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異世界でも無難に生きたい症候群【完結】  作者: 安泰
無難編

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373/382

ゆえにまとめる。

※ちょっと長いです(短い時の四倍くらいあります)。時間のある時にどうぞ。

 ◇


 黒の魔王との戦いが終わり、半年が経過した。各国は今もまだ戦後の処理に追われている。兵糧などの物資を大量に持ち出し、消費したことに対する補填準備。怪我人や死者、避難民の対応。さらには今後について国々の意見の擦り寄せを行わなければならない。

 皆で協力してハッピーエンド。めでたしめでたしで済まないのが、世界に生きる者の宿命なのだ。

 もっとも、誰かさんはいつもよりも遅い時間にゆったりと欠伸をしながら起きることが許されているわけなのだが。


「ふぁ……。やっぱり慣れないな……」


 前に比べ倍以上の広さとなった部屋の中を軽く見渡す。これが日本なら家賃いくら位なんだろうかと無駄なことを考えつつ、軽いストレッチ。

 ターイズに帰って真っ先に行われたのが引っ越しだった。マリト曰く、今後『俺』のところには各国のお偉方を含め、多くの人が顔を出すことになるとのこと。

 そんな人達をもてなす際に、民家であるイリアス宅は小さ過ぎる。かといって毎回ターイズ城を会談場所に選ぼうとしても、どこぞのガーネ国王のように周りに合わせない者も出てくる。

 イリアスも最初は悩んでいる顔をしていたが、ターイズに帰る間際にエウパロ法王やタルマ王が『また今度、近い内挨拶に伺わせてもらおう』と言ってきたことで引っ越しを決意してくれた。

 なおこの一件で一番嬉しそうだったのは、遊びに行こうとする度に必死なイリアスに頭を下げられていたマリトである。

 そんなわけで現在はイリアスが昔住んでいた屋敷に住んでいる。イリアスが両親を失ってから、引き払っていた屋敷なのだが、ラグドー隊のお爺ちゃんズが根回しをして、いつでも戻ってこられるように管理していてくれたらしい。

 イリアスは彼らのサプライズに感動していたが、『俺』はその事情をとっくに知っていたのでカラ爺と互いにサムズアップしていた。


「ヘイ、アルジサマ!オハヨーゴザイマス!」


 主人の起床を待ち構えていたのか、扉を勢いよく開けて現れる角の生えた執事服の少年。声こそ聞き慣れているが、未だにこの姿には慣れていない。

 そう、こいつはクトウ。木刀に憑依させていた悪魔である。民家と違い、お屋敷ともなれば住む者達での交代制の家事当番だけでは管理が追いつかない。なので執事やメイドを雇う流れになったのだが、赤の他人に『俺』の身の回りの世話をさせるくらいならと『紫』が名乗りを上げてきたのだ。

 当然周りは猛反対。長時間の論争の末、妥協案となったのがクトウを執事にすることだった。

 ぱっと見では人型にしてもらえたように見えるが、木刀の中にクトウのコアがあることには変わりない。木刀から腕や手を生やす要領で人体を構築できるようになった感じだ。

 なのでこうして元気な笑顔の少年の腰には、不釣り合いな木刀が携えられている。本人も移動の時不便だからと、長さを短くしたいと要望を出しているがそれはそれでこちらが困る。

 何より困るのはクトウの容姿だ。容姿についてはクトウを弄る『紫』が独断で決定していたのだが、どことなく『紫』と誰かさんの面影があるのである。

 外出する時は木刀の姿に戻すのだが、『紫』と出かける時はわざわざ随伴させるなど、中々に意識させようとしてくる。ミクスはそんな手があったかと感心していたが、なしよりのなしだからな?


「おはよう、クトウ。時間はまだ余裕あるよな?」

「ダイジョブデス!デモウルフェチャン、マタセテマス!」

「そうか。ならさっさと支度するか……」

「アルジサマ、アルイテタベルゴハン、ヨウイデキテマス!」

「おう、サンキューな」


 ただ容姿以外は本当に有能だ。家事全般高水準だし、屋敷の床下に潜んでいる悪魔達を使役することもでき、作業も早い。こちらの気苦労も労ってくれるし、色々と気が利く。

 まあ『紫』が近くにいる時は、保身のために気配を消しているところがちゃっかりしているのだが。

 どうせ着替えるのだからと、簡単な服装に着替えて外へと出る。クトウは施錠を済ませ、木刀の姿へと戻りこちらの定位置の腰へと収まる。

 外ではウルフェが待っており、ウルフェはこちらに気づくと手を振りながら近寄ってきた。


「ししょー、おはようございます!」

「そろそろ昼だけどな。まあおはよう、ウルフェ」

「また夜更ししていましたね?早寝早起きした方が捗るのに……」

「夜の方が集中できる人種もいるんだよ。そんじゃま、バンさんのところにいくか」

「はいっ!」


 ウルフェは現在ターイズの外で活動している。この屋敷にはウルフェの部屋も当然あるのだが、先の戦いの中、治療等で世話になったということで自発的に『碧』の下で働いているのだ。

 ガーネ、メジス、クアマ、それぞれに隣接する魔界の浄化作業が順調に進行しており、その過程で新たな建築物などを建てるために多くの木材が必要となっている。

 そこでとにかく馬鹿でかい森林に囲まれたターイズ魔界の木材を利用することとなり、ウルフェは日夜その木材を伐採、加工している。

 もっともウルフェは基本大樹をへし折ったりする方で、加工の方はアークリアルがやっているらしい。

 空いた土地で野菜やら果物やら育てているらしく、家庭菜園の嗜みがあるウルフェが呆れるくらいに凝り性なのだとか。

 おまけに『碧』が興味を示したらしく、最近では怪しい品種改良まで始めたそうな。魔界産の果物って人体的に大丈夫なのか、ちょっと気になるところ。


「うっかり勧めたことが悲劇を生まなきゃいいんだがな……。それで、そっちの仕事はそろそろ一区切りするころだろ?」

「はい、もう少ししたらノルマ終わります!また暫くししょーと一緒に暮らせます!」

「ノルマて、『碧』はいつでも帰って良いって言ってるんだろ?」

「それはそうですけど、『碧』さんはお給料の支払いも良いので!」


 恩返しではあるが、タダ働きというわけではない。対価に厳しい『碧』は働き者のウルフェにしっかりと給料を与えている。人間の扱う通貨は持ち合わせていないようだが、流石は魔王、価値のある宝石やらなんやらは大量に持っているようで。

 正直なところ、ウルフェは『俺』やイリアスよりも稼いでいる。規格外の能力を歩合制で発揮できるのだから、当然といえば当然である。

 食い扶持を稼いでいるのはもちろんのこと、最近ではバンさんのところにも通い、資金運用まで学んでいるそうだ。

 そして増やした資金の一部は落とし子達の保護や支援を行っているリティアル達に流しているとか。

 こうしている今も、世界のどこかで異質として扱われる落とし子が生まれている。そんな者達を少しでも早く見つけ出し、不遇な環境から守れるようにと行動しているのだ。

 好きなことをやれ、やりたいように生きろ、そう言った結果の末の行動がこれなのだ。本当すっかりと逞しくなって、ちょっと涙目にもなる。ラクラに爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。アイツの場合飲んでも効かないだろうけど。


「そういえば、サイラとゴッズ、婚約したそうだぞ」

「本当ですかっ!?」


 半年程度ではあるが、変化というものは確実に訪れている。

 ターイズではマリトとルコが正式に式を挙げ、ルコは王妃となった。もう少し反対派の動きやらあるものかと思っていたのだが、冷静に考えればマリトの用意周到さに勝てる貴族なんているわけなかったのである。

 その式を見て感動していたサイラとゴッズもなんかそのまま進展し、何日か前に報告を受けたのだ。


「後日『犬の骨』従業員総出で祝会をするから、ウルフェも誘っといてくれってさ」

「もちろん行きます!ご祝儀はずみます!」

「お、おう……」


 そしてルコが王妃となったことで、ターイズでの魔法研究は一時的に休止という形となり、ノラは一度クアマに戻って、バラストスや『紫』と一緒にデュヴレオリの再生の処置を進めている。

 先月にエクドイクからデュヴレオリのコアを無傷で摘出することに成功、現在は記憶を損壊させないまま元に戻す方法を確立させている段階らしい。

 なにぶん前例がない試みなので、必要以上に慎重に事を進めていることもあり、デュヴレオリの復活はまだ見通しがついていない。だがそんなデュヴレオリを想うノラの成長は目まぐるしく、想像よりは早く再会できるだろうと『紫』は言っていた。

 余談ではあるが、ノラはターイズに籍を置く優秀な人材なのだから護衛の者を付けなければならないと、バラストスのごねが通ってしまい、ケイールがその任に付けられた。クアマにあるバラストスの本拠地に連れて行かれた彼が無事に帰ってこれることを祈る。


「どこの国も変わってきていますね」

「そうだな……」


 セレンデは他国との国交がこれまでよりもオープンになってきている。過去の異世界人の風習に拘らず、今を生きる者達と足並みを合わせようとするヌーフサの働きだ。

 トリンではタルマ王がリティアルと手を組み落とし子の保護を率先して行っている。元々獣系の亜人の比率が多く差別意識の薄い国でもあり、リティアルに協力的な商人や貴族も多々いる。リティアル達の活動拠点としては最適な場なのだろう。

 その活動報告の中にはワシェクトの姿もあった。ムールシュトや落とし子ではなくても才能に秀でていたヒルメラのような人物の末路を目の当たりにしていた彼にとって、落とし子の未来は護るべきものと映ったのだろう。

 両大国とも他の国との交流を改善しようと、色々な試行錯誤を行っているが、全てが順風満帆に行くというわけではない。

 だがその国だけでは解決の難しい問題でも、共に寄り添う国の助けがあれば解決は時間の問題となる。

 国同士の国交を円満に進める働きはクアマ、いやゼノッタ王が最も積極的に働きかけている。

 彼には他の王のように難しい問題を解決できる能力はない。だが誰よりも共に解決しようとする意思を示す才能がある。自国の意地やプライドを尊重したい各国の王にとって、素直に頭を下げて協力を願い出てくれるゼノッタ王の存在はとても貴重なのだ。

 もっともその慣れ親しみやすさにも程度は必要だ。この前はガーネの大臣、ルドフェインさんが酒の席で引き抜かれそうだったと『金』が愚痴っていた。何事も程々にしてほしいものである。

 そんなガーネは『金』の力で相変わらず安定している。時折各国の王が新たな政策を検討する際の相談、もとい検証役も引き受けており、ゼノッタ王は特にその常連だ。


「ここにいたか同胞、ウルフェも久しいな」

「よぉ、兄弟!元気そうじゃねぇの!」

「あ、エクドイクさん!ハークドックも!」


 鎖の翼でふわりと飛んできたエクドイクが目の前に着地する。運んでいた小さな籠にはハークドックが収まっている。今更だがその翼でふわりと飛べるのって凄くない?


「久しぶりだな、二人共。先に待っていて良かったのに」

「『蒼』達は既に城で待っているぞ。遅刻しないように様子を見てきて欲しいとイリアスに頼まれてな。ついでにハークドックをバンのところに送り届けていたところだ」

「いやぁ、このままで良いかなと思ったんだがよ。マセッタやツドァリが着替えてこいって声を揃えて言うもんでなぁ……」

「相変わらずタクシーしてるな……。まあ時間には余裕があるんだ、歩こうか」


 歩きながら互いの近況報告を済ませる。エクドイクもハークドックも共にクアマ魔界で、ジェスタッフの元で活動している。特にハークドックはジェスタッフの跡を継ぐことになるからと、みっちりと政についての勉強もさせられている。


「ほんっと、鍬でも担いで畑を耕していた方がマシだぜ……」

「なら別の奴に託せば良いじゃないか」

「そうなんだけどよ。『エメラ』をいい国にするにゃ、ジェスタッフの兄貴の意志を正しく引き継いでもらわなきゃならねぇからな。託せるような奴を見つけるにしても、俺がしっかりと学ばねぇと無責任に投げ出すのと変わらねぇ。これについちゃ妥協なんてできねぇよ」


 国の名前もこの前ようやく発表され、他国からも正式に国として認められた。名前についてはジェスタッフに相談を受けて、それっぽい石言葉を考えながら提案させてもらった。

 元が魔界なため、ほとんど未開拓な状態の国ではあるのだが、そこは元の魔界の領主であった『蒼』とエクドイクが率先して協力している。

 各国も好意的に協力をしており、少し前にはユグラ教の支部も建ったそうな。そしてその支部を担当する大司教としてマセッタさんが選ばれた。元々出世するタイプだったし、エメラに居を構える連中との交流も最も深い立場だったので驚いてはいない。当人は唖然としていたが。

 そんなわけでハークドックは現エメラの代表と、その支部の大司教に挟まれながら日々勉強の日々を送っている。


「ハークドックはやると決めたことに対しては真摯に取り組むからな。多少の実りは遅くても、大丈夫だと信じているぞ」

「なぁ、エクドイク。それ微妙に褒めてなくね?つかそっちはそっちで色々大変だろ?」

「……ああ、まあ多少のもつれはあるな」


 多少どころではなく、結構な問題だったりする。今まで鈍感な奴だったが、完全覚醒の一件で色々と自分を省みることができたエクドイクは人として成長した。

 大人びたことで『蒼』との関係もより良くなった……のだが、それは『蒼』だけに留まっていなかった。

 真っ直ぐ向き合ってくれるだけの奴が、より優しく、気を利かせてくれるようになったのだ。他の者もエクドイクを強く意識することになるのは当然のこと。

 まー細かくは振り返らないが、ラブコメの修羅場である。メリーアやコミハがより一層積極的になり、一歩引いていたスマイトスもちょくちょくアピールしている始末。

 ベラードはエクドイクが多くの支持を得られることは良いことだと煽りまくるし、なんか新規参戦者とかも増えているとか。そういう意味では今一番近づきたくない国がエメラだったりする。


「メリーアの奴が魔族になるって言い出した時は、俺もビビッたからなぁ……」

「『蒼』は断ったが、今は金の魔王や紫の魔王と交渉している様子でな……。俺のために人をやめるというのは流石に困っていてな……」

「それお前が言えた義理じゃねぇよな」


 ちなみにハークドックの周りもそれなりに修羅場なのだが、こっちは二人共ハークドックを一人前にしたい気持ちで団結しているので比較的マシではある。


「そうなのだ……。同胞、何か良い助言を貰えないだろうか」

「人を恐怖の象徴にする奴に助け船を出すのはなぁ」

「それを言ってくれるな。同胞でなければ次の候補は肉だったのだぞ……」


 完全覚醒したら人肉に成り果てるのは嫌過ぎる。しかし下手な助け船は誰かに与することになりかねないので、できることなら関わりたくない。というか関わると自動的にこっち側の周りの動きが活発しかねない。『紫』とかノラのために真面目に手伝ってくれているんだから、変な気を起こさせてはいけないのだ。


「エクドイクさん。一人に拘らなければ良いんです!一人一人を大切にして、ちゃんと向き合ってくれれば、それで大丈夫です!」

「ウルフェ……」


 どうもエクドイクだけに向けられた言葉の気がしない。だがその意味は考えないことにする。じゃないと言葉がこちらの心に刺さりかねない。


「どうせ一人以外を切り捨てられないヘタレなのですから、悩むだけ無駄です!全部受け入れてください!」

「ウルフェ……?」


 あ、ちょっと刺さってる。痛い痛い。すみません、そのへんはもう少し時間とかをいただけないでしょうか。非常にご迷惑をお掛けしている自覚はあるんですよ。


「兄弟、辛そうだな」

「必要経費ってやつだ……」


 本当、サイラやゴッズ、ヨクスとリリサさんみたいにシンプルな恋人関係がどれほど凄いことか思い知らされる。


「そういやゴッズとサイラも結婚するんだっけ?」

「ああ。聞いていたのな。……も?」

「おう。この前ギリスタが顔を出してな。ヤステトが旦那になったって言ったぞ」

「……まじかー」


 人が見てないところでも進展と言うものはあるものだ。だがここまでトントンと進むのはマリトくらいだと思っていたのだが……。そういやギリスタって筋肉質な男が好きだったな。ギリスタが元々組んでいたパーシュロも口は悪かったが、面倒見は良かった。そういう意味では意外とお似合いなのだろうが……。

 よし、忘れよう。いや、ギリスタにご祝儀は渡すが、こういった話題からは離れよう。

 気持ちを切り替えつつ、バンさんの商館に到着する。目的は以前と同じく、ドレスコードにちなんだ服に着替えるためだ。

 いやね、服はバンさんから買っているんだけど、着付けとか上手くできないんですよ。なのでこちらに置かせてもらいつつ、着るのを手伝ってもらう形をとっているわけで。


「これはこれは、良くお似合いで」

「バンさん。前にも言われましたよね、それ」

「いえいえ。以前よりももっとお似合いですよ。なんと言いますか、以前よりも風格が出たと言いますか」

「――色々ありましたからね」


 中世の貴族を思わせるような格好。鏡で見る限りでは相変わらずしっくりこない。それでもこの世界にいた日々の分だけ馴染んできたということなのだろう。

 いずれはこっちの服が似合うと感じるようになるのだろうか。……いや、流石に庶民の格好の方が落ち着くよな……よな?


「そうですね。ですがこれからも色々困難があることでしょう。ですがご安心を。貴方には親友のことでとてもお世話になりましたからね。この御恩は必ずや返させていただきますよ」

「お世話になったのはお互い様ですけどね」

「はっはっは!これからも美味しいお話をお待ちしておりますよ!もちろん心躍る冒険なども期待していますからね!」

「後者は個人的に避けたいところですけどね……」


 着替えが済み、外へと向かう。通った先の部屋からエクドイクとハークドックの声が漏れていたが、もう少し掛かりそうだ。

 ハークドックだけが着替えるものと思っていたが、エクドイクもついでに着替えさせられているようだ。まあ祝の席に鎖をじゃらじゃらさせて出席はないよな。


「しくしく……」

「よしよし」

「よしよしですぞ」


 外では泣いているラクラの頭を、ウルフェとミクスが二人がかりで撫でていた。どんな光景だこれ。


「何やってんだ、お前達……」

「おや、ご友人!よくお似合い……で!」

「少し悩みやがったな?」

「いえいえ、ご友人と兄様が並ぶ光景を少しばかり想像しておりまして。非常に良きですぞ!眼福眼福!」

「尚書様ぁっ!聞いてくださいよぉ!」

「どうしたラクラ。またマーヤさんに叱られたのか」

「はいぃ……」


 同期で大司教にまで出世したマセッタさんとは違い、ラクラは相変わらずである。シンプルな仕事では十分な成果を出せるのだが、立場のある役職のお仕事というものは複雑であるものだ。

 ウッカ大司教やマーヤさんも将来的にはラクラを出世させたいと、ちょこちょこと新しい仕事を覚えさせようとしているのだが、本人の成長は非常に穏やかなものだ。

 もっともマーヤさんがラクラの仕事の不出来程度、そこまで叱るような人ではない。おそらく原因は他にある。


「どうせサイラやゴッズへの贈り物として、教会に寄付されていた珍しい酒をくすねたこととか、そのうえ自分の分も大量に確保していたことがバレたとか、そんなところだろ」

「まるで見ていたかのような!?」

「叱られて当然だっての」


 表情だけでそこまで読み解けるわけはなく、前日にマーヤさんと話していて、手を付けていない珍しいお酒があり、贈り物にしようかなと話していたからだ。

 もちろん先んじられた程度で怒るマーヤさんではない。あとはラクラの叱られっぷりからどれだけやらかしたのかを想定した結果である。ある意味では期待を裏切らない女と言えよう。

 しかしこのラクラ。先の戦いでそれなりの報酬を得ており、当面は好きにさせていたのだが、今ではすっかり金欠の日々である。

 金を人から借りようとしないことは偉いのだが、借りない理由が『返せないものは借りれない』という話である。返す努力を考えていないのはいかがなものか。


「うぅ……先月のお給料、もう使い込んでいてまともなものが買えないんですよぉ……」

「だったらこのあとの光景でも刺繍にしたハンカチでもプレゼントしとけ。多分泣いて喜ぶから」

「……?そんなもので良いのですか?」

「うん、ラクラ。きっとサイラ達凄く喜ぶ!」


 ラクラは自分の良さを自分で発揮できないし、その良さを理解していない者も発揮させられない。サイラならラクラの才能にも気付けるだろうし、まずは理解者から増やすところから始めなくては。

 聖職者を続けているラクラに、金儲けに繋がりそうな仕事を教えるのは気が引けるのだが、両立させられないこともない。一時期は失明直前になるまで働かせてしまったわけで、面倒を見てやると言ってやった以上は、聖職者をクビになってもやっていけるだけの知識と技術くらいは与えてやらねばなるまいて。


「ご友人はこのまま城へ向かうので?」

「いや。少しマーヤさんのところに寄るつもりだ」

「それは残念。久々に帰ってきて積もる話もあったのですが、また後ほどということで」

「ああ。もう暫くはターイズに滞在するんだろ?」


 ミクスは現在各国を転々としており、各国の復興度合いなどを直接目で見て確かめている。冒険者として各国を巡り養った土地勘を活かし、それぞれの国が見落としてしまっている点などを見つけ、マリトに報告している。

 各国の王に対してはターイズの王族として、魔王達には親しき友人として接することができるミクスならではの役割だ。

 本人も同じ場所に居続けることよりも、各地を回っていた方が性に合っているとのこと。


「はい!兄様にもゆっくりと休み、ついでに進展も狙えと言われておりますので!」

「……ソウカ、ホドホドニガンバレ」


 距離が置かれているからと安心するなかれ。人は遠ざけられるとかえって近づきたくなるもの。たまに戻ってくる時のアプローチの勢いは以前の比ではない。もっともこれはミクスに限った話ではないのだが。

 今のミクスの目は悪巧みを考えついたマリトに似ている。ひとまずこの数日は外出の予定を組もう。そうしよう。

 ウルフェだけを連れ、マーヤさんの教会へと向かう。ちょうどマーヤさんも出発の支度が整っていたようで、迎えの馬車を連れてきたカラ爺と話し込んでいた。

 カラ爺の鎧は以前にも見た式典用のピカピカした鎧で、マーヤさんの衣装もいつもより少しばかり豪華だ。


「あら坊や。相変わらず鼻が効くのね」

「元々カラ爺に誘われていましたよ」

「ウルフェちゃんもおかえり!ちょっと背が伸びたかしら?」

「はい!マーヤさんは肌ツヤ良くなりましたね!」

「そうなのよね。役得だったわぁ」


 アークリアル、マーヤさんやウッカ大司教など危篤状態にあった者は皆『碧』による治療で一命を取り留めた。ただ完璧主義の『碧』はついでと言わんばかりに彼らの肉体の悪いところを含め徹底して治療してくれたらしい。

 そこまで違いは分からないが、マーヤさん曰く十代の肌に戻ったとかで大喜びらしい。ウッカ大司教も体が柔らかくなったと、Y字ポーズをしていたのを思い出した。だからといってオーファローに全身を焼かれて重度の火傷を負ったことを役得というのはどうかと思う。


「いっそわしももう一度死にかけておれば、腰を治してもらえたかもしれんのう」

「勘弁してください」


 カラ爺はラグドー隊に復帰しており、まだ各隊に正式に配属されていない見習い騎士達の面倒を見ている。緋の魔王との戦いであれだけ死に掛けたのに、月日だけでここまで回復するのは流石というしかない。


「ふぉっふぉっふぉっ。ほれ、お前さん等もそろそろ馬車に乗らんか。積もる話は移動しながら話せば良かろうて」


 馬車に乗り込んで城へと向かう。ウルフェも久しぶりのターイズとあって、色々と積もる話があったようで、何割かはニールリャテスへの愚痴だったが、皆微笑ましく聞いていた。


「いつかはこんな日がくるかもとは思っていたけどねぇ……。ちょっと早すぎて気持ちが追いつかないわ」

「お前さんも異例の若さで大司教になったではないか」

「フィリアと一緒に得た功績を、私一人でもらっただけさね。あの子の面倒を見る上で少しでも返してやれていれば良いんだけれどね」

「マーヤさんには十分過ぎるほどに支えてもらっていると言っていましたよ。むしろこれからは返していくつもりだとも」


 こういうことは本人の口からは出にくいことだが、酔った時のイリアスは人への感謝を口にしやすい。酔ったイリアスの会話内容を本にすれば、何人ものお世話をした人達が感動する著書になるだろう。


「やだねぇ。おばさんの自覚はあるけど、まだ娘に孝行してもらうほどは老けちゃいないつもりよ?」

「わしも昔はそう思っておったが、娘が孫と一緒に贈り物をしてくれた時は老いを感じたのぅ……」

「それは……きそうね……。坊や、まだ大丈夫よね?」

「全然大丈夫」

「それはそれで不満なんだけれどね」

「どうしろと」


 あの時からマーヤさんは変わらない。この異世界について、初めて言葉を交わしたのがマーヤさんだ。この人からこの世界の常識などを学べたからこそ、『俺』はこうして今も無事でいられる。そういった意味では『俺』もイリアスに負けないくらいこの人に感謝している。

 戦争が終わってからマーヤさんと再会した時に、イリアスが先にやっていなければ『俺』が飛びついて泣いていただろうし。


「あら、どうしたの?妙にしんみりした顔をしちゃって」

「いえ――」


 ゆっくりと丁寧に、この世界の言葉の正しい発音を意識しながら、心の中で書き溜めていた感謝の想いを口にする。

 それでも皆からすれば、『俺』の言葉はたどたどしく聞こえるのだろう。マーヤさん達はすぐに『俺』が精霊さんの翻訳能力に頼らずに喋っているのだと察してくれている。

 色々な事を教えてくれたマーヤさんには、ちゃんと学んだこの世界の言葉でお礼を言いたかった。


「……ちゃんと言えてました?」


 意識せずに喋れば、あとはいつものように精霊さんの自動翻訳が働き、日本語を話すだけで伝わるようになる。

 伝記や詩集、様々な本を読み、似たような意味を持つ言葉は全て使用例から確認し、ニュアンスやイメージもしっかりと学んで、こつこつと確かめてもらいながら用意した言葉だ。

 一応全てマリトに確認してもらったので、大丈夫のはずなのだが……。なんかマーヤさんの目に涙が浮かんでない?


「酷い子だねぇ……。これから泣くかもしれないって時に、先に泣かせてこようだなんて」

「……坊主、お前さん詩人になれるぞ」

「えぇ……」


 丁寧に考えられた文章は、読んだり聞いたりする相手に一種の心地よさを与えるものだ。もちろんマーヤさんが喜びそうな言い回しなどを意識して、多少くさい感じにはしてしまっていたのだが、マーヤさんはもちろん、カラ爺やウルフェまで感銘を受けたような顔をしている。

 マリトの奴、『うん、程よく感動させられると思うよ。せっかくだからミクスとかにもやってみなよ』とか言っていたが、あの野郎。


「ししょー、折り入ってお願いがあります」

「そのうちな」


 城に着くまでにはマーヤさんは元の様子に戻った。カラ爺はラグドー隊の騎士として、マーヤさんはターイズ支部の大司教として専用の席があり、挨拶を済ませてくるからと別々の方へ進んでいった。

 一応『俺』はマリトの友人としての席があるのだが、先にエメラの来賓席がある方へと向かう。

 ハークドック達はまだ到着していない様子、流石にエクドイクも全員を鎖タクシーで運ぶのは絵面的に自重したのだろう。そうなれば徒歩よりも馬車が早いのは自然なこと。

 まだ式典が始まるまで時間があるにもかかわらず、ポツンと『蒼』が不機嫌そうに座っている。


「よう『蒼』。別に他のところで暇潰ししても良いんだぞ?」

「ちょっと、なんでアンタが先に来てるのよ!?エクドイクはどうしたのよ!?」


 久しぶりに見る『蒼』は最初に会った時のようなドレスを着ていた。民族衣装風の格好でも良かったのだろうが、式典用に飾りをつけるとゴテゴテしすぎるから素直にドレスにしたのだろう。


「別のところに寄って、馬車できたんだよ。あいつらは歩きだからな。マセッタさんやメリーアも一緒に来てたんじゃないのか?」

「マセッタはユグラ教として挨拶周りをしているわよ。あとなんかツドァリも一緒。あの二人、妙に仲が良いのよね。メリーアは『紫』と一緒にそのへんにいると思うわ。あの子一応はマセッタの護衛のはずよね?」


 そのはずである。エクドイクの側にいたいからと、半ば無理やりにマセッタの部下として配属されたと聞いている。大人しい子ではあるのだが、決心の速度や行動力の高さは目の前の『蒼』さんに爪の垢を飲ませてあげたいレベルだ。


「本当に魔族になるつもりかもな」

「『金』や『紫』ならやりかねないのがね……」


 あの二人の魔王は、恋する乙女にはとても協力的だ。それこそ対岸の火事相手ならば、惜しみなく魔族にしてくれるだろう。


「いっそのこと『蒼』がメリーアを魔族にしてしまった方が良いんじゃないのか?」

「嫌よ。立場を利用したくないし、そうなったら利用しないと言い切れないもの」


 こういうところが『蒼』の良さではあるのだが、それならそうともう少し積極的になった方が良いのではないかと思います。


「私としては増えれば増えるほど、助かる話なのですが」

「ベラードか」


 足元、『蒼』の影の中からひょっこりとベラードが顔を見せる。人型とはいえ悪魔なのだからと潜んでいるのだろう。


「異なる個体は異なる味覚を持つ。より多くの者がいればより多くの味が生まれる。蒼の魔王様が生きる永遠の時を少しでも鮮やかにするのであれば、料理ができる配下は一人でも多い方が良いと思います」

「アンタがその永遠の時の中で料理を覚えれば良いじゃないの」

「申し訳ありませんが、蒼の魔王様。私からは私の味覚の好みからくる味しか生まれません。それでは新たな発見、刺激は生まれないのです。私の役目はそれらの発見を行うことくらいのものです」


 あ、こいつ食いしん坊キャラになってる。エクドイクを取り合う面子に加わるよりかはマシなんだろうが、焚き付けてくるあたり厄介な配下であることには違いないだろうな。


「料理できればなんでも良さそうな感じだな」

「そういうわけではない。私とて能力の有無は見極めている。とりわけ有望なのはこの国にある食事処にいる大男だ。あれはなんとしてもツガイごと我らが配下に――」

「もうエメラに帰りなさいよ、アンタ……」


 ベラードの頭を踏みつけ、影へと押し込めながら頭を抱える『蒼』。幸せな人生はおくれても、平穏な日々はこなさそうである。

 しかしサイラとゴッズが魔族にされないように今後釘を差しておく必要はあるな。いや、必要ないか。


「デュヴレオリはそこまで料理に拘ってた感じはなかったんだがな」

「でもししょー、デュヴレオリさんも前にゴッズさんを見ながら頷いていましたよ」

「……悪魔にモテてるって知ったら、あいつ喜ぶのかな」

「デュヴレオリは単純にあの男の技量を認めていただけよ?私の配下を増やそうという意思はなかったわね?」


 にゅっと人の顔の横から『紫』が顔を出してきたので、無言で一歩横に離れ、向き直る。あいも変わらず宝石(悪魔)が大量に散りばめられた扇情的なドレスだこと。

 その横には『金』もいる。なぜか非常に困り顔で、ブツブツと呟いている。


「もうちょっとさ、心臓に優しい現れ方しよう?」

「あら、胸がときめくのは素敵なことじゃない?」

「ドッキリ要素はいらないんだよ。メリーアは一緒じゃなかったのか?」

「少しだけお話して、あとはマセッタのところに合流しにいったわよ?」

「仕事を忘れたわけじゃなくてなにより。それで、『金』はどうしたんだ?」

「大した話じゃないわよ?『金』の部下の……ルドフェインだったかしら?その子が引き抜きを受けたそうなんだけど、なんだか前向きに検討しているそうなのよね?」

「引き抜きって、ゼノッタ王からか?」

「いえ、セレンデの新王だそうよ?」


 ヌーフサの奴、何やってんだよ。いや、あいつすげー効率主義だから、単純に有能な人材としてルドフェインさんをオファーしたのか。それでも他国の大臣を引き抜くってのはどうなんだ。


「むむぅ……どうすれば良いのじゃ……」

「休暇増やして給料でも上げてやれよ。あの人オンオフしっかりメリハリつけるタイプだから、それだけで喜ぶぞ」

「それはそうなのじゃが……。ヌーフサ王の奴め、今の給料の三倍を提示してきおったのじゃ」

「ガチじゃん。そりゃ前向きに検討もするわな」


 自国の王が魔王であることを明かしたあとでも、『金』をガーネ国の王として支持し続け、周囲にも認めさせた立役者なのだ。その有能っぷりはあのマリトでさえもターイズに欲しがっていたほどだ。

 優秀な人材を引き止めるのも上に立つ者の役目、頑張ってもらう他にない。どのみちルドフェインさん的には良い展開しかないのだし。


「のう御主。ちょっとルドフェインを口説いて貰えぬか?妾の傍におる御主に心を開けば、ルドフェインも妾の傍を離れなくなるであろ?」

「そんな理由で人を口説かせるな。それこそマリトのオファーを受けてターイズに引き抜かれるだろ」

「そこは大丈夫じゃ。妾が御主をガーネに引き抜けば良いのでな」

「それこそお前がルドフェインさんを口説いた方が……」


 そこまでいってちょっとフリーズ。こいつにルドフェインさんの心を揺り動かせるような真似ができるだろうか。いや、できない。もう『金』も『無理に決まっておろう?』と言わんばかりに哀愁たっぷりの顔をしてやがる。


「些細なことよね?私は貴方がどこにいようとも、誰といようとも、会いに行くものね?」

「のう御主、なんかこいつ怖いこと言っておらぬか?」

「まあ慣れたよ。なんだかんだ自重はしてくれてるから、セリフくらいは大目に見ている」

「慣れって怖いのぅ……」


 以前ムールシュトに重いとか言われたのを気にしてか、距離感に緩急が出始めた『紫』さん。寄ってくる時は相変わらずなのだが、息をつく暇くらいは与えてくれるようになったので助かってはいる。この調子でいてくれるのであれば、もう少しこちら側からも積極的に会いにいってやるのも良いだろう。……いや、これに慣れてしまう自分もどうかと思うのだが。


「あ、でもメリーアの一件についてはちゃんとエクドイクとも話し合ってやれよ」

「心配せずとも、もちろんそうするわよ?メリーアも後数年は人間で居続けるつもりらしいし?あの子外見的にエクドイクと同じかそれ以上になりたいって言ってたわ?」

「数年というとメリーアの……」


 メリーア、姉と同じくらいの年齢になってから攻めるつもりか……。同じように察したであろう『蒼』もなんとも言えない表情をしている。


「それに一件で済むか怪しいけどね?」

「……『蒼』、こんど酒奢ってやるよ」

「優しくしないで……余計辛くなるわ……」

「そうじゃぞ、こんな幸せな悩み事しかない者よりも、不遇な妾に優しくせんか!」

「ルドフェインさんが別の国に引き抜かれたら考えてやるよ」


 まあルドフェインさんも簡単にはガーネを捨てないと思いますよ。あの人『金』くらいの相手が上司の方が気楽そうだし、なんならガーネの土地が好きなわけだし。多分大丈夫。多分。

 このまま時間まで話すのも良かったが、レアノー卿を始めとした見知った顔もちらほらいたので適当に挨拶をして回った。

 皆今日の式典を心から喜んでおり、以前とは明らかに違う会場の空気にどこか達成感のようなものを感じる。まあ実際には『俺』がやったことじゃないんだけども。


「挨拶回りが長いぞ、友よ。俺だって準備があるのだから、魔王共など後回しにしてくれて良かったのに」


 最後にマリトのところに顔を出す。マリトも式典に備えて豪華な衣装を着ており、その隣にはマリトに負けないくらいに綺麗に着飾ったルコもいる。


「むしろ終わってから行こうと思っていたんだよ。ルコ様も似合っているじゃないか」

「お兄さん、様は止めてくださいと!」

「いやもう王妃だし……なぁ、ウルフェ?」

「はい!ルコ様綺麗です!!」

「ウルフェちゃんまで……。陛下と対等なご友人なのですから私も対等なのです!」

「でもウルフェは陛下を陛下って言いますよ?」

「……お兄さん!」


 矛先がこちらにしか向いていない。今まではノラを始めとした見知った相手から様付されていた程度だったが、王妃となってからは夫のマリトやケイールのような家族以外の全員から様付けなのだ。

 親しくしていたイリアスとか、凄く申し訳無さそうに様付していたからな。


「はっはっはっ!あまりルコを苛めてやるな。俺だって君からマリト様と呼ばれたら、それだけで涙を流して奥歯を噛み砕きそうだからな」

「しれっと怖いこと言うな。周囲に他人がいない時はちゃんと呼ぶさ。そういやラグドー卿はいないのか?」

「さっきまでいたんだけどね。会場に用意されていた酒を片っ端から飲み干そうとしていたグラドナを捕縛していったところだよ」

「グラドナせんせー……」


 バンさんの屋敷にいないと思ったら、あの爺さん先回りしてやがったのか。こんな晴れやかな日に牢にぶちこまれるような真似は避けて欲しいものだ。


「ハイヤがいれば、君を直接迎えに行けたんだけどね。歩き辛くなってしまったものだ」

「皮肉の込められた小言も聞けないしな」

「ああ……しかも今代の勇者の皮肉だ。実に惜しいことだよ」


 ハイヤの存在は世間には語られていない。それでも各国の代表や一部の事情を知る者達は皆彼をユグラの名を継ぐ勇者だと認め、その功績を称えた。

 ターイズ城の中庭には、名前の刻まれていない彼の墓が建てられており、そこには色とりどりの花が供えられている。たまに野菜も供えられているのだが、供えた者らしいといえばらしいのだろう。


「覚えているかい?君と初めて目を見交わしたのも、こんな日だった」

「ああ。今日は戯れはなしで頼むぞ」

「わかっているよ。だけど思い出してしまってね。君の噂を聞きつけた時から、俺はこの国に新しい風が吹いているのを感じていた。そして君と話してすぐに確信した。ああ、この男はターイズに、この俺にとって必要な存在なのだと」


 マリトは初めて会った時からこちらに対して友好的だった。異世界人という事自体が興味の対象としては十分だったのだが、マリトはそんなことよりも『俺』個人の在り方に興味を示していた。自分の知らない世界を歩み続けてきた者に対する憧憬があったのだろう。


「それなりには役立てたとは思うがな」

「君と会ってからは、いつも君のことを考えていたよ。君をターイズに残したい、君ともっと語りたい。君にもっと変えてもらいたいとね」

「陛下ったら……まるで恋する乙女みたいですね」

「妬いてくれるか。嬉しいよ、ルコ。でも身近にいた君という存在に気づけたのも、友のおかげだからね。この感謝はちゃんと伝えたいんだ。君とは二人きりの時にちゃんと向き合うから安心して欲しい」

「へ、陛下……」

「え、なに、高度なノロケ?もう行っていい?」


 唾液に砂糖の味がしてきたので、踵を返して離れようとすると、マリトに裾をがっしと掴まれる。多分今の動きウルフェも見切れないくらいに速かったぞ。


「そう焦らないでくれよ。このあとの式典を見る前に、君に伝えておきたい言葉があるんだ」

「なら前置きはもう少し短く、かつ茶目っ気は抑えることだ」

「ごめんごめん。……俺は君に感謝している。俺やルコのこともそうだけれど、一番感謝しているのは、君がこの世界を選んでくれたことだ。君はこの世界を元の世界と天秤に掛け、選ぶだけの価値があると示してくれた。この世界に生きる者として、これほど嬉しいことはない」

「……価値を示したのはお互い様なんだけどな」

「ははっ、そうだね。だからこのあとの式典をしっかりと目に焼き付けて欲しい。君が選んだ世界、その進む先を象徴する光景を」


 マリトは満足したのか、こちらの裾を手放す。言われずとも、今日という日が自分にとってどのような意味を持つ日なのかは理解している。


「……おう。台詞、噛むなよ」

「もちろんだとも。まあそれはそれで印象には残ると思うけどね」


 程なくして式典の開始時刻となった。以前に参加したものは貴族や騎士ばかりだったが、今回は屋外を利用し、広くなった会場では一般人や他国から来た者達も大勢いる。

 ここにいる者達の多くがその全てを理解しているというわけではない。だが、それでも何かしらの空気を感じ取れているのだろう。皆静かに式典が進んでいくのを見守っていた。

 先の戦争に参加し、功績を収めた騎士達を労う言葉。そして各隊の騎士団長達が代表として前へと歩み寄り、マリトの前で跪き、贈り物を与えられていく。


「――最後にラッツェル卿」


 背の高い騎士達の中に紛れ、今まで見つけることができなかったイリアスの姿が現れる。

 いつものように凛とした表情で、前に出る動きに固さはない。

 ターイズの騎士は隊を象徴する色で染色されたマントを背負う。騎士隊長のものには更にターイズの国旗が縫い付けられており、通常の隊員はシンプルな色だけのマントだ。イリアスもその例に従い、ラグドー隊の象徴となる碧色のマントを付けていた。

 だけど今のイリアスの鎧にはマントが装着されていない。


「先の黒の魔王の侵攻において、貴公はその武勇を余すことなく発揮してみせた。最前線にて魔族と戦い、勇敢なる勝利を収めた」


 イリアスはマリトの前に跪き、静かにその言葉を聞いている。この空間に響くのはマリトの静かな声だけ。その言葉と共に、かつての戦いの光景が脳裏へと蘇ってくる。

 ザハッヴァ、ラザリカタ、オーファロー。ユグラという異世界人の干渉によって怪物へと成り果ててしまった者達との戦いは、決着をしてもなお哀愁を感じさせるものがあった。


「そして貴公は黒の魔王との一騎打ちを果たし、かの魔王の憎しみや怒り、過酷な世界の真実を正面から受け止め、道を切り拓く覚悟を示した」


 黒の魔王との剣を交わした対話は、黒の魔王の中で見ていた『俺』自身にも響き、この世界を選ぶ切っ掛けの一つともなった。


「それらの功績を称え、本日をもって貴公を新たな騎士隊、ラッツェル隊の騎士団長に任命する」


 マリトがラグドー卿の運んできたマントを受け取り、イリアスの鎧に羽織らせるように装着する。

 そのマントの色は完全なる漆黒。華やかさを持っていた他の騎士隊に比べ明らかに異色だ。

 だがこの色はイリアス自らが希望した色だ。イリアスは黒の魔王と約束をした。黒の魔王が一人で背負おうとしていたこの世界の未来を、揺らがぬ漆黒の覚悟を、自らも背負っていくと。

 漆黒のマントの上で、イリアスの金色の髪が揺れる。それはまるで、先の見えない闇に拓かれた、輝かしい未来を示すかのようだった。


 ◇


「あの者についての処遇は以上の通りだ。目的ありきで招いたわけではないが、お前の後輩となったわけだな」

「そんな事を報告するためだけに、テドラルを拉致ったのかい?」

「ナハハッ!私とて学習するのだ。お前が私を無視するのならば、無視できぬようにこうするのが適切だとな」


 額に青筋を浮かべるユグラに、相変わらずの超絶マイペースなクソ野郎こと『神』。多分あと数分、こいつらの会話に付き合ったら戦いの余波で死ぬ。

 逃げてぇのは山々なんだが、なにぶん俺様このクソ野郎に捕まってしまいましてね。

 目が覚めた時はそりゃもうごきげんだったわけよ。なんせ黒姉が世界を滅ぼすのを留まってくれたわけなんだし、目からじんわりと涙も流れましたわ。

 こりゃあの『地球人』に礼でも言わなきゃなと、傷を治して鼻歌交じりにユグラの創った異空間を出たら、秒で捕縛されるってね。


「テドラルだから大目に見るけど、もしも『黒』にちょっかいを出したら、全力で嫌がらせをしてやるからね?」

「おい」

「心配せずとも、アレを近くに呼ぶつもりはない。アレがいては会話にならんだろう」

「お前が言うな」

「ナハハッ!」


 ここに黒姉がいたら……うーん想像するのも嫌なレベルの空気になってんだろうなー。そういう意味じゃ俺を捕まえるのがユグラと連絡をする上で一番マシな手段ってわけだ。

 多分このあとユグラに変な首輪とかつけられそうだなぁ、嫌だなぁ……。


「まぁ、彼らしいといえば彼らしいね。僕という反面教師からしっかり学んでいるじゃないか」

「お前ほどに万能ならば、意のままに世界を変えられるだろうに」

「『神』の干渉に負けない世界を創るのに、『神』の力を借りてどうするのさ。でもどういう風の吹き回し?彼を元の世界に帰すことと、この世界の住人として受け入れることは、不正に召喚された彼の対処の範疇だ。選択させることが恩寵だったとすれば、再び招くのは完全に別の手間でしょ」

「うむ。そこは単純な取引だ。あの者は鳩になることを受け入れた」

「鳩……ああ、伝書鳩ね」

「毎回お前の対策を上回りつつ、そこの者を攫うのも手間なのでな。お前もその方が良いだろう?」


 ユグラは『神』の話を聞く気がないし、相手にもしたくないと考えている。それでも用件を伝えるにゃ、今回のように強硬策を取る必要がある。

 俺への警戒はどんどん上がるだろうし、確かにあの男に言伝を頼んだ方がまだ穏便に伝わることだろう。

『神』らしく天変地異を起こして世界中にメッセージを発信することもできなくはないだろうが、完全に無力な異世界人を伝言役としてこの世界に置いとくほうが、遥かに少ない労力で済む。

 そもそもユグラは天変地異くらいしれっと無視するだろうしな。俺だって世界の危機より飯を食う黒姉の姿を見てたいし。


「呼び出されたり、テドラルが攫われたりするよりかはマシだけどね。どのみち返事はしないけど」

「そこは案ずるな。もとより私はお前達に相談するようなことはない」

「知ってる。ところで彼は一度元の世界に帰ったんでしょ?そのまますぐに呼び戻したの?」

「いや、向こうの時間で半日ほど与えておいた。突然の失踪は向こうの秩序を乱す要因にもなると言われたのでな。これが記録だ」


 そう言って、『神』は何かしらの波長を放ち、ユグラに受け取らせた。ユグラは少しだけ沈黙し、小さくため息を吐く。


「夜逃げ屋を使って意図的に失踪したように工作するとか、手慣れてるなぁ……。それに未練があるくせに、随分と淡々と別れを告げてきたものだね」

「『知った場所へ行ったり、知った誰かと会ったりすれば、未練が増すだけだ』そうこぼしておったな」


 なんかあの『地球人』が元の世界に戻っていた時の記憶を二人で共有しているらしい。俺も見たいんだけど、正直こいつらの会話に入り込みたくない気持ちで満たされてます。

 いや、ダメだぜ?人の日常を垣間見るとか、趣味が悪いにも程があるぜ。そういうのは仕事の範疇だけにしとかなきゃな。


「それツッコミ待ち?」

「蚊帳の外にいるんだから、心読むなよ」

「でもクソ野郎、これお前にとっては望ましくない展開じゃないの?彼の症状が蔓延すれば世界の進歩は間違いなく滞ることになるでしょ」

「うむ。感染力も強いようだからな。あの者が生きている範囲ではあまりめぼしい成果は得られぬかもしれんな」

「症状?感染?何言ってんだお前ら?」


 ユグラと『神』は少しだけ目を交わし、ユグラの方が少しため息を吐いた。お前ら人に説明する手間をアイコンタクトで押し付けあってるんじゃねぇよ。本当は仲良いんじゃねぇの。


「クソ野郎が僕をこの世界に呼んだのは、僕にこの世界に干渉させ、新たな変化をもたらせるためだ。経過や結果の良し悪しはさておき、僕は確かにこの世界に干渉し、大きな変化を生み出した。僕が力を与えた魔王達は皆、自らの欲求を満たすために世界を大いに荒らし回ってくれたからね」

「お、おう」

「それに対し、彼の干渉は真逆だ。徹底した事なかれ主義、目まぐるしい発展なんていらない、平穏無事、無難に生きられたらそれで良い。進歩を望むクソ野郎にとっては退屈な存在でしかない」

「そうだな。あの男が禁忌に好んで踏み込むような真似はしないよな。まぁ、無難に生きたいとか言うくせに、厄介事にゃどんどん首を突っ込んでるけどよ」

「そこだよ。彼は自分の願望を自分だけの世界で終わらせようとしない。他者の人生にも平穏を願い、そのための労力を厭わない。そのためには自らの生き方を、自らの願いと矛盾させてしまう。それが他者にどのような影響を及ぼすと思う?」


 どのような影響を及ぼすか……か。つまるところあの男の周りの連中の変化が答えってわけだろ?あの男に目をつけてからは、それなりに周囲の連中にも目を向けていた。

 敵対していたエクドイクや魔王達、リティアルもそうだな。確かにこいつらは強い意思をもって自身の願望を果たそうとしていた。

 つまるところ我欲に生きていた連中の末路なんだが……なんつーか似てきてるんだよな。


「はいそれ。伝染しているんだよ。彼の在り方が」

「伝染て……。別に感化されることは悪いことじゃないんじゃねぇの?」

「自覚がないようだね。君もそうだよ、テドラル。君は本来『黒』さえいればそれで良かったはずだ。なのに今回君がとった行動はなんだい?『黒』にこの世界を滅ぼさせない選択を取っただろう?」

「――」


 振り返れば自分の行動がバカになっているのが分かる。なんで俺はあの男に頼った?ユグラが世界をやり直して黒姉を幸せにし直してくれるなら、それをバンザイって喜ぶだけで良かったんじゃねぇのか?

 どうして俺は黒姉の生きる世界まで、大切にしようとしちまっていたんだ?


「彼が特別ってわけじゃないんだよ。これは人類史にある当然の摂理だ。人は発展を望み、その過程で争いを繰り返し、心身ともに消耗していく。その過程で無難に生きたいと願う者達が現れ始める。自分勝手な連中は争いごとを避けるだけだが、人を想ってしまう者は他者に干渉してしまうんだよ」

「英雄の戦いを見れば英雄に憧れる。学者の叡智を知れば学者を目指そうとする。発展を望み苛烈に生きることも、平穏を望み無難に生きることも、人が世界に求める答えの一つ。その理想を目指すための行動に人間は感化されてしまう」

「だからこのクソ野郎が異世界から招く人間には、尽く過激な奴を選んできていた。だからこそ、世界は異世界人の多大な影響を受けて変化をしてきたんだ」


 あの男は英雄でもなければ学者でもねぇ。だけど確かに俺とは違う人種だ。職業が違うってくらいの感覚で、あの男にしかなれねぇってわけじゃねぇ。

 だがこの世界の『神』が意図的に招かなかったタイプの人間だ。だからこそこの世界の連中は免疫が足りていなく、簡単に感化されてしまう。


「だから病気みてぇな扱いをしてたってわけか……」

「そ。君もそうだし、『黒』にも感染しちゃってるからね。なんならエクドイク越しにオーファローにも感染してなかったっけ」

「マジかよ……」

「世界になかった発想を持ってこられるということは、それだけ多大な影響を及ぼしてしまうんだよ。まあ僕から見ればそれなりに見た傾向だし、『黒』が穏やかになってくれる分にはありがたいんだけどね。そこのクソ野郎にとっては不都合なわけだ」


 なるほどな……。人は自分にないものを示す相手に興味を持つ。憧憬や恐怖、その感情は様々であっても、無意識的にその行動を模倣してしまう。

 直向きに生き続けた人間達にとって、無難に生きるために尽力する奴の存在はそれほどまでに影響を及ぼしちまうってわけだ。さしずめ――


「――無難に生きたい症候群ってやつか」

「ネーミングセンス無いね。医者には絶対なれないよ」

「酷くね!?」

「病名っていうのは言葉だけでも症状を予測できるものが好ましいんだ。病名と中身が伴わなければ、聞く側が混乱するだろう?」

「お、おう……」

「でも今のドヤ顔の発言は過去一面白かったから、録画しておいたよ」

「止めてちょうだい!?」


 いや、これも感染した結果なんだって!あの男のたまにクセぇ台詞を言うのが感染っただけなんだって!ちょっと、空間にディスプレイ展開して再生するの止めてもらえませんかね!?


「単純な発展を願うだけならば、不要な要素ではあるがな。だがより複雑な変化を求めるのであれば、抑え込むこともまた一つの手法となりうる」

「カタルシス効果みたいなものだって言いたいわけ?」

「そうだ。無難に生きたいと願う者が蔓延すれば、やがて多難を求めて苛烈に動く者が現れるだろう。そうやって抑え込まれた感情が爆発した時の変化もまた、観測するだけの価値がある」

「まぁそうだね。少しでも地球に近しい発展を遂げたいなら、歴史的な緩急は必要だろうし」

「それにユグラナリヤよ、時期がくればお前が時空魔法で全てをやり直してくれるのだろう?それまでの特例検証と思えば悪い話ではないということだ」


 クソ野郎は虚空から何やら光る結晶のようなものを取り出し、ユグラの方へと放った。発光しているからよくわからねぇが、ありゃ鍵か?


「……どういうつもりだい?」

「ユグラ、そりゃなんだ?」

「……他の世界に入るための許可証だよ。これがあれば、僕だけではなく『黒』やテドラルも海の向こうにある世界を自由に行き来できるようになる」

「マジかよ!?」


 そんな許可が出れば、黒姉は間違いなく海を超えて他の世界を救おうとするだろう。

 ユグラは言っていた。このトレイツドはまだ比較的マシな状態だって。発展途中の世界もあれば、既に滅びきった世界や滅びを待つだけの世界もあると。


「トレイツドに関してはあの者と、その症状を引き継いだ人間に任せるのだろう?ならばその間の退屈凌ぎを与えてやろうと思ってな。どうせやり直すことになるのだ、好きに干渉してみせよ」

「……彼の提案かな」

「うむ。私の制止を振り切るユグラナリヤを放置しておくのは勿体ない、いっそ他の世界にも干渉させた方が多くの影響が見られるだろうとな」

「良いのかい?僕や『黒』が好きにやった結果、全ての世界の所有権を奪われてもしらないよ?」

「ナハハッ!それができるほどに人間が進化するのであれば、私にとっても十二分な検証結果が得られるであろうよ。その時はお前を神にしてやっても良いぞ」


 本当、このクソ野郎は『神』なんだなって思うぜ。これまでユグラが時空魔法でリセットをしようとすることを止めようとしていたくせに、止めるのが面倒だと判断するや、それを利用した観測を始めてやがるし、なんならユグラに全部に干渉させようとしてくるんだからよ。

 でもそんなにダメな名前かね?俺的にゃ結構しっくりきてると思うんだがなぁ……。


「いや、ダメだよ」

「うむ、ダメだな」

「仲良くダメ出しすんじゃねぇよ!?」




完結まで書ききりたかったのですが、想像よりも長くなったので完結は次回となります。

あともう一歩、お付き合いください。

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― 新着の感想 ―
[一言] >無難に生きたいと願う者達が現れ始める。 秩序(平和)を望むものが現れ、その思いが共感を呼び広がってゆく。そうか・・・彼は平和の使者だったのか。(非常に胡散臭い) タイトルにそんな意味が有っ…
[良い点] ここでまさかのタイトル回収!! あとイリアスのマントが漆黒なの無茶苦茶シビれました [気になる点] テドラルのドヤ顔
[一言] 次回で完結…ついに完結ですか…長い間読んできた作品が終わってしまうことは悲しいですが、最後まで楽しませていただきます!
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