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次は悪役になってやる!〜なのに勘違いされてどんな行動も賞賛されてしまう件〜  作者: 空野進
1.3.王国の英雄と影の悪人

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16.反乱

 それから何事もなくパーティーは進んでいった。

 いや、何事もなかったというのは言葉のあやだろう。


 いつも通りに進んだ、というのが正しい言い方かもしれない。

 その理由はパーティーの手伝いをしているミーアの存在にあった。



 ガシャーン!!



「す、すみませーん!」



 遠くから何かが割れる音とミーアの悲愴な声が聞こえてくる。

 ただ、それを聞くと逆にユーリは落ち着くことができた。



 ――うん、いつも通りだな。



 ただこの後、ミーアはランベルトからお説教を受けることになるだろう。



『ユーリ王子に恥をかかせないでください!』


 とか


『もっとユーリ王子の専属メイドである自覚を持ってください!』


 とか



 聞き慣れた声が聞こえてくるのも予想が付く。



 ――むしろ今のままのミーアの方が俺の専属メイドらしいのだけどな。



 ただ、悪を志すのは、どうしてもランベルトは気に入らないようだった。



 ――むしろ俺の部下なら、お前こそ悪に染まれ!



 そう言いたいユーリだが、ランベルトにその言葉を聞いてもらえるはずもない。

 そうなるとここはミーアに犠牲になってもらい、ランベルトの動きを止めてもらうのが良いだろう。



 ――面倒なことを部下に押しつけるのも悪役としての俺の役目だよな。



 思わず笑みがこぼれるユーリ。

 しかし、それとは別に舌打ちのようなものが聞こえてくる。







 アブラヒムはパーティー会場内にいて、ミーアの失態を見て、唇を噛みしめていた。



 ――実際に見るまで信じられませんでしたが、本当に毒を的確に見抜いているのですね。しかも、今怒られているのはおそらく、(われわれ)にも気づかれるからもっとわからないようにやりなさい。って事でしょうね。やはり、英雄殿。しかし、(われわれ)には(われわれ)の戦い方があると言うことを教えて差し上げましょう。



 にやり微笑むアブラヒム。

 今の状態で直接ユーリを狙うのは難しい。

 それならばまずは周りの戦力から削っていくべきだろう。



 ユーリの護衛として力を発揮するミーア。

 ユーリの知謀の一端を担うランベルト。



 ――彼らは後回しにして、まず狙うべきはルミでしょうね。



 水尚省の、基本的に書類を扱っている少女。

 策謀や暗殺等の類いは専門外のはず。



 一番簡単に狙える相手。



 そのはずだったのだが……。



 アブラヒムはパーティー会場内でルミの姿を探す。

 ただ、彼女は会場のどこにも居なかった。



 ――まさか、ルミが一番初めに狙われると思って、この会場に来させなかったのでしょうか?



 相手がユーリならそのくらいやりかねない、とアブラヒムは苦悶の表情を浮かべる。


 もちろんユーリがそこまで考えているはずもなく、ルミはしっかりパーティー会場内に来ているのだが、彼女はユーリが悪行をしないか見張るために変装をし、ひっそりと隠れていた。



 まさか、ただの書類を担当しているルミが変装しているとは、アブラヒムも思っていなかった。

 そして、ルミもまさか自分が狙われているとは思っていなかった。


 一年間、悪行らしい悪行はしてこなかった(と周りの人間に思われている)ユーリ。



 ――でも、今までのは準備期間のはず。



 ユーリ自身を周りに信じ込ませて、そこからとんでもない悪いことを企んでいる。

 そう思っていたルミは今日もユーリのことを見張っていた。


 ただ、変装といっても深々と帽子を被って、大きめの眼鏡を付けているだけ。

 彼女がルミだということを知っていると単に微笑ましい光景にしか見えないので、周りの人からはユーリに憧れを抱いている期待の新人、くらいにしか思われていなかった。



 アブラヒムもそのことは耳に入れていたのだが、まさかユーリの部下がそんなことをするはずない、という思い込みからすっかり目が曇っていた。







 知らず知らずにアブラヒムの企てを全て回避し、パーティーでの平和を勝ち取っていたユーリ。

 そのまま平穏無事に終わるかと思われた。

 そのとき、兵士が慌ててパーティー会場に入ってくる。



「何事ですか!? 今日はユーリ王子の生誕パーティーをすると伝えてあったはずですよ!」



 ランベルトが兵に対して叱責する。

 彼からしたら自分の尊敬するユーリのパーティーを妨害された気分になったからだ。


 しかし、兵の方もただ事ではない様子だった。



「何かあったのか!」



 ユーリが直接詳細を聞きに行く。



「はっ、ユーリ王子。実は……」



 兵士がユーリに対して小声で伝えてくる。


 どうやら全国で一斉に反乱が起きたようだ。

 理由は王国の飢饉に対して、とのことらしいが、それをユーリの隣で聞いていたランベルトは首を傾げていた。



 ――おかしいですね。ユーリ王子のおかげで飢饉の可能性は全て潰したはず。定期的に帝国から食料も入荷できますし、まだ国内全ては賄えないにしても、食糧の自給率は大幅に上がっている。この状態で反乱が起こるはずないのですが……。



 ランベルトは眼鏡を持ちあげて、状況を考える。

 そして、出した結論は。



 ――誰かが扇動しているのかもしれません。それならば、その扇動を仕掛けた人物を割り出せば、後ろに控えている黒幕の姿が見えてくるかもしれませんね。おそらくユーリ王子も同じような指示をされるはずです。



 ランベルトの眼鏡が光り、その視線がユーリを捕らえる。




 このランベルトの予想はおおよそ当たっていた。

 アブラヒムが事前に王国内の至る所に仕掛けていた国に内乱を仕掛けるための陽動部隊。

 闇影省直轄の部隊なので、その仕事ぶりは文句の付けようがない。

 本来なら徹底した大飢饉から誘導で、参加者が多数になり、王国を脅かす一大勢力になる予定だった。


 しかし、飢饉は起きず、大規模な反乱までは起こせなかった。

 それでも反乱の対応でユーリの評判を下げ、失墜させることもできる。

 だからこそ、今、ユーリの反応が見られるこのパーティー時に報告が届くように調整して、報告させた。


 影で情報を操っている闇影省の長だからこそできること。


 ただ、これ自体は簡単に制圧されるだろう。

 あとはユーリの反応次第で……。



 アブラヒムの視線もユーリの方を向いていた。




 ルミもその視線はユーリの方に向いていた。

 それはもちろんいつもの通り、ユーリが何か悪いことをしてくるのではないか、という疑いから来ているものだった。


 そんな三者三様の思いで視線を向けられていたユーリ当人は密かに心の中でほくそ笑んでいた。



 ――ふふふっ、反乱か。俺に歯向かうなんて馬鹿なやつだ。ここは悪役らしく二度と逆らうやつが出ないように容赦なく潰してやる。



 ルミの予想通り、相変わらず悪い考えをしていたユーリ。

 ついでに、その非道な行為の責任をランベルトに被せようと考えてみた。


 先ほど、大臣の位を与えたところだ。

 今だとそう簡単に断れないだろう。



「ランベルト! 全戦力を持って殲滅しろ! もちろん一人残さず探し出してな」

「はっ、かしこまりました」



 あまりにもあっさりとランベルトは承諾してくれる。そして頭を下げると、すぐに会場から外へと出て行った。


 その声を聞いて、ルミは悪い予感が当たったと青ざめていた。



 ――反乱に加わった人を虐殺しようなんて、ユーリ様はとんでもないことを。ぼ、ぼくが止めないと!



 ルミは慌てて、ランベルトの後を追いかける。

 聡明なランベルトならきっとわかってくれるはずだと信じて……。







「えっ? ユーリ様の殲滅命令をすぐに取り消してくれ?」

「うん、だっておかしいでしょ? 確かに反乱は許されざる行為だけど、だからって全員殺しちゃうのは悪逆非道すぎるよ……」



 ルミが必死に説明しているとランベルトが急に笑い出していた。



「はははっ、ユーリ様がそんなことするはずないじゃないですか」

「で、でも、今さっき、ランベルトが直々に指令を受けてたよね?」

「あぁ、ルミはあの命令をそのまま受け取ってしまったのですね」

「そのまま……? 違う意味があったの?」

「えぇ、あれはこう仰っていたのですよ。『(倉庫内に蓄えておいたポテト)全戦力を持って(飢饉の理由)を殲滅しろ! もちろん(今回の行動を扇動したやつは)一人残さず探し出してな』ということです。ユーリ様のお人柄を考えますとこれ以外に考えられません」



 自信たっぷりに言うランベルト。

 もちろんその答えは間違っている。


 ただ、あまりにも自信ありげに眼鏡を持ちあげながら言うものだから、ルミも本当はそう言う意味が隠されていたのでは、と思えてしまう。



 ――た、確かにそれだと国のためを思って行動してくれているよね。英雄と言われてもおかしくないくらいに。



 でも、果たしてユーリはランベルトが言うような命令を出していたのだろうか?

 さすがにそこがわからないので、一概に善人とは言えずにモヤモヤとした気持ちを抱いていたルミだった。


 しかし、ランベルトは自分が思っていたとおり、いやここまで見越してポテトの買いだめをしていたユーリに尊敬の念を抱いていた。




 ◇




 会場内に残っていたアブラヒムは心の中でほくそ笑んでいた。

 もちろん闇影省のトップだけあって、その表情は平常通りだったが。



 ――ふふふっ、殲滅命令ですか。確かに王国に反するやつらは生かしておく理由がありませんもんね。ですが、それをしてしまっては英雄としての称賛は瞬く間に批判へと変わってしまいますよ。



 そんなアブラヒムの側に一人、近づいていく男の姿があった。



「アブラヒム様、いかがしましたか?」

「あぁ、すぐに取りかかってもらいたい仕事がある」

「なんでしょうか?」

「ユーリ王子は反乱軍に非道な行いをした英雄にあるまじき人物である、と」

「かしこまりました。すぐに取りかかります」



 周りの誰にも聞こえないようにほとんど口も動かさずに交わされたその言葉。



 もし、言葉通りに命令が実行されていたら、ユーリは悪徳王子という名を得ていただろう。

 それはくしくも本人が望んでいた称号だったのだが。



 こうして勘違いが新たな勘違いを生んで、結果的に本人の意図しない方向に進んでいき、知らず知らずのうちに、また称賛されることになってしまうのだが、ユーリ本人は、



 ――今回は特に悪逆非道な行動ができたな。



 と、嬉しそうにしていた。

お待たせしてしまい申し訳ありません。

昼が忙しくて、最終の見直しまで間に合いませんでした。(終わったのが19時40分。いつもよりチェックの時間も短くて、誤字等が残ったままかもしれません。気づいたタイミングで修正させていただきます)

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