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理系女子の恋  作者: 流音
138/246

131、積極的

井坂視点です。



「井坂君、ちょっと来て?」


俺が赤井や島田とドラマの話をして盛り上がっていたら、詩織が赤井と島田の間から顔を覗かせていた。

俺は何の用だろう?と思いながら席を立つと、手招きする詩織の後についてベランダに入る。


詩織は俺がベランダの扉を閉めるのを確認すると、壁際にしゃがんで俺にも座るように示してきた。


「何?」


俺が詩織に近付いてその場にしゃがむと、詩織が急に俺の首に腕を回して抱き付いてきて、心臓が止まるかと思うほど驚いた。


は!?これなんだ!?

なんかのドッキリか!?


俺は小波たちの差し金だろうかと、変に疑って辺りに視線を走らせた。

でも、小波や新木が陰で見てるわけではなさそうで、疑問だけが頭に残る。


「井坂君っていつもあったかいね…。」

「え!?そうか!?」

「うん…。あったかいよ。ほっとする。」


詩織はふふっと楽しそうに笑うと、俺の首筋にスリスリと頬ずりしてきて、俺は背筋にゾワワッと鳥肌が立った。

心臓もバックバックと大きく鳴り始める。


うわわわわっ!!!!

もしかして、今日俺の誕生日か!?何のプレゼントだよ!!!


俺は詩織が甘えてきてるとやっと理解して、自分が受け身になってることに慣れずに戸惑った。

体中の血流が一気に速くなって、体が熱くなってくる。


「ねぇ、井坂君もギュってして?」


!?!?!!?


俺は耳元でおねだりされただけで体に痺れるような感覚が走って、反射のように詩織をギュッと抱きしめた。

詩織は「やった。」なんて嬉しそうに笑うけど、俺は変なスイッチが入りかけて、詩織の背に回した手が不審な動きをし始める。


ヤバい、ヤバい!!!

この間の事思い出して、体が勝手に詩織に触りたくなってる!!


俺は初めて理性を吹っ飛ばした日のことが脳裏を駆け巡っていて、我慢しようとギュッと目を瞑った。

あのときは本気でストッパーがきかなかった。

熱があったせいもあるんだけど、詩織と一緒に寝てる状況に変な妄想をしてたら体が勝手に動いた。

本能のままに動くってのはこういうことかと、自分で自分が怖くなった。


詩織に触りたかったから触りまくり、キスもしたかったからキスしまくった。

詩織が感じてるのは肌で感じてた。

喘ぎ声や潤んだ瞳からどんどん気持ちも高まって、熱もどんどん上がって…


だから、のぼせ上がって気を失った…


やっと詩織とできると欲求が満たされる寸前のことだっただけに、全てを思い出してからは何て勿体ない事をしたんだろうと、激しく後悔した。


詩織に起こされた瞬間は何も思い出せなかったけど、詩織のはだけた胸元を見ただけで、俺は詩織の体の隅々まで思い出して、鼻血を出しそうだった。


こうして今も抱きしめてるだけで、あのときの肌の感触を思い出してきて、理性のネジが飛びかける。

ダメだと自分に言い聞かせて、寸でのところで堪える。


でも詩織は何も分かってないのか、首筋に平気で気持ちを高ぶらせる吐息を吹きかけてくる。


これいつまで続くんだ?

いや、すげー嬉しいけど…これ以上はさすがに…


俺が自分の事情から離れようと腕の力を弱めると、詩織が少し俺から離れてくれた。

それに心底ほっとして、少し気持ちが収まる。

でもそれも一瞬のことで、詩織は急に俺の腕を掴むとグニグニと揉みだして、胸に動揺が広がる。


「な、何してんの?」

「え?あ、うん。井坂君、細いのに筋肉あるなぁって思って…。やっぱり逞しいよね。」

「そりゃ…まぁ…な。」


俺は詩織にそう思われたくて筋トレしていただけに、褒められたことに嬉しくなった。

でも、筋肉を揉まれてるのが変な感触で、胸の奥が疼いてくる。


「そ、そろそろ揉むのやめねぇ?」

「あ、ダメだった?」

「いや、ダメってわけじゃねぇけど…。」

「それならもうちょっとだけ。前から触りたかったんだ。あ、井坂君も触りたいとこあったら言ってね?」


は!?!?!


俺は詩織の発言とは思えなくて、目を剥いて驚いた。


「え?何…触りたかったら、触ってもいいわけ?」

「??いいけど?なんでそんなに驚いてるの?いつも勝手に触ってくるのに~。」


そうだけど!!


俺はまさか詩織からこうして面と向かってお許しがでるとは思わなくて、複雑だったけど内心喜んでいた。

だって、これで堂々と触りたい時に触れるってことだ。

詩織がそういう気分じゃなかったとしても、詩織が言った事実を出せば、詩織は嫌がりながらもOKしてくれる。


そう、詩織は自分が言い出したことには責任を持つからだ。


俺は詩織のそういう性格を知ってただけに、やった!!と思って、揉まれてない方の手で詩織の腕を掴んだ。

そして詩織と同じようにグニグニと揉んでみて、驚くほど柔らかいことに力を緩めた。


「あははっ!なんかマッサージされてるみたい!」


詩織は俺がどういうつもりで腕を揉んだのか分かってない様子で、俺はどこまで笑ってられるか意地悪したくなって徐々に手を上に滑らせた。

詩織はくすぐったいのか小首を傾げながら笑っている。


俺はそんな詩織を一度じっと見つめると、嫌がられるのも覚悟の上で服の上から詩織の胸を掴んだ。

詩織はその瞬間に笑顔を消して、目を丸くさせて俺を見つめてきた。

俺はあれだけドキドキさせられたお返しだと思って、腕の時のように胸も優しく揉んでみた。

腕とは違う感触に癒されて、直に触りたいな…なんて思って身を寄せると、固まってる詩織の手から腕を離して詩織の制服の下から片手を滑り込ませた。


ここでダメだと言われると思ったのだけど、詩織からは一向にその声は飛んでこない。

それどころか紅潮してる顔を手で隠して出そうな声を殺してるように見える。


??おかしいな…??


俺はまだOKなのか?とエスカレートして、詩織の下着の間に手を割り込ませると直に胸に触ってみた。

そこでさすがに詩織が「ひゃっ!」と声を上げると、俺のシャツを掴んで肩に顔を押し付けてきた。

詩織の肩が微かに震えているのを見て、俺はさすがにここまでか…と思って詩織に声をかけた。


「悪い…詩織。やり過ぎた…よな?」


俺が遠慮がちに尋ねると、詩織は横に首を振ってから熱い息を吐き出した。


「ううん…。いい…。いいよ…?」


うん?いいって…どういうことだ?

俺が言われた意味に首を傾げると、詩織は俺の肩から顔を上げて潤んだ瞳を向けてきて、ドックンと大きく心臓が動いた。

詩織の表情から胸の奥がゾワゾワと疼き出す。


「……触るだけなら…いいよ…。…続けて?」


…………


………




―――――――えぇっ!?!?!?!



俺は詩織から発せられたものとは思えない言葉に、数秒間思考回路がショートして、それがやっとこ繋がると同時にビビッと電流が流れるように体が痺れた。

その後、ぶわっと全身に鳥肌が立って血流が逆流するようになる。


「なっ、なっ、何言って!!!!!」


うわわわわっ!!!やっべぇ!!!!


俺は詩織から逃げるように離れると、理性が吹っ飛びそうになるのを押さえるために、ベランダから教室に戻りトイレに向かって全力疾走した。

そして、トイレに駆け込み用を済ませると、言い様のない感情から個室のドアを蹴っ飛ばして唸り声を上げた。


「うぅぅぅぅぅぅ――――――っ!!!!だぁぁぁっ!!!!」


俺はそうすることで少しスッキリすると、肩で大きく呼吸を繰り返した。


あっれは!!反則だろ!?!?!

なんだアレ!?なんなんだ!!!!


俺は個室の扉に両手をついて項垂れると、熱の引かない顔のまま悶々とする。


あんな詩織、初めてなんだけど!!!

もう、可愛すぎて殺されるかと思った!本気で鼻血出してぶっ倒れるかと思った!!

アレ計算か!?

いや、どう見ても天然だよな!?俺がどう思うかとか何も考えずに言ってた感じだった!


もうダメだ!!ホントにダメだ!!

あんな詩織前にして、何もしないなんてぜってー無理!!

もう我慢してんの奇跡に近い!


俺は初めて詩織から攻められただけに、どう対処すればいいのかも分からなくてパニック状態だった。

もう頭の中にはどうやって詩織とやるかみたいな事ばかり考えてしまって、自分の獣具合に嫌気がさす。

俺は正常な自分に戻るまで、しばらく個室で何も考えるな…と脳に刻み込むように、何度も心の中で唱え続けていたのだった。




***




俺が自分の衝動を抑え込むのに疲れ果てて、ため息をつきながら教室に帰ると、詩織が長澤君と何か楽しそうに話しているのが見えて、俺は珍しい光景に面食らった。


なんだ…アレ…??


俺は自分が教室を離れた間に何があったのか知りたくて、赤井や北野としゃべっていた島田に近付くと肩を叩いて訊いた。


「島田!あれ、どうなってんだ?」

「は?あれって何?」


島田は赤井達と話をするのを中断させると、俺に顔を向けてきた。

それと一緒に赤井と北野の顔も俺に向く。


「何って詩織に決まってんだろ!?なんで長澤君なんかと話してんだよ!?」

「はぁ?なんかって…それ、長澤君に失礼だろ?クラスメイトなんだし、話ぐらいするだろ。」

「クラスメイトって…そりゃそうだけど、あんな楽しそうに長澤君と話してる姿見たことねぇんだけど!!」


俺は長澤君の詩織に対する気持ちを赤井に聞いて知っていただけに、仲良さそうなことにモヤモヤして、今すぐにでも割り込みに行きたくなる。


「まぁ…俺も初めて見るけど…。まぁ、基本谷地さんって誰にでもあぁだから、心配しなくてもいいんじゃねぇの?」


島田が本当に詩織の事好きなのかと疑いたくなるような、投げやりな返答をしてきて、俺は島田にイラついた。


「詩織が珍しいことしてたら気になるだろ!?お前、それでも詩織の事好きなのかよ!!」

「はぁぁ!?お前、何大声で言ってんだよ!?アホか!!!」

「どわっ―――!!」


島田が真っ赤な顔で俺を蹴とばしてきて、俺は数歩後ろに下がり背後にあった机にぶつかった。

そこには内村が同じ趣味嗜好を持つクラスメイトと話をしていて、俺はぶつかった事に「悪い。」と謝った。

内村は怪訝そうな目を向けていたけど、すぐ仲間に目を戻していたので気にしてない様子に胸を撫で下ろす。


「お前って、ホント谷地さんしか見えてねぇのな。バカみてぇ。俺はお前とはちげーよ。」

「あん?何、余裕ぶっこいてんだよ。片思いのクセして。」

「お前こそ、彼氏のクセに心狭すぎんだよ!!ちょっとは落ち着けっつの!!」


島田が声を荒げた後、飽きれた様にため息をついて、俺はからかって片思いとか言っただけに、まだ詩織の事を好きだと感じさせる発言に、心のどこかで申し訳なくなってしまった。

島田の横では赤井と北野が俺らの話を黙って聞いて、蔑むような突き刺さる視線を向けてくる。


俺はその視線に「分かってるよ!!」と口パクで返すと、自分が悪ノリしたことを反省した。


分かってるけど、島田でも弄ってねぇと、長澤君とのことが気になって、気持ちわりぃんだよ…


俺はちらっと詩織に目を向けると、詩織が何か紙に書いている長澤君を覗き込んでいて、その距離の近さにイラッとして奥歯を噛みしめた。


は・な・れ・ろ~~~~~!!!!!


手も爪が肌に食い込むぐらいきつく握りしめて、体が動きそうになるのをグッと我慢する。

あの距離間だったら、詩織の花のような匂いがしてるはず…

俺はどこか嬉しそうな表情をしてる長澤君を見て、嗅ぐなよ~と念じる。


詩織の匂いを近くで嗅いでいいのは俺だけだから!!


俺が握りしめた拳を島田の机にダンッと叩きつけて置くと、俺の横面に赤井達の視線が突き刺さるのを肌で感じた。

そのとき、長澤君から何か書いていたメモを受け取った詩織がそのメモを見て指さしながら顔をしかめていて、長澤君が詩織に顔を近づけてすぐ傍で話をし出して、俺はその光景に我慢も限界だった。


もう、ダメだ!!!あれはクラスメイトの距離間じゃねぇだろ!?


長澤君の表情は明らかに嬉しそうにニヤけかけていて、あんな緩んだ顔を今まで見たこともない。

それが詩織への気持ちを確信させて、俺は邪魔する!!と決めて島田の席から足を前に出した。

でも、それを後ろから制服を引っ張られる事で阻止されてしまう。


「おいおい、待て待て。何しに行く気だ?」


俺の制服を引っ張って止めたのは、やっぱり赤井の奴で、俺は引っ張られている服を放してもらおうと、自分の制服を引っ張って振り返った。


「うるせぇな!!お前には関係ねぇだろ!?」

「関係ねぇけど、今まさにクラスで揉め事を起こそうとしてる奴を止めて、何が悪い?」

「揉め事って…んなこと起こさねぇよ!!」

「分かんねぇだろ?その様子じゃ。お前、谷地さんのこととなると見境いねぇからな~。」


なっ……!!!


俺は赤井から指摘されたことがあながち間違ってないだけに、顔を引きつらせて口を噤んだ。

赤井ははぁ…と諦めたようにため息をついて、その横で北野が必死に笑いを堪えている姿が見える。

島田なんか勝手にしろとでも言いたげな、蔑むような目を向けてくる。


こいっつら!!視線がうるせぇな!!!!


俺は赤井から制服を引き抜くと、苛立ちから腕を組んでプイとそっぽを向いた。


「お前って…はぁ…。ほんと、世話が焼ける…。ちょっと待ってろ。」


赤井はそう言うと、面倒臭そうに立ち上がってスタスタと詩織と長澤君の所へ向かっていった。

俺は歪めてた顔を元に戻すと、赤井が何をする気なのか気になってその姿を見つめた。

赤井は詩織と長澤君と何か話をすると、詩織に向かって何か言って詩織の目がやっとこっちを向いた。

自然と見ていた俺と目が合って、詩織はそれに一瞬嬉しそうな顔をしたけど、すぐに表情を曇らせてから俯いてしまった。


あれ…?どういう反応だ?あれ…


俺は嬉しそうにされるのは分かるけど、あんなに落ち込まれる理由が分からなくて、俯いている詩織をじっと見つめ続けた。

赤井は長澤君と何か話をつけると、俺に目を向けてニッ勝ち誇ったような笑みを浮かべて、詩織をつれてこっちまで歩いてきた。


詩織は連れられてる間も、暗い表情で沈んでいる。


「お待たせ。ほら、奪還してきたぞ。これで満足だろ?」

「え…、あ、…まぁ…。」


俺は詩織の様子が気になり過ぎて曖昧な返事をすると、赤井に「もっと感謝しろよ!!」と怒鳴られた。


「うるさいな。感謝してるって。ありがとな。」

「なんかムカつく言い方だな。ま、いいけど。」

「なんか谷地さん元気なくない?どうしたんだ?」


今の今まで俺のことを蔑むように見ていた島田が、詩織には優しく尋ねて、俺はそれに内心ムカッとする。

詩織は島田の問いに反応して、ちらっと俺を見ると急に真っ赤になって手で顔を覆い隠すなり、「そんなこと言えない~。」としゃがみ込んでしまった。


「言えない?なんで?そんな言いにくいこと?」


島田が椅子から下りると、詩織の前に目線を合わせるようにしゃがみこんだ。

俺はそれに負けじと詩織のすぐ横にくっついてしゃがみ込んだ。

でも、詩織が俺に気づくなりジリジリと距離を空けてきて、俺は少なからずその行動にショックを受ける。


……なんで離れんだよ…

さっきは長澤君とあんな近くで話してたクセに!!


俺はイライラし過ぎて、詩織を睨むように見つめてしまう。

詩織は俺の視線に怯えるような目を向けると、島田や赤井、北野の視線も気にしているようでソワソワと落ち着きがなくなっている。


「言いにくいっていうか…私…変だから…。言ったら…ドン引きすると思う…。」

「変?ってどんな風に?俺ら、谷地さんが変でもドン引きなんかしねーと思うけど。」


島田が詩織に優しい笑顔を向けて言って、詩織の様子が少し落ち着くのが見えた。

詩織は島田の言葉に力をもらったのか、「あのね…。」と話しだそうとしている。

俺はそんな信頼し合ったかのような二人の空気感に更に苛立ちが募り、ギリ…と奥歯を噛みながら二人を睨み続ける。


「……その、ほんとに…ほんとに変だと思うんだけどね…?」

「うん。どう変なんだ?」

「その………、私……井坂君のことばっかり…触りたくなるっていうか…。」

「……え?」


―――――…ん??


俺も島田も詩織から出た言葉に目を丸くさせた。

詩織はそんな俺たちに気づかずに続ける。


「というか……触って欲しいっていうか…。こんなの女の子が思う事じゃないと思うんだけど…。でも、私…ほんとおかしくって…変なんだ…。」


………触って欲しい…??


俺がぽかんとしたまま詩織を見ていると、すぐ目の前で島田が顔を赤く染めると手でそれを隠すのが見えた。

その行動だけで、変な妄想をしやがったな…と思って、詩織の言葉もしっかり胸の奥に届かない程、島田にイラついて睨みつけた。


「こんなの…やっぱりおかしいよね?…井坂君も…そう思ったから…、あんなに走って逃げたんだよね…?」

「え…?」


急に俺に話が飛んできて、俺は恥ずかしそうに顔を赤らめている詩織を見て、さっきまでのことを思い返した。


あ…、――――――あぁ!!!!!


俺は自分が詩織に欲情して逃げた事を思い出して、詩織に変な誤解を与えてると焦って否定した。


「ち、違う!!!!あれは詩織じゃなくて、俺がヤバかっただけっていうか!!」


「「ヤバかった??」」


俺の発言に興味を持ったのか、赤井と北野が声をそろえて尋ねてきて、俺は自分がとんでもない事を暴露してる事に気づいて、顔が引きつった。


このままここにいたらダメだと察して、シュンとしてる詩織の手を掴むとその場から離れるために教室の扉へと向かう。

後ろから「お前ら何やってたんだよ~??」という赤井の声が聞こえたけど、俺はそんな事言えるか!!と心の中で返して教室を出た。

そして黙々と廊下を手を繋いで歩いていると、後ろで詩織がぼそっと呟いた。


「…私…やっぱり変…。」


俺はその呟きを聞き逃さずに振り返ると、落ち込んでる詩織に変じゃないということだけでも伝えようと口を開いた。


「詩織は変じゃねぇよ!!」

「え…?なんで??」


詩織は目をぱちぱちと瞬かせて俺を見つめてくる。

その顔にドキッと収まってたはずの心臓が動いて、視線が泳いでしまう。


「だ…だって…、俺だって…同じこと思ってるから…。」

「……それ、ほんと?だって…井坂君、変な私に幻滅して逃げたんじゃ…。」

「それ違うから!!あれは、詩織のことが好き過ぎて…その…何て言うか…男の事情だよ!!詩織に幻滅したわけじゃねぇ!!」


俺は廊下だという事もあって、言葉を濁した。

詩織はよく分かってないのか「男の事情…??」と首を傾げている。

俺はもう説明が面倒で、とにかく俺が詩織の思う変だなんて思ってないということを分かってもらおうと、廊下だということに構わず詩織をギュッと抱きしめた。


「俺が変だとかで詩織を幻滅するわけねぇだろ!?っつーか、俺の方がとっくの昔に変だから!!詩織が思ってること、ずーっと前から思ってたんだからな!!!」

「ずっと前から?」


詩織が俺の腕の中で動いて、驚いたような目を向けてきた。

俺はそんな顔も可愛くて、抱きしめてる腕に力を入れた。


「そうだよ!!俺はそんだけ詩織のことが大好きなんだよ!詩織だってそういうことだろ!?」


詩織は俺の言葉にしばらく考え込んでいたけど、ふふっと楽しそうに笑うと俺を抱きしめ返して言った。


「そうだね。私も井坂君が大好きだから、こうなったのかも。」


詩織は安心したかのように「ありがとう。」と言ってきて、俺は誤解を解けたことに胸を撫で下ろした。

でも、そのとき廊下を通る生徒の視線に気づいて、俺は焦って詩織から離れると詩織の手を引いて逃げるようにその場を後にした。


うっわ!!やっべ!

また詩織しか見えてなかった!!!!


俺はぐわっと顔が恥ずかしさで熱を持ちはじめ、それを振り払うかのように黙々と足を進め続ける。

だから、詩織が後ろで嬉しそうに笑っていることも全く気付かなかったのだった。






井坂の悶えっぷりを存分に書けました(笑)

ちょっと遊び過ぎたので、次から真面目な話に戻します。

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