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次は悪役になってやる!〜なのに勘違いされてどんな行動も賞賛されてしまう件〜  作者: 空野進
1.3.王国の英雄と影の悪人

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20.滅亡の蛇

 滅亡の蛇――全てに破滅をもたらすために活動している邪教徒たちである。もちろんその破滅の対象は国家だけに留まらず、世界そのもの。そして、自分自身も含まれていた。







「な、何これ……。自分すら滅ぼすって……」



 孤児院から戻ってきた数日後。

 ようやく『滅亡の蛇の経典』を一部解読することに成功したルミ。

 ただ、それを見て青ざめた表情を浮かべていた。



「と、とにかく、ランベルトに伝えないと!」



 大急ぎでランベルトに会いにいくルミ。



「なるほど……、自らすらも滅びの対象ですか。これでようやく闇影省の不可解な行動の理由が分かりました」



 ランベルトは眼鏡を持ちあげ、ようやく笑みを浮かべていた。

 しかし、ルミにはむしろ相手の行動が恐怖以外の何者でもなかった。



「で、でも、それって、命すら捨てて襲ってくるって事だよね?」

「そういうことになります。ですが、相手が闇影省であることはいくらでも分かる状況だったのですよ? ユーリ王子がたまたま(・・・・)神の如き慈愛の持ち主だったから見逃されただけで、本来なら闇影省は解体されてもおかしくなかったのですから」

「……? 神の如き慈愛?」



 ランベルトのあまりの持ちあげようにルミは首を傾げる。


 確かにユーリは孤児院を救ってくれた。

 そこは感謝してもしたりない程だ。


 でも、それが神の如き慈愛かと言われると疑問が浮かんでくる。



「ユーリ王子の策謀は、私なんかが全て把握できる事でもありませんが、その全てがこの国のためを思って行動されている、ということだけは分かっているつもりです。そして、今回の相手もすぐに解体しなかったのには理由があるのでしょう」

「……ぼくがこの本を解読したのも理由があるの?」

「もちろんです。とにかくこの本の結果を早速ユーリ王子に伝えに行きましょう」



 意気揚々としたランベルトと眉をひそめていたルミは一緒にユーリの部屋へと向かっていった。







 知らないところで褒められていたユーリ。

 しかし、当の本人は何も考えずにベッドの上でゴロゴロとして過ごしていた。



 ――今日は何もする気が起きないな……。



 ここ最近、ずっと悪行三昧で働き詰めだったのだ。

 一日くらい休んでも罰は当たらないだろう。

 そんな考えから今日一日はのんびりとすると決めていたのだ。



 ――もちろん俺以外が休んでいたら、二十四時間三百六十五日、無理やり働かせるところだが。



 ブラック企業ですら真っ青になる考えを浮かべていると、部屋の扉がノックされる。

 もちろん、今日は誰かに会いたい気分でもないユーリは、即答する。



「誰もいないぞ!」



 もちろん声に出したら誰かがいることなど分かるのだが、それを言ったのがユーリだったのだから問題があった。



 その言葉を聞いたランベルトは眼鏡を持ちあげて、ルミに対して言う。



「なるほど、誰もいないそうですね」

「いやいや、ちゃんと声がしたでしょ? ユーリ様、中にいるよ!?」

「そんなことは分かっています。ただ、あのユーリ王子が(・・・・・・)わざわざいないと言ったのですよ? つまり何か特別な理由があって、私たちと会うことができない、ということですよ」

「な、なるほど……?」

「それと、この闇影省の件は私たちに一任するという意味合いも含まれているのでしょう。なら、兵を集めます。ルミも手伝ってくださいね」

「う、うん……、わかったよ……」



 本当にそこまでの意味があったのだろうか? と疑問が浮かぶルミだったが、自信ありげなランベルトと、このまま滅亡の蛇を放っておくこともできないので、黙って付き従うことにした。


 そして、まもなく滅亡の蛇のメンバーは捕らえられることになる。







 ――まさか本当に入ってこないとは。



 一方のユーリは本当にノックしてきた相手が入ってこないことに驚きを隠しきれなかった。



 ――どうやら俺が黒といったら、白いものですら黒だと言うようになってきたんだな。良い兆候だ。



 ニヤリ微笑むユーリだが、まさか今の一言が闇影省を攻め滅ぼす合図になっているとは、思いもしていなかった。

 すると、もう一度扉がノックされる。



 ――また同じ奴が戻ってきたのか? それとも別の奴か?



 それなら、とユーリは同じように返事をする。



「誰もいないぞ!」

「いるじゃないですか!? 入りますね」



 ゆっくり扉が開くと苦笑を浮かべたミーアが入ってくる。



 ――どうやらミーアの懐柔度はまだ低いようだ。



「今のはなんの遊びなのですか?」

「いや、遊びじゃないぞ? どのくらい俺の言うことを聞くか確かめていただけだ」

「あぁ、そういう遊びですね」

「だから遊びじゃない」



 ミーアの理解の悪さにユーリは思わずため息が吐きたくなる。

 でも、これでも自分の部下だから、とグッと気持ちを堪える。



「それよりも何か用事があってきたんじゃないのか?」

「そうでした。こちら両親からユーリ様に持っていくように言われたものなのですけど、いかがですか?」



 そう言ってユーリに差し出されたのは黄金色に輝く……、いや、少しくすんだ茶色のポテトだった。



「ユーリ様がポテトを好きだという話をしたら、日頃お世話になっているのだからって持たされたんですよ。一応料理長に頼んで、フライドポテトにしてもらいましたけど、いかがでしょうか? アルマーズ産……とはいきませんが」



 心配そうな顔をするミーア。

 それもそのはずでユーリの表情はさっきから全く変わらなかった。


 しかし、それも一瞬ですぐにユーリの表情が変わる。

 悪そうな笑みに。



「くくくっ、俺に黄金色のお菓子(ポテト)賄賂(さしいれ)か。ミーアも中々悪だな」

「ユーリ様ほどではありませんよ」



 ミーアは優しい笑みを浮かべる。

 その理由は、自分の弟も同じようなことを言っていたな、と思い出したからに他ならなかった。


 しかし、そんなことを気にする様子もなく、ユーリはゆっくりポテトに手を伸ばしていた。







 ポテトを食べ終える頃に思い出したようにミーアが言ってくる。



「そういえば先ほど、ランベルトさんたちに会いましたよ」

「ほう、それは珍しいな」



 最近ランベルトの姿を見なかったユーリ。

 おそらく裏で何か動いているのだろう、と思っていたが、まさかさっきノックしてきたのがランベルトとは思わなかった。



「それで、何をしてたんだ?」

「そこまでは分からないのですが、ルミさんと一緒に何か話されていましたよ? 『滅亡の蛇』がどうとか……」

「滅亡の蛇?」



 ――なんだ、その悪の秘密結社みたいな名前は。一方の俺たちは……くっ、名前で負けた。誰だ、眼鏡省なんて馬鹿な名前を付けた奴は!



 自分が付けたことを差し置いて他人のせいにするユーリ。



「まぁ、いい。奴らよりかっこいい名前を付ければ良いだけだ。あと、俺を差し置いて悪の組織を名乗るなんて許せるか! 滅ぼしてやる!」



 ようやくヤル気になるユーリ。

 部屋から出ようとした瞬間に再び扉がノックされる。



「誰だ?」

「ランベルトにございます」



 ちょうど良かった、滅亡の蛇のことを話しておくか。



「入れ!」

「はっ、失礼いたします」



 ランベルトが部屋に入ってくるとすぐに頭を下げてくる。



「何か用事か?」

「はい、ユーリ王子のご指示通りに闇影省を巣くっておりました滅亡の蛇のメンバー、捕らえさせていただきました」



 ――はぁ?



 何も指示した覚えはないのだが、気がつくと滅亡の蛇は滅ぼされていたようだ。

 この世界に来て、一番とも言えるほど悪党らしい存在だったのだが、どうやらその相手は姿を見ることなく滅んでしまったようだ。



 そして、なぜかそれが俺の手柄になっている。

 実際は別の誰かが動いてくれたのだろうが、他人の手柄は横取りをする。

 これもまた悪党らしい行いだろう。



「くくくっ、そうか。無事に完膚なきまでに滅ぼしたか」

「いえ、奴らの目的の中には自分自身の滅びもありましたので、敢えて生かした状態で捕らえて、ユーリ王子の素晴らしさを説いてます。今頃闇影省の長であるアブラヒムも自分の行いを悔い改め、ユーリ王子にしっかり忠誠を誓っているところでしょう」



 ――アブラヒム? 誰だ、そいつ。いや、誰でも良いな。自分から滅びたいと言ってる奴は敢えて生かす……か。なるほど、中々悪逆非道な行いだな。



 頭の中では疑問が浮かんでいたものの、それを一切態度に出さずにユーリはランベルトを労う。


 もちろんランベルトとしては人を殺すとユーリの評価に傷をつけてしまうので、できる限り無傷のまま捕らえようと心がけただけだった。



「良くやってくれた、ランベルト。さすがは眼鏡大臣だな」

「光栄にございます。しかし、少し問題もございます。他国の情報収集等も行っていた闇影省が裏切っていたとなると、これまでの情報も信じられないものになります」



 ランベルトが口を噛み締める。

 情報はこと戦においては最も重要になるものだ。

 当然ながら他国もそれを念頭において、間者を至る所に送り込み、情報収集に励んでいる。


 それがゼロの状態になるのだ。

 もちろん全てが全て、闇影省の偽報とは限らないが、信頼できなくなることには変わりない。


 しかし、それを聞いてユーリは笑い飛ばしていた。



「はははっ、信頼できない百の情報より、信頼できる一の情報だ。これからはお前(・・)が情報を集めるんだ」



 碌に休む暇がないほどにランベルトの仕事を増やしていく。

 部下を働き詰めにさせることも悪人たら自分の仕事だった。


 ただ、ランベルトの方はユーリから『信頼できる』と言われて、思わず感涙してしまう。



「かしこまりました。ユーリ王子のためにも、私が確実な情報を仕入れてみせます!」

「頼んだぞ。一応、眼鏡省(仮)に孤児院の子供たちも加えたので、有効に使うと良い」



 ――どうせ役にも立たないだろう。



 そんな考えでランベルトに預けたのだが、この孤児たちが将来、最高の諜報員になるとはこの時のユーリは思いもしなかった。

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