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次は悪役になってやる!〜なのに勘違いされてどんな行動も賞賛されてしまう件〜  作者: 空野進
2.1. 同級生の光の英雄?

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4.勧誘

 ウルアース王国、眼鏡省(仮)の部屋は今日もたくさんの本が積まれていた。


 ユーリがいれば、いつ彼が入ってきても大丈夫なように最低限、ソファー周りは片付けておくのだが、今は彼も学園で英雄らしく学業に励んでいる。

 だからこそ、ランベルトたちは自分ができる精一杯の仕事をこなしていた。



「ユーリ王子のためにしっかり国内の掃除をしないといけませんもんね」

「――それなら早く箒を持って掃除に行ったほうがいいのじゃないの?」

「さすがに私一人では国内を掃除するには手が回りませんから。人手がいるのですよ、(ゴミ)を見つけるのにも」



 ランベルトは眼鏡を持ち上げ、笑みを浮かべる。

 何やら良からぬことを考えていそうだが、ただ掃除するだけなのだから深く考えなくていいかな、とルミは考えたが、それが間違いだった。



「国内の掃除なら孤児院の子らができるんじゃないかな?」

「――なるほど。ここであの子たちを投入するのですね。確かに警戒されないのでいいかもしれませんね。王都内にも詳しいので、近くの掃除に使えそうですね」


「うん、そうでしょ。それじゃあ、ぼくがアランドールさんに言っておくね。箒とかも準備しておいた方がいいかな?」

「そうですね。確かに武器(ほうき)は必要ですね。(ゴミ)を取り除くにも、彼らの隠密技術が必要になりますからね」


「……? えっと、なんのことを言ってるのかな?」

「いえ、こちらの話でした。では、ルミ。よろしくお願いしますね。私も色々と動きますので」


「うーん、なんだか嫌な気もするけど、わかったよ。それより影の悪人については何かわかった? ぼくの方は収穫がなかったんだけど……」

「一応、光の英雄と影の悪人の候補と言われていた人の情報は仕入れました。ただ、彼らはみんなセントミジュ学園の生徒ですから、ユーリ王子に任せておいていいかと――」


「……それはそれでいいのかな? 助けに入ったりした方がいい気もするけど……」

「ユーリ王子なら本当に助けがいるときには仰ってくれますよ。まだ何も言ってこないと言うことは学園に関しては我々が手を出すべきではないと言うことですよ」



 今までユーリが間違ったことをしてこなかった(とランベルトは思っている)ところから絶対の自信を持っていた。

 ちょうどこのタイミングでピンチに見舞われているユーリがその場にランベルトがいないことに悪態をついているなんて思いもしないで――。






 ユーリは今、過去最大のピンチに襲われていた。

 テーブルを挟んで、向かいには生徒会長のエイルが優雅に紅茶を飲んでいた。

 その後ろには控えるようにラミルが立っていた。

 彼の手は腰に携えられた剣に触れており、どうしてもユーリの表情は強張っていた。



 ちょっとでも下手なことをすれば斬られる。

 そんな雰囲気が場を包んでいるのに、その状況で呑気に紅茶を飲めるわけもない。



 ――ランベルトがいたら押し付けてやるのだけど……。



 悔しそうに口を噛み締めるユーリ。

 ただ、連れてこれる従者は一人。

 ランベルトと学園にいる間、生活を共にするなんてことは考えたくもなかった。



 ――ミーアは……まぁ、期待はできない。襲われたときに壁として使うくらいだが、こんなところで悪を目指す俺に忠実な部下を失うわけにはいかない。そうなると、俺の巧みな話術でここは乗り切るしかない。



 腹を括るとユーリの方からエイルに話しかける。



「ここなら誰かに聞かれることなく話をすることができるだろう? それで、この俺に一体なんの用だ?」



 それを聞いて、エイルは少しだけ驚きの表情を浮かべる。

 確かに生徒会の勧誘の話は大々的にするべきものではない。

 できれば内々に進めておきたいものだった。


 特にセントミジュ学園の生徒会は会長だけ選挙が行われ、他の人はその会長の一存で決めることになっていた。

 これも会長が仕事をしやすい環境を作るという一環だったのだ。


 ただ、ことエイルに関して言えば、いまだに生徒会に選んだ人間は誰もいなかった。

 ちょっとした不正を許せない性格が災いして、真に悪を憎む人間以外選ぶつもりがいなかった。

 だからこそエイルの側にいるラミルが彼の手伝いをしていたのだった。


 ただ、そんなときにようやくエイルが認められそうな人間を発見することができた。


 王国の救世主であり、真なる英知の持ち主。

 その手腕を持って、王国に蔓延る悪を葬り去り、善政に努め、城下町の貧困街すらも救ってみせた、まさに英雄という名前がぴったりの人物。

 今なお、王国に悪がいないか、新たにできた省庁が見張っている、という話を聞いたこともある。

 そして、国民たちからも愛される、国を憂う最高の王子。


 ただ、本人はそんな様子を一切見せず、できるだけ平凡を装おうとしていることもまた、国民たちが好く理由の一端だろう。


 実際は幾重にも重なるほどの英知の輪を解きほぐし、最適解への道を進んでいるのだが、それを周りに悟らせない。

 ユーリ自身の手柄ではなく、極力国民たちの手柄にしようとしている。


 その証拠に弱小貴族の青年を新省の大臣に据え、期待の新人と言われるまだ若い少女も好待遇で省へと迎え入れていた。

 孤児たちですら、手柄を立てるなら取り立てる。


 ただ、それも全てユーリが思い描いていた物語通りなのだろう。

 この対応によって、身分の低いものたちですら大きく取り立ててもらえる可能性があるとわかり、より一層国のために力を尽くすようになっていた。


 今のウルアース王国はかなり活気付いている。

 ただでさえ大陸随一の国家だったのだが、その成長はまだまだ続いていくだろう。



 正義を志し、能力面も文句なし。

 そんな人物をエイルが見過ごすはずもなく、どう話を切り出すか、エイルは紅茶を飲みながら考えていたのだが、ユーリの方からわざわざ言ってくれる。


 ユーリなら既にこの話の結末すら読めているのだろう。


 生徒会に入るか否か……。


 おそらくこの学園がより良い方向に進む様に考えているはず。



 ――もちろん学園のことを考えると生徒会に入って、力を尽くしてくれる。善をなすにはこれ以上のことはないはず。



 エイルはユーリに飲み込まれない様に必死に脳を働かせ、彼に告げる。



「ユーリ・ライナ・ウルアース。改めて話をさせていただきます。ぜひ、私の生徒会に入っていただけないでしょうか?」



 手を差し伸べて、ユーリの審判を待つ。

 それはエイルの信じる道が正しいかどうか、それを評価されている様な気持ちだった。


 ここまで、エイルの勝手な妄想で、今のユーリはそこまで考えていなかった。

 わざわざ生徒会長が自分のことを誘ってきた理由を「悪人を手元に置いておき、監視するため」と斜め下の方向に解釈していた。


 もちろん、そこにエイルの信じる道なんて考えはない。

 悪人は自分のことしか考えない。


 ただ、今のユーリは自分の身が惜しい。

 後ろで目を光らせているラミルを前に、エイルを無下にすることはできなかった。



「やはり俺を監視する(その)ことか。確かに(お前にとって)魅力的な提案かもしれない。でも、まだ断らせてもらおうか」

「――な、なぜですか!?」



 エイルはその場で立ち上がり、驚きの表情を浮かべていた。

 その瞬間にラミルは剣に手をかけていた。


 しかし、ユーリは表情一つ動かさずに腕を組んだまま答える。



「今はまだその時ではないということだ」



 ――俺が生徒会に入るタイミング。それは学園を影で支配したあとだ。



 なるべく穏便に済ませようとしたのだが、断った瞬間にユーリに向けて殺気が向けられる。

 それはラミルから発せられたものだった。

 そのせいでユーリは身も凍るような思いをし、体が動かせなかったのだ。



 だからこそ、なんとかこの殺気を抑えてもらおうと補足の説明を加えた。



 ユーリは決して怖がっていなかったわけではない。

 むしろその逆。

 ただし、エイルは武力の脅しに怯えない、絶対の自信をユーリから感じていた。



「ラミル! 手を出さないでください!」

「申し訳ありません、エイル様」



 エイルは珍しく大声を上げてラミルを叱る。

 そして、ユーリに対して頭を下げていた。



「申し訳ありません、ユーリ。あなたに手を出そうという気は全くありません。あとでラミルには注意をしておきますので、これで手を打っていただけないでしょうか?」

「気にするな。そいつも悪気があってしたわけじゃないだろう?」



 ユーリは笑みを浮かべながらも心の中で悪態をついていた。



 ――死ぬかと思ったぞ! ただ、罰を与えるだけじゃ俺の気がすまない。こいつには俺に許されたという恩を売って、いざという時にこき使ってやる!



 そんなユーリの考えとは裏腹にエイルはまた違った考えを持っていた。



 ――やはり彼は善を第一に考えている。しかも、どんな人でも必ず更生できると信じて……、いや、実際にさせているんだ。生徒会に入れられなかったのは残念だが、いずれ入ってくれるのだから、今回は大人しく引き下がるべきだろうな。



「ありがとう、助かります。では、私はそろそろお暇させていただきます」



 エイルが立ち上がるとようやく話が終わった様だ、とユーリはホッとしていた。

 しかし、そんなユーリの喜びをミーアが粉々に砕いてしまう。



「もうお帰りになるのですか? 今お菓子のポテトを用意したところなんですけどーー」



 ミーアが出してきたのはアルマーズ産のポテトで作ったフライドポテト。

 ユーリの好物だった。

 それを英雄であるエイルに分けることは、もったいない。


 でも、それを悟られるわけにもいかないので涙を飲んで笑みを浮かべる。



「そ、そうだな。せっかくだからポテトくらい食っていったらどうだ?」

「うぐっ……、い、いや、遠慮させてもらいます。では、失礼します」



 エイルは眉を潜ませたあと、慌てて部屋を出て行った。

 その様子を少し不思議に思ったものの、エイルの分のポテトも食えるという誘惑に抗うことができず、それ以上エイルのことを考えるのはやめることにした。

遅くなってしまい、申し訳ありません。

これでおおよそのキャラが掴めたかな、と思います。

それぞれがどのようにユーリを勘違いしていくか……。


そして、ランベルトやルミも当然ながら出番があります。

ユーリから王国の掃除を任されていますからね|_˙꒳˙)_


ポテト畑はまだかぁぁぁぁー_( >▽< ๑_ )_まだです。


楽しかった、面白かった、更新頑張れ、と思われた方はブクマと評価の方、していただけると嬉しいです。

評価は画面下の「☆☆☆☆☆」をタップorクリックしますとできますので、どうぞよろしくお願いします。

(੭ु˙꒳˙)੭ु⁾ぺこっ

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