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理系女子の恋  作者: 流音
149/246

142、愛おしい

井坂視点です。


詩織から誘われて理性をブッ飛ばした俺は、したいままに詩織に触れて、とうとう詩織の全部をもらうことができた。


そう…できたはずなんだけど・・・

やり終わったあと、詩織は布団にくるまるとダンゴムシのようになってしまって、俺は床に正座していた。


俺は唯一パンツだけは履いているが、さすがに裸だと寒くなってきて、布団にくるまってる詩織に中に入れてもらおうと声をかけた。


「詩織~、俺もそこに入れてくんないかな?寒くなってきてさぁ…。」

「……そこに服、落ちてるよ。それ着れば?」


え~~………


詩織から冷たい返答が返ってきて、俺は詩織の機嫌を損ねるような抱き方をしただろうかと考えた。


最中は自分も必死だったから、よく覚えてない部分も多いけど。

でもできるだけ優しくしたつもりだし、詩織も俺の事を熱い目で見てたはずだ。

あそこで幻滅されたとは……できるなら思いたくない…。


俺は詩織になんとか機嫌を直してもらおうと思うと、布団ごと詩織をもふっと抱きしめた。


「詩織。……もし、したこと後悔してるなら…その…ごめんな?俺はすっげー幸せだったけど…、男と女じゃ違うっていうもんな…。」


俺の謝罪を聞くなり布団がモゾモゾと動いて、見えなかった詩織の頭が隙間からひょこっと出てきた。

そして真っ赤な詩織の顔が俺の方を向いて、俺はその表情にビックリして目を瞬かせた。


「…後悔なんかしてない…。私だってすごく幸せだった…。だけど…なんていうか…その…冷静になったら…急に恥ずかしくて…。」

「恥ずかしい…?」


詩織はコクンと可愛く頷くと、布団にギュッとくるまったままで続ける。


「わ…私…裸…全部見られたし…。その…変な声だって…出して…。思い出すだけで…自分が自分じゃないみたいで…恥ずかしい。」


詩織はそのときの事を思い出したのか、ゆで蛸のように真っ赤になると俯いて更に小さくなってしまった。

俺も言われてそのときの詩織の姿を思い返して、今も鮮明に残る詩織の喘ぎ声や乱れた姿に鼻血が出そうで手で顔を押さえた。


ヤ…ヤバ…、のぼせる…


俺としては最高だったんだけど…今それを言ったら、詩織はまた隠れてしまうだろう…

俺はどうすればいいかな…と考えていると、詩織が少しだけ顔をあげて呟くように言った。


「……恥ずかしいのに…また触って欲しいなんて…。私…絶対おかしくなってる…。」


かわっっっっ!!!!!


俺は触って欲しいという一言に再度スイッチが入って、落ち込む詩織に構わずベッドの上に布団ごと押し倒した。

押し倒した勢いで詩織の綺麗な足が布団から出てきて、詩織は上だけでも隠そうとしてるのか布団を胸の前で抑え込んで、目を瞬かせ始める。

俺はビックリしてる詩織に優しく口付けると、詩織の気持ちを宥めようと詩織が感じてくれる首筋に唇を這わせた。

詩織は声が出そうになるのを我慢しているのか、息を吐いては止めるを繰り返している。


「詩織、俺は詩織の恥ずかしい姿、全部見れて嬉しかった。」

「え…?」


俺は感じているのか頬を赤く染め始めた詩織を見て、包み隠さず伝えようと優しく言った。

詩織はうっとりした目で俺を見上げてくる。


「詩織の恥ずかしい姿、俺しか知らないんだろ?だったら、俺だけの詩織が手に入ってすっげー嬉しい。」

「井坂君だけの…?」

「そう、俺だけの。」


詩織は俺の言葉に少し考え込むと、ふっと笑顔になって「それならいいかな。」と言って、俺の頬に手を伸ばしてきた。

そして俺の頬に手を触れると、詩織は目を細めて笑顔のまま言った。


「じゃあ、裸になってる恥ずかしい井坂君も私だけの井坂君?」

「ははっ!そうだな。詩織だけが知ってる俺の姿だよ。俺、詩織以外にこんなことしたことねーしな。」

「してたらヤダ…。」


俺が冗談で言ったことに詩織が子供のように拗ねて、俺は頬に触れていた詩織の手を掴むと自分の胸に押し当てた。

心臓がドクドクと速い鼓動を奏でているのが、詩織の手を伝って詩織に伝わる。


「俺の心臓、詩織の前でだけすげー速くなる。詩織に触られただけでそこが電流走ったみたいに痺れるし、詩織からキスされたら天にも昇るぐらい幸せな気持ちになる。それに、俺の体…詩織にだけ反応するしな。」


俺が真面目に伝えると、詩織が耳まで真っ赤になって焦り出して、俺はそんな反応が可愛くて笑い声が漏れた。


やっぱ、詩織が一番だよ

詩織以上なんて一生かけても見つかる訳ねぇ…

俺には詩織がいるだけでいい


俺は詩織に優しくキスすると、照れて目を潤ませている詩織を見つめた。


「詩織、もう一回してもいい?」


詩織は何度か目をパチクリさせると、かぁ~~っと顔を真っ赤にさせて手で顔を隠しながら「いいよ。」と小さく呟いた。

俺はそんな詩織がとても愛おしくて、優しく詩織に触れながら、何があっても詩織を守り続けると心に誓った。






***






二回目の後は、詩織は俺を布団の中に残してくれて心底安心した。

二度も追い出されたらさすがにヘコんで、しばらく立ち直れなかっただろう。

俺は詩織をギュッと抱きしめて、詩織の柔らかい肌や温かさに癒されて頬が緩みまくる。


今日は詩織の誕生日のはずなのに、俺の誕生日みたいだな…

幸せ過ぎて、今後その反動がきそうで怖い…


俺は今の幸せを死んでも離すか!という気持ちで、詩織の頭に顔を近づけた。

すると詩織がモゾモゾと動いて無意識だろうけど、俺の胸に手を触れてきてゾワワッと鳥肌が立った。

詩織の触れた所が熱を持ち始めて、胸の奥が疼き始める。


いやいや!!これ以上はダメだからな!?

っつーかまだ反応するとか、俺は性欲の塊か!!

マジで勘弁してくれ…


俺はこれ以上このままだとヤバい事になると察知して、詩織から離れようとするけど体が思考に反してちっとも動いてくれない。

それどころか家に帰す気もないほど、がっちりと詩織の肩を掴んで放さない。


くそ…!!俺のアホ!!

自分の欲に忠実すぎるだろ!!

確かに家に帰したくないけど、詩織のご両親に信用されてるんだ。

男としてこれ以上は絶対にダメだ!!


俺はなんとか理性が押し勝つとやっと詩織から手を放すことに成功した。

そして、詩織から離れてベッドから起き上がると、詩織が俺の手を掴んで俺を見上げながら言った。


「……今日は家に帰りたくないなぁ…。」

「え…!?」


俺は自分の願望が詩織の口から出たことに、すごく驚いた。

詩織は真剣な顔でしばらく考え込むと、じっと俺を見てから言った。


「井坂君、今ケータイ持ってる?」

「え…、あ、確かズボンのポケットに…。」


俺はベッドから降りると散らばった服の中からズボンを探し当てて、ケータイを取り出すと詩織に手渡した。

詩織はそれを受け取るなりどこかへ電話をかけ始めて、俺はじっとそれを見守る。


え…これってもしかして…


俺はまさかという可能性が浮かんで、ドキドキと期待で胸が大きく高鳴る。


「あ、もしもしお母さん?私、詩織。」


やっぱり!!!


俺は詩織がお母さんに電話をかけていると分かって、なお一層胸が高鳴る。


「あのね、今井坂君と一緒に友達の家に遊びに来てて。私の誕生日をみんなが祝ってくれて、盛り上がっちゃって…。それで、明日休みだから泊ったら?って話になったんだけど、泊っていってもいいかな?」


……あれ?……詩織、嘘ついてる?


俺は正直者の詩織が嘘をついてると分かって、高鳴った心臓が少しずつクールダウンしていく。


「うん。明日のお昼には帰るから。うん…。ありがとう、お母さん。」


詩織は笑顔のまま電話を切ると、俺を見てはにかむように笑った。


「えへへっ。嘘ついちゃった。いいよね?私の誕生日なんだし、これぐらい。」


詩織は俺にケータイを返しながら照れて頬を掻いていて、俺は大胆に嘘をついた詩織に感嘆の声をかけた。


「詩織、すげーなぁ…。あんな嘘、ペラペラって本当のことみたいに。俺、ビックリしたよ。」

「うん。私も自分でビックリしてる。井坂君と離れたくないって思ったら、自然に出てきて…。私、嘘がちょっと上達したよ。」


詩織はまた布団にくるまると「あゆちゃんに口裏合わせてもらわなきゃ。」とくるまった状態でベットから下りてくる。

俺はそんな詩織が可愛いやらおかしいやらで笑いが込み上げてくる。


「あ、そーだ。詩織、泊るなら風呂入るよな?俺、今から沸かしてくるよ!」


俺はとりあずズボンをはいて、ロンTを着ながらカタツムリみたいな詩織に言った。

詩織はまるまった状態で服を拾い集めながら俺を見上げると、「うん、入る。」と言った。

それから着替えようとしているのか、部屋から出て行かない俺を気にしているようだったので、俺は気を利かせて風呂を沸かしに部屋を出た。


詩織の着替えるとこ見てたかったな…

ま、あれだけ恥ずかしいって連呼してたから、無理だろうけど…


なんかそういうとこも詩織っぽいな。


俺は詩織が泊ってくれるってだけでウキウキしていたので、着替えを見られないことなんか屁でもなかった。


まだまだ着替えるチャンスはあるんだから、今は風呂だ風呂!!


そうして俺は風呂のスイッチを入れると、はたと詩織が風呂に入るなら一緒に風呂に入るという男の憧れシチュエーションを叶えられるかもしれない!と胸が躍った。


まさかこんなチャンスがこんな形で舞い込んでくるなんて!!

これは詩織に言うしかないだろ!!


俺はテンションが上がって脱衣所を飛び出すと、ダッシュで部屋に舞い戻り扉を開け放った。


すると詩織はまだ着替え中だったようで、白の下着姿の詩織の姿が目に入って、俺は入り口で一気に体温が二、三度上昇した。

詩織は俺を見てわなわなと口を動かすと枕を手にとって、俺に向かって投げてくる。


「まだ着替えてる!!」

「おわっ!!」


俺は反射で枕をキャッチすると、第二派のクッションが飛んできて、それもなんとかキャッチした。

でも詩織からの攻撃は止まなくて、次に飛んできた本が顔面に当たって、俺はその場に尻餅をついた。


「いっつ~~~っ!!」


俺が痛みに顔をしかめて手で当たったところを押さえると、「ごめんっ!!」と詩織が焦って駆け寄ってきた。

詩織は「どこに当たっちゃった?痛い?」と心配そうに聞いてきて、俺が目を開けると詩織がまだ下着姿だったことに息を豪快に吹きだした。


「ぶはっ!!!詩織っ!服!!」

「えっ!?あ、ひゃっ!!!」


詩織は慌ててベッド脇に舞い戻るとワンピースをわたわたしながら身に着けた。

俺はその姿が妙におかしくて笑いが止まらない。


「あはははっ!!なんだこれ!っふ、あははははっ!!」

「う~…、笑わないでよー…。もう…。」


詩織はむすっとふてくされると小さく体育座りしてしまって、照れてる姿がすごく可愛い。

俺は痛みなんかどこかへ吹っ飛んでいて、可愛い詩織を放っておけなかったので後ろから優しく抱きしめた。


「笑ってごめん。なんか慌てる詩織が可愛くてさ。」

「…ううん。いいよ…。……私も…本、投げてごめん。痛くない?」


詩織は顔だけで振り返ってくると、本の当たった所に手を触れてきた。

俺は詩織に触られるだけで痛みなんか感じなくて愛おしさが勝るので、「全然平気。」と返した。

詩織は「良かった。」とほっとしたように微笑んで、俺はその表情から言うなら今だと夢のシチュエーションを言ってみた。


「詩織、お風呂湧いたらさ。俺と一緒に入ろっか。」

「うん…って…。え!?」


詩織は俺の体を押し返しながら目を剥いて驚くと、首をぶんぶんと左右に振って否定した。


「無理!!絶対無理!!そんな、は…恥ずかしい事できない!!」

「え~?詩織~…、これ俺の夢っていうか…憧れのシチュエーションで…。」

「無理だから!!絶対、イヤ!!」

「でも、もうこんな二人っきりのチャンスないかもだし…。」

「それでもダメ!!どうしてもっていうなら、私帰る!!」


詩織はよほどイヤだったのか真剣な顔でキッパリと言い切った。

俺は帰られる方が嫌だったので、しぶしぶ諦める事にした。


ちぇっ。今ならいける気がしたんだけどなぁ~…


俺は「分かったよ。」と返すと、いつか夢のシチュエーションを実現できることを願ったのだった。






***






そうして俺は詩織がお風呂に入ってる間、赤井に詩織の嘘の口裏合わせに協力してもらおうと電話をかけた。

かけるなり赤井はすぐ電話に出て、テンション高く声を上げた。


『井坂!!どうしたんだ!?またダメだったのか!?』

「ばっか。うるせーよ!開口一番に聞きたい事がそれかよ。今日も頭に花咲きまくってんな。」

『あー…やっぱりか…。お前、親がいないって好条件でもヘタレさ全開だったんだな…。』


赤井は何か勘違いして憐れんだように言うので、俺は話すつもりはなかったが口から勝手に言葉が飛び出す。


「お前な、俺はそこまでヘタレじゃねぇよ。勝手に自己完結させんな。」

『は!?何!?今までにない余裕な返し!!お前、とうとうヤッたのか!?』


赤井がまたテンションを上げて嬉しそうに尋ねてきて、俺はウザいな…と思いながらも今後このネタでからかわれるのが嫌だったので正直に打ち明けた。


「だったらなんだよ。お前に俺らのことは関係ねーだろ?」

『うおぉぉぉぉっ!!!!マジか!?マジなんだな!!!その言い方はマジだな!!そっか~~~!!!やっとか!!やっと本懐を成し遂げたんだな!!うわーーーっ!!今日は赤飯だな!!』


電話の向こうで赤井が雄叫びを上げたので、俺は耳が痛くなってケータイから耳を離した。


こいつは俺の母親か。


俺はケータイに耳がつけれないので心の中で赤井に突っ込む。

赤井はまだテンションが下がらないのか電話の向こうで騒いでいる声が聞こえる。


『つーか、ホントに良かったな!もう、傍で見守ってきた俺としては、やっとこうなって本当に嬉しいよ!!どんだけ待たせんだよって感じだけどな。』

「ほっとけ。つーか、それを言おうと思って電話したんじゃねぇんだよ。」

『あん?どういうことだよ?』

「今日さ、詩織が俺ん家に泊ることになったんだけど、詩織がお母さんに小波の家で誕生日パーティして泊る流れになったって嘘ついちまって…。一応お前も口裏合わせてほしくて電話したんだよ。」


俺が事情を説明すると、赤井がぶふっと吹きだしてから豪快に笑い出した。


『ぶわっはははははっ!!お前っ、ほんっとに谷地さんに振り回されてるなぁ~!!』

「うっせーよ!!」

『わはははっ!!あー、幸せそうで何より。いいぜ、協力してやるよ。ついでに小波やその架空誕生日パーティに来るだろうメンバー全員に頼んどいてやるよ。感謝しろよな~?』


赤井が偉そうに上から言ってきて若干イラッとしたけど、協力してくれるなら有難かったので素直に礼を言った。


「わーってるよ。ありがとな。赤井。」

『ふはっ!!素直!…お前ってホント…。』


赤井は途中で言葉を切るとゴホンとわざとらしく咳払いしてから、『まぁ、邪魔はしねーから。頑張れよ。』といつになく優しく言った。

俺は優しい赤井なんて気持ち悪くて背筋がぞわっとしたが、一応「サンキュ。」と返すと電話を切った。

そこでちょうど詩織がお風呂から上がってきたようで、リビングの扉が開いて俺のスウェットに袖を通した詩織が顔を覗かせた。


「お風呂ありがとう。次、井坂君入るよね?」


詩織はサイズの大きい俺のスウェットをだるだるぶかぶかに着こなしていて、俺はその守ってあげたくなる姿に口をぽかんと開けて持っていたケータイを落とした。


なんだこれ!!!!!


俺は文化祭以来のギャップにぐわっと体温が上がって、これから来るだろう試練の波を想像して頭が痛くなってきたのだった。











幸せそうですね~

まだラブラブモードが続きます。

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