせいで作戦会議が進まないではないですか!」

「うるせえ、シウバ! だいたい最初っからこそこそと性に合わないんだよ! こんなの大同盟の全兵力で攻めればいいだろうが!」


「それで負けたらどうするんですか?」


 いきなり真面目になるシウバさんと周囲の人たち。確かに、大同盟の全兵力をしかけて負けると後がない。そして無尽蔵に召喚をする事ができるデリートにとってはそちらの作戦の方が戦い易いのだろう。だからこそ、ハルキ=レイクサイドは一人でデリートを殺しにいった。仲間がいなければそれは成功していたに違いなく、不確定要素は仕方ないとはいえこちらはもう後がないのかもしれない。

「ロージー、もうその辺りで止めておきなよ」

「なんだよ、ヒューマまで」

 あれ? これってもしかしてロージーなりに焦ってるって事なのかな? でも、ちょっと説教だ。


「何を焦ってるんだ? 一旦、冷静になりなよ。たしかにデリートたちが召喚獣を幻獣化してて、それはSSランクの冒険者ですら歯が立たないくらいに強いのかもしれないよ? でも、君はレイクサイド領主となったんだ。まだ実際に領地経営してないかもしれないけど、そんな事は世間的には関係ない。君はロージー=レイクサイド領主なんだ。自覚をしなよ。それなのに、周りの人間に当たるんじゃない」

「うぐぅ」

「だいたい、なんなんだよ。君は僕の(あるじ)なんだよ。それがこんな体たらくでどうするんだい? 素材は持ち帰れなかったけどさ、つまりは初めて天龍を狩ったのは君なんだよ、ロージー!」

「そうか、俺は天龍を始めて狩ったことになるのか」

 狩ったのは僕だけど、僕は君の召喚獣なんだ。さすがにこの周りで聞いている冒険者たちに僕が召喚獣だとは言えないけど、そういう事なんだよ。しかし、そんなセリフを言いながら、僕はある事を思い出してしまった。

「君はレイクサイド領主、ロージー=レイクサイドなんだ。それに、あれだ。なんというか、僕の要望もあるんだけど、ええと、天龍の、……素材を使って防具を作るって話があったよね……。ついでに雷狼でも作ってもらいたいとかなんとか。どうせ蟲人の召喚した幻獣だし?」

 いかん。説教途中に、あの天龍の素材で装備を作ったらという思いが溢れてきて止まらなくなった。隣を見るとタイタニスが同じ思いなのか、思い出したぁ! って顔をしている。

「よし、お前の想いは分かった。俺は全力を尽くすことにしよう」

 ロージーの目の中に防具って字が浮かんでいるような気もしないでもないが、一旦冷静になってくれたようだった。これは冷静と言っていいのかどうか分からないけれど。

「よし、話がまとまったところでこれからの方針を話すぞ」


 シウバさんの作戦としては、ロージーのパーティーに加えてシウバさんと神楽先生を加えたパーティーを作り、その一パーティーのみで行動しようという事だった。その目的は時間稼ぎであり、その時間稼ぎの最中にできるだけ幻獣化した召喚獣を狩ってしまう事である。ただし、やりすぎてデリートが出てきたらダメだというのだ。難しすぎるよ。

「それをなんとかするんだよ」



 そして次の日。

「ふざけんな、お前ぇぇぇぇぇぇ!!」

「いやいやロージー様、これならば一匹ずつ狩って、素材モ手ニ入ルデショウ。」

「こっち向いて言えぇぇぇぇ!!!!」

 とりあえず、ロージーの絶叫が森の中に響き渡ったんだけど、まあそうだよね。


爆死作家本田紬(以下 紬)「ふへへへ、とりあえず何となく活動報告にエイプリルフール的な? できもしない嘘を活動報告で書いてみたんだよ! まあ、どうせ……読者からの反応なんてないんだろうけどさ……orz」

爆死作家本田紬の嫁(以下 嫁)「ねえ、あんた」

紬「ん?」

嫁「楽しんでるところなんだけど、エイプリルフールって午前中だけしか嘘ついちゃいけないんだってさ」


 活動報告掲載18時57分


紬「……いや、でも午前中どころか夕方まで仕事だったよ? 給料は午前中までしか出ないけどさ。帰りの駐車場で打ち込んだんだもん。スマホで。」

嫁「さあ、あんたの都合なんて関係ないんじゃない?」

紬「え? マジで?  ……カタカタ 検索……「エイプリルフール」「午前中」……げっ……」

嫁「でしょ? それで、なんて嘘ついたの?」

紬「…………どうしよう」



っていう会話が夕食時にあったんだけど、どうしたらいいのだろうか。

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