7.友好
黙々と二人はポテトを食べていた。
しかし、食べながらもバノンは気が気ではなかった。
一体どうしてユーリはこの場に自分を呼んだのか。
何を企んでいる?
そんなことを考えながらも、ポテトの美味しさには適わずに頬が綻んでしまう。
そして、ユーリはユーリでとんでもない悪行を考えていた。
――くくくっ、このポテトの美味しさには適うまい。これほどのものを渡されたのなら、うかつに俺に手を出せまい。つまり、俺の舎弟同然ということだ。
心の中であくどい笑みを浮かべていた。
そして、その後ろには朗らかに微笑むミーアの姿。
隙だらけのように見えて……、隙だらけだった。
あまりにも隙しかなくて、ミュラーは恐れすら感じていた。
――どう見ても、攻撃を誘っている。我々程度、簡単に対処できるということか。
相手は大国の王子。
その側付きがただのメイドであるはずがないのだから。
ポテトを食べるバノンの後ろで、ミュラーは青ざめた表情で冷や汗を流していた。
この場から生きて帰れる気がしなかった。
影を支配する悪人であるバノン。
それの側仕えたるミュラーもそれなりの力を持っている、と称しているのだが、それでも恐怖を感じる人間。
おそらく、悪の中の悪たる人間だろう。
だからこそ、交流を深めようとバノンは一緒に食事をとることを承諾されたのだと――。
そして、勝手にとんでもない暗殺者に仕立てられてしまったミーア。
もちろん相手の攻撃を誘っているわけでもなく、素で隙を作っている。
むしろ、隙を作っている、という感覚もなかった。
――ユーリ様に同性の友達が……。ついに……、ついに……この時が。
目に浮かぶ涙をハンカチで拭い去る。
そして、勝手に『いずれ行われるであろう、自分の部屋に友達を呼ぶ』という出来事を想像して、気合いを入れていた。
◇◇◇
「ふぅ……、中々うまかったな。さすがはアルマーズ産のポテトだ」
たっぷりとポテトを堪能したユーリは、満足げに笑みを浮かべていた。
それと同時に、バノンの評価が変わっていた。
ポテト好きに悪い奴はいない。
ポテト好きの奴は信用して良い。
それがユーリの信条である。
つまり、このバノンは信用できる。
ユーリに徒なそうとする者ではない。
だからこそ、ユーリは少しだけ警戒心を緩めて、告げていた。
「今日のことはくれぐれも内緒だぞ。もし誰かに言ったら、どうなるかわかるよな……?」
下手にアルマーズ産のポテトが美味いということが知れ渡っては、自分の取り分がなくなってしまう。
ポテトを食べられなくなる苦しみ。
同じポテト好きならわかってくれるはず。
ニヤリ微笑みながら言っていた。
もちろん、ポテトはうまいと思ったが、食べられないと苦しくなる……というレベルでもないバノンは、その言葉を湾曲して捉えてしまう。
ユーリはこの場でなにかとんでもないことをしていたのだと。
それで、目撃者である自分を囲い込むために、同じ食事をとったのだと。
そして、もしこのユーリを裏切るようなことがあれば、一瞬で消されるだろう事を理解した。
青ざめた表情を浮かべ、ただ何度も頷く以上のことはできなかった。
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