第15話 絶望の一言
さすがにこの短時間に3話更新すれば文句もでないだろう!
え? そういう事じゃないって?
ロージーはミセラに連れ去られ、レイクサイド領へと輸送された。ついでにハルキ=レイクサイドもミセラが「一緒に来て」って言っただけでついて行った。こうしてカヴィラ領には平和が戻った。
「それで? なんでこのタイミングで僕が再召喚されるんだよ。ちょっとゴッド程度にやられてしまって機嫌が悪いんだけどさ?」
ロージーが魔力量が最高で尚且つもっともっと想像力があればあんなやつには負けなかったのに。
「うるせえ、仕方ねえだろうが」
「あなたがヒューマね。意外とまともな顔してるじゃない」
「…………」
目の前にはぐるぐる巻きに椅子に縛り付けられているロージー。そしてその周囲には親衛隊とそれを引き連れているミセラ=レイクサイド。
「えっと、今度はここからロージーを連れ出せとでも言うの?」
「そうだ! はやくやれぇ!」
小者臭がぷんぷんするロージーは放っておいて、状況を把握しようか。ゴッドにやられたショックで、またしても現状把握をせずに召喚に応じてしまったんだよ。
「嫌だよ、それに君の父上がいるなら無理じゃないか」
「今はいねえよ!」
「君の妹さんがお願いしたら地獄の果てまで追って来そうだけど?」
「うっ……」
どうやらそういう父親らしい。しかしロージーが椅子に縛り付けられている経緯がよく分からない。
「ど、ど、ど……どういう……」
へんな声がしたために後ろを振り返る。あ、これはまずい。
「な、なんでヒューマが……」
「ちょっと、ロージー! なんでマリの前で召喚なんてしたんだよ!?」
「あ、悪い。忘れてた」
こいつ……。
***
「というわけで究極の召喚獣「ヒューマン」のヒューマです」
かるく人払いをして、親衛隊の重要人物以外は部屋から出て行ってもらった。残ったのはミセラ嬢とマリ、それに「流星」マジェスター=ノートリオさんである。
「なるほどね、昔あったっていう事件の犯人がお兄様だったのね!」
「もしかして、それってロージー様が抜け出して宝物庫に隠れてた時ですか!? 私追っかけてたの覚えてますよ! ねえ、マジェスターさん!」
「う、うむ。そんな事もあったような気がするな。というか頻繁にありすぎてどれの事だか分からん」
椅子に縛られたロージーはそのままで話が進んでいく。
「それで、ロージー様に召喚されたのに放っておかれて5年以上も孤児院で過ごしてたの!?」
「うん、そうなんだよ、マリ。だって僕には召喚主が誰だか分からなくてさ。召喚されたら郊外にポツンと一人で、しかも当時のロージーの想像力が貧弱過ぎて僕は10歳の子供だったんだ。ヒューマって名前も本当はヒューマンって言おうとしただけなんだけどさ、上手く発音できなくて」
「なんてかわいそうに……」
「むー! むー!」
ロージーは縄を外せとうるさいのでミセラが口にタオルを巻いてしまった。5年間維持魔力を搾取し続けた事は絶対にばらさないよ。あれ? こいつ今は領主だよね?
「でも、父上には敵いませんでしたが、さすがはお兄様ですわ! 何せ第二、第七騎士団を一人で壊滅させてしまうなんて」
「あ、あれはシウバが変な薬を飲ませたからだよ」
「シウバ様がおられたのか!?」
マジェスター=ノートリオさんが食いついて来た。そう言えば、この人はもともとシウバの部下だったんだっけ?
「えぇ、いまはハルキ様と一緒にラーメンを作るとかなんとかで調理場にこもっておられますわよ」
あの野郎! しれっと戻ってきてまたしてもラーメン作りに参加しているだと!?
「なんと!? こうしてはいられない! シウバ様にお会いしてこねば! マリー=オーケストラ! ここは頼んだ! 人でが足りなければ残念エルフを呼んで来い!」
「あ、それは遠慮しておきます。一人で頑張ります」
マジェスターさんは颯爽といなくなってしまった。
「さて、マリー、お兄様の戴冠式の準備もしなければならないわ!」
「そうですね! まずは着るものからって係の者が言ってましたんで、呼んできましょうか?」
「お願いするわ!」
「むー! むー!」
ええと、僕は還ってもいいんじゃないかな?
結局、自発的に還ろうとしても無駄に魔力が送られてきて、さらになんとか還ったら再召喚されてしまい僕はロージーの服を選ぶのに最初から最後まで付き合わされてしまった。部屋の中にはミセラ嬢とマリ、そしてメイドさんたちが沢山いてキャイキャイ楽しそうにロージーの服を選んでいる。服屋もめっちゃ笑顔だ。高そうな服だもんな。
「むー! むー!」
しかし、バンっと扉が開けられる!
「ヒューマ君! ちょっと味見してくれってハルキ様が呼んでるよ!」
入ってきたのはシウバとマジェスターさんだ。シウバめ、この野郎。しかし、今では彼が救いに見える。
「あ、じゃあちょっと行ってきます!」
「仕方ないわね、行ってらっしゃい!」
マリに送られてシウバたちの後をついて行く。なんでもチャーシューができたらしい。楽しみだ。
「むー! むー! むー! むー!」
ロージーの声にならない抗議がさらに強くなった気がしたが、まあ仕方ないよね。味見しようとしたタイミングで魔力の供給がなくなった時には殺意を覚えたけど、そこは何とかして魔力を奪いつつ現世に存在し続けてやった。
「裏切者」
「チャーシュー美味かった」
ぐったりとしたロージーは次期領主の部屋で死んだようになっている。すでに僕との間で魔力の攻防戦が
あったために魔力が枯渇寸前だったりする。
「やっぱり、味を追求するときには醤油か塩がいいと思うんだ。とんこつやみそでは味をごまかそうとすることもできちゃうからね」
「うるせえ」
「お兄様」
そこにミセラ嬢が入ってくる。
「なんだ、ミセラか。何の用だ?」
さっきまで一緒にいたはずだから、すでに用事はなくなっていたはずだった。しかし、ミセラ嬢はロージーにとって最悪の発言をすることになる。
「お母さまが呼んでるわよ」
僕はその時のロージーの顔を一生忘れないだろう。面白すぎて。




