目下のところ準備は十分。
このファンタジー世界では当然ながら戦闘系のエキスパートが存在している。
冒険者や修行者として己の技能を磨き続け、その実力を世界に認められた人物、『拳聖』グラドナはその一人である。
彼の名が世界に轟いたのは今から五十年以上前のことになる。
魔界から現れる魔物は地域によって傾向があり、冒険者達はそれらに対応して魔物狩りを生業としている。
だが百年に一度あるかないかの頻度で強力な魔物の存在が確認されることがある。
その存在は他の種族とは別格、冒険者達からは恐れと共に名前を与えられている。
いわゆるネームドだったりユニーク系と呼ばれるレアモンスターと言われる存在だ。
その魔物が人間界に現れた時に引き起こされる損害はまさに天災、村の壊滅は当たり前でその侵攻を阻止するために国が軍を挙げることもある。
その時に現れたのはオーガのユニーク、『破壊のガラン』。
元々屈強な体を誇り高い戦闘能力を持つオーガ種の変異種であり、特出すべきはその強固な体であった。
あらゆる武器が通じない、それどころかガランに攻撃をする、攻撃を受けるなどした武器は尽くが破壊されたのだ。
そんなガランをふらりと現れたグラドナは単騎で、そして素手で撃破し歴史にその名を刻み込んだのだ。
グラドナが撃破したユニーク級はガランに留まらない。
世界を転々とし、十七もの天災をその身一つで打ち破ったのである。
そしておよそ十年程前にグラドナは現役を引退、旅を終えた。
現在では僻地で弟子を取り、静かに余生が終わるのを待っている。
その名は今でも世界に知れ渡っており、彼を目指そうとする冒険者は後を絶たず、生きる伝説の人物なのである。
「そんなグラドナがこちらだ」
エクドイクが屋敷に連れてきたのは鎖に雁字搦めにされ地面に転がされている一人のお爺ちゃんである。
「ぐっすん」
「伝説の人になんてことをっ!?」
イリアスあたりが凄い驚きを見せている。
武人としてグラドナのことは良く知っているらしいのだがその人物がまさかこんな登場をするとは思わなかったのだろう。
「既に何日か前からガーネに着いていたらしいのだがな、酒場の裏にあるゴミ捨て場で寝ていたのを捕まえてきた」
「老体への扱い酷くね?」
「酒が抜けず歩けないと駄々を言う奴への当然の処置だ」
「パーシュロとつるむだけあって酷い、ぐっすん」
とグラドナはどうやったのか手足を使わずに巻き戻しをするかのように起き上がる。
そして鋼鉄の鎖をまるで紙のように引きちぎって見せた。
現れた体は確かに過去に武道をやっていた者のそれだが、やはり年齢相応の衰えを感じる物だ。
一体どういう原理を使ったのか、ファンタジー世界と言うだけでも理解に苦しむのに伝説級ともなれば深く考えるだけ無駄なのかもしれない。
グラドナはまずこちらに近寄ってきた。
「それで、お前さんがうちの馬鹿弟子の始末を付けてくれたウルフェかい? 黒狼族と聞いたのに耳も尻尾も人と同じじゃねーの?」
「どう見ても違うだろ、達人なら一目でわかれよ」
「あらら、違ったか。この中じゃ一番異質に感じたのになー」
「あ、あの、ウルフェです」
名乗り出たウルフェの前に歩み寄り頭からつま先までを観察するグラドナ。
「ふむ、それじゃウルフェ、一撃打ってみ。全力でな」
そういって右手を上げてここに打って来いと指示してくる。
ウルフェはこちらをチラと見る、頷いておく。
「では、いきます!」
ガントレットに魔力を集中し炸裂させた推進力を込めた渾身の右拳がグラドナの右手に命中する。
同時に全体重を乗せて踏み込んでいたはずのウルフェが宙を舞っていた。
「――ッ!?」
ウルフェはすかさず脚部の魔力放出を行い、距離を取って着地する。
この世界の猛者達の打ち合いで発生するような衝撃はおろか、拳が命中した時の音すら響いていない。
「イリアス、今の見えたか?」
「ああ、見事な技だ。力を一切使っていない」
地球の世界で言う合気道に近いものだろうか、それにしても限度を超えているのだが。
「すっげ、咄嗟に投げちまったい。にしても面白い戦い方だ、誰に習った?」
「し、ししょーに」
そういってウルフェはこちらを見る、どうもししょーです。
「師匠のくせにロクに戦い方も教えてねぇの?」
「生憎人生の師匠だ、戦いはからっきしなんでな」
「じゃ思いつきか。発想は良いが荒削り、なんつー勿体無い。てか良くこれでパーシュロを倒せたもんだ、騙し討ちとか?」
「切り替えのクセを読ませただけだ」
「なるほど、優秀な目が横にあったわけだ納得。でも危なっかしいことしてんなー、こんなに幼い娘にパーシュロの相手は酷だろー」
さっきから気になるのだがこの拳聖フランク過ぎじゃね?
一応見た目八十のお爺ちゃんなんだけどな。
「それでウルフェ、別にお前さんを鍛えてやるのは良い。でもここにいる皆と別れたくはないだろ?」
「は、はい」
「つまりだ、この老体にこっちに住んで面倒を見ろってことだな? 宿に酒と飯は出るよな? 金なぞ欠片もないからな?」
「……その辺の費用はもちろんこっちで面倒みる」
「いやっほー!」
諸手を挙げて喜ぶグラドナ、拳聖なんだよな、弟子を取ってる伝説級の人間なんだよな?
戦い以外ダメ人間な気しかしないんだが、人選ミスったか?
「ガーネに居座ってウルフェの面倒を見てもらえるのはありがたいが、元居た場所は大丈夫なのか?」
「問題ねー問題ねー、パーシュロの馬鹿が他の弟子ほとんど殺しちまったから。そりゃ後継者枠は勝手に競ってくれって言ったけどさ、誰もいなくなっちまったら誰がわしの面倒みるんだい」
「人道とかは教えなかったんだな」
「血に飢えた戦闘狂が人の道なんて教えちゃダメっしょ、あーそういう意味じゃお前さんは良い師匠だ。パーシュロ預けてりゃ丁度良かったろーに」
心のどこかでグラドナの修行をつけてもらうウルフェが、こちらのことよりもグラドナを尊敬するのではと危惧していたのだが……ウルフェの顔が分かりやすく『ししょーがいちばんです』と言っている。
ありがとう、だけどコレと比較されるのは何か虚しい。
「そうそう、パーシュロの件は迷惑掛けた。才能はあったんだがな、気紛れ狂人過ぎて心と実力が伴わなかった。わしが実力上げすぎたってのが悪かった。最期については鎖男から聞いた」
「エクドイクだっ!」
「まだいたの? 大体なにさこの変な鎖」
グラドナは肩に残っていたちぎれた鎖を摘み上げ魔力を通す。
そしてすぐに自在に操り始めた。
「おー、おもしれー。これ弟子の修行に欲しいな、ちょーだい」
「ふざけるな、この鎖は我が血肉を与えた分身も同然、容易く他人に分け与えるものではないわ! ましてや知らぬ奴に貸し出して汚すなど言語道断だ!」
「えっ……」
ウルフェが凄い困った顔をしている。
ウルフェはエクドイクから鎖を与えられている、ついでにイリアスに貸して壊した経験もある。
「エ、エクドイク、その……ウルフェは……くさりを……ごめんなさい」
「いや、お前は良い、気にするな。お前の様な向上心ある奴には相応しい、そうだろラクラ=サルフ!」
「このタイミングで振らないでくださいっ」
エクドイクも自分が見込んだ者にはとことん甘い。
まあグラドナやラクラ相手には相応の態度を取ってはいるのだが。
「とりあえずこの娘を鍛えるだけで良いってんなら罪滅ぼしにゃ容易い容易い、むしろやりがいを感じるってもんだ」
「一応不安だから俺も時折指南しに様子を見に来よう」
そんなわけでウルフェには新たに『拳聖』グラドナ、そしてエクドイクと言う師匠が二人ほど増えた。
イリアスもグラドナならば安心して任せられると言っていたが、今までの会話を見て言っているのならば大した奴だ。
ちなみに今後グラドナとラクラが結託し、ダメな大人チームが結成されるのだがその詳細は基本語らないことにする。
ウルフェをグラドナ達に預け、こちらはこちらでガーネの牢獄にてエクドイクの土産物を前にしている。
傍にはイリアスとミクス、そしてラクラに金の魔王だ。
「尚書様、こんな物を揃えさせたのですか?」
「ああ、間近で見るためにラクラの結界を借りたい」
牢獄に並んでいるのはエクドイク製の鎖に繋がれた魔物達だ。
ガーネにメジス、ターイズに隣接している魔界で生まれたとされる魔物達。
オーク、下位悪魔、ワイバーン……それぞれがその土地にのみ見られる種類だ。
言うまでも無く『緋の魔王』、『紫の魔王』、『碧の魔王』が生み出した魔界から生まれた魔物達である。
さらにその先にはガーネとメジスの隣国であるクアマと言う国に隣したクアマ魔界、『蒼の魔王』が生み出した魔界産の魔物であるスケルトンも鎖に縛られて投獄されている。
最も難易度の高いターイズ魔界への侵入ルートは主に二つ、一つはターイズから向かい『黒魔王殺しの山』を突破すると言う現時点では不可能なルート。
もう一つはガーネ魔界側からの迂回ルートである。
これも魔界を経由するだけあってその危険性はかなり高い。
エクドイクの様な魔界を拠点としていた人物でなければ成し遂げられない依頼だっただろう。
これらの魔物を収集した理由は言うまでも無く情報を得るためだ。
現段階では他の魔王との接触は不可能、ならば過去に魔王達が産み落とした物を精査するしかないのである。
一応メジスに問い合わせをして『蒼の魔王』以外の関連資料が無いかと確認を取っているのだがそちらはなんとも言えない状況。
ポンと第三者に歴史的に守ってきた資料を開示するのは難しいのだ、そちらの交渉材料はもう少し魔王達の動きが把握できてからだろう。
魔物達は絶えず唸っている、こちらを本能的に敵と認識し攻撃を行おうとしているのだ。
エクドイクには意思疎通が取れそうな魔物の捕獲は控えてもらった。
今回知るべきなのはそちら側の魔物ではないからだ。
「しかしこんなことをして意味はあるのかの?」
「それを今から調べる。よし、牢を開けるぞ」
オークのいる牢を開け中に入ると縛られていたオークはさらに暴れ出す。
ラクラに頼みオークの目前に結界を張ってもらい、ガラス板一枚の先に居るかのような状態にしさらに距離をつめる。
コレだけ近づくのだ、オークは首だけでも動かし結界の上から攻撃をしてくる。
無論イリアスの剣さえ凌げる結界だ、オークが万全だろうとこれは突破できない。
だがその迫力はヒシヒシと伝わって来る、動物園で見る肉食動物とは比較にならない程の恐ろしさだ。
動物園の生き物はそこまで敵意むき出しと言うわけでもないからな。
「活きが良いもんだ、まあ見せてもらうか」
結界に額をつけてジッとオークを見つめる、向こうは暴れることを止めようとしない。
こちらの動作に不信感を覚える程の知性がないのだ、それほどまでに本能的な生き物と言うことでもある。
オークの上位種ともなれば独自の言語を使えるらしいのだが今回捕まえてもらった魔物はどれも下位種だ。
「……よしよし、良い子だ。いや良くはないな」
オークの眼を覗き込み、唸り声を聞き、その挙動を肌で感じる。
初めに抱いていた恐怖は好奇心によって既に麻痺している。
少しずつだが自分の在り方が動いていくのが分かる。
「――よし、次だ」
オークの観察を終え、下位悪魔の牢屋へと入る。
同様の手順で結界を張ってもらい肉薄する距離での観察を繰り返す。
続いてワイバーン、スケルトン、一周したら再びオークへ。
繰り返し繰り返し魔物達を見つめる作業を行い続ける、余計な話をせず、淡々と黙々と。
「の、のう御主、少し休憩をせぬか?」
その様子を見かねてか、はたまた飽きただけなのか、金の魔王が声を掛けてくる。
「いや、まだだ、まだなんだ。足りてない、言葉が通じない相手を理解するにはもっと観察がいる」
「……だ、大丈夫かの?」
イリアスとミクスがこちらを見る目も多少不安を抱えている。
要するに今はそういう目になっているのだろう。
悪意ある人間の在り方に染まることは多々あったがこういうのは初めての試みでまだ慣れていない、もう少し時間が掛かるだろう。
夜までひたすらに同じ作業を繰り返し、集中力と体力の限界を以て初日の観察を終えた。
夜は屋敷にてグラドナと酒を飲むことになった。
ウルフェは初日からなかなかハードな特訓をしたのか早々に眠ったようだ。
「実際に修行をさせてみてどうだった、ウルフェは」
「ある意味つまらん弟子になりそー、飲み込みも成長も早すぎて苦労がほとんどない。何あれ、ユグラの生まれ変わりかなんか?」
「以前もバンさん――ある元冒険者も勇者に匹敵する魔力だとか言う話をしていたんだが、ユグラが活躍をしたのは百年以上昔の話だよな? どうしてそう比較ができるんだ?」
「なんだお前さん、聡いように見えて世間知らずだなー。クアマにある『勇者の指標』も知らんの?」
「知らん、イリアス教えてくれ」
「わしに聞いてくれんの?」
『勇者の指標』、かつて『蒼の魔王』を滅ぼした際にクアマにはユグラを称える石碑が作られた。
その石碑にユグラがある魔法を仕掛けた、それは後世にこの地を訪れた者達に過去の光景を見せるというものだ。
それは勇者ユグラがクアマ魔界で戦った記録、即ち世界を救った勇者の戦いを体験できるという物だ。
腕に覚えのある物、戦いに生きる者は一度はクアマを訪れ勇者の強さをその肌で感じていくのだとか。
もっともその大半がその差に史上最強を目指そうという夢を諦めているとのこと。
「イリアスもクアマには行ったことがあるのか?」
「いや、私はターイズを出たことがない」
「私はありますよご友人、『勇者の指標』も体験済みですっ!」
「ユグラの姿が見れるのか?」
「はい、そういえばユグラもご友人と同じく黒髪の殿方でしたね」
ユグラの生前の姿を見れるのか、この件が済んだら一度はクアマを訪れてみたいものだ。
「てゆーかバンっていったか? そういやあいつターイズで商人やってたな」
「バンさんと知り合いなのか?」
「知り合いも何も昔は同じ冒険者のパーティの一員だったんだぜ?」
「なるほど、そういえばそんな話を聞いたことがあったな」
しかし『拳聖』グラドナと同じパーティだったとは、バンさんも意外と有名人なのではないだろうか。
「そうそう、なんであの娘はあの年まであの才能を放置させられていた? まともな奴なら間違いなく捨て置かんだろ」
「ウルフェの境遇は少し特殊でな」
グラドナにウルフェの村の話をする。
かつて『黒の魔王』から逃れ辺境の地に姿を隠した黒狼族のこと、その中で突如生まれたアルビノであるウルフェのこと、そのウルフェが迫害されて育った過程、今に至るまで。
「なんつー田舎者の発想だ、狭い世界では多少の変化にも過敏になるにしても酷い話だ。ぐっすん」
グラドナは鼻を啜りながら酒を飲む、戦いに明け暮れた戦闘狂にもウルフェの環境の酷さは沁みたのだろう。
「だが納得、別に甘やかす気は無いがもちっと責任持って鍛えちゃる。精神面は知らんから任せる」
「ああ、パーシュロの師匠って時点で期待してないからな」
「『拳聖』つっても何でもできると思うな、むしろ何かに特化してる奴ほど他はダメなんだ」
「それは知ってる」
こちとら戦闘面は壊滅的だからな、役割分担の重要性は熟知している。
天は二物を与えずと言う、それは別に才能が限られていると言うことだけではない。
己が持つ才能を伸ばすにあたってどこまで人生と言うリソースを割り当てられるのかと言う話だ。
グラドナは格闘術にだけ全てを注ぎ込み、伝説となった。
イリアスの強さも人生の大半を剣に捧げた故の見返りだ。
ラクラも――まあ自主的に自堕落な奴は置いておこう。
「イリアスとか言ったな嬢ちゃん、お前さんもなかなかにできるようだが誰かに指南受けたん?」
「はい、ラグドー卿――サルベット=ラグドーにより剣の指南を受けたことがあります」
「あーサルベかー納得、道理で堅苦しい感じだと思ったわー」
「ラグドー卿も知っているんだな」
「知っているも何も、若い頃アイツと殺しあったことあるもん。騎士なんてやって国に篭ってなきゃわしと同じ位には有名になれたよあの爺」
ラグドー卿の強さは知っていたが『拳聖』と同格か、殺しあったって物騒な話だなおい。
しかしラグドー卿が世界の伝説級で良かった、これ以上がポンポンいられてはキャパシティが悲鳴を上げるところだ。
「サルベの指南を受けたにしてはイマイチじゃね?」
「指南を受けたのは一年程度でした、後は我流です」
「そりゃすげぇ、今度サルベに本格的に鍛錬つけてもらえよ、今の十倍は強くなれんぞ?」
今の十倍……頭の中でイリアスが見た目も化物になっている光景が浮かんでしまった。
そんなイリアスに掴みかかられたら……ひぃ。
「しかしラグドー卿もお忙しい身ですから……」
「かぁー騎士ってのはお堅いねぇ、もっと強さに貪欲にならねーと大成しねぇよ?」
「は、はあ……」
伝説級の言葉ともなれば重さを感じる。
グラドナも生まれつき最強と言うわけでは無かっただろう、上り詰めるまでの道のりは言葉にできないほどに苛烈だったに違いない。
「それはそうとお前さん、昼に会った奴と同一人物だよな?」
「なんだそりゃ、目でも見えないのか?」
「見えるさ、だから聞いてるんだろ。昼間とは別人に見えるわ」
流石と言うべきか、こちらがわかりやすく変化しているだけなのか。
ラクラ達の口数が少ないということはそういうことなのだろう。
「……あの後魔物をずっと観察してたからな、そのせいだろ」
「はぁ、なるほどな。それがお前さんの技か、気持ち悪っ」
「ほっといてくれ、必要なことなんだ」
「そもそも魔物ってどこにいるん、お前さんこの国から出てないだろうに」
「ガーネ城の牢に置いてある、国王の協力を得てな」
「ガーネ国王ねぇ……そいつ人間じゃないな?」
「根拠は?」
「お前さん達から魔界の臭いがする、昼よりも濃い」
――隠し事ができる相手ではない、ここは素直に話すべきか……話すべきだろう。
こちらの事情を説明する、異世界人であることも含めて。
グラドナは眉を動かす程度で対して驚きもせずに酒と一緒に事情を飲み込んで行く。
「はぁー人が年老いてからそういう面白展開になるか普通? 若けりゃ今にでも魔王に挑んでみたかったんだけどなー」
「金の魔王は間違いなくあんたより弱いから止めてやってくれ」
「つかお前さん勇者と同じ出身の癖にそんなに貧弱なん? 聞いた話で一番ウケるー!」
「この爺さん……」
「だが何故わしに協力を願わない、ただの老体でないことは証明しただろう」
「――戦いで解決する気がないからな、それだけだ」
「……本気の目か、そんなことできんの?」
「ああ、色々掴めて来たところだ」
グラドナは酒を飲みながらこちらの目を覗き込む、彼もまたマリトやエウパロ法王の様な偉人の一人なのだ、喋ってなければの話だが。
やがてグラドナは酒臭い大きな溜息を吐く。
「せめて後三十年早く来てくれりゃお前さんの仲間に混ぜてもらったんだがねぇ……老体は老体らしく若者でも育てるとすっかねい」
「ああ、それだけでも助かる」
「だが老いぼれから一つ忠告しちゃる、お前さんが壊れたらほとんどが瓦解するからな。お前さんの身も心もお前さんだけの物と思うなよ?」
「肝に銘じておくさ」
それから数日、魔物を見続ける日々を繰り返し準備は整いつつある。
既に犯人については確信に近いものがある、次はどう解決するかだ。




