後悔①
〜〜〜
「く、くそっ。くそ!」
「な、なんとか逃げられた」
「こ、幸運だったぜ。まさかあの洞窟が森の外に通じていたなんてな」
「……っ」
命からがら。
サラマンダーの群れから逃れることのできた、アラン。マリア。リンメイ。ゴウメイ。
彼等の装備は、上から下まで黒こげになっている。
幸い。
洞窟の中は狭く、サラマンダーは追ってはこなかった。
火炎の息。
それを、なんとかかわし洞窟の奥へ奥へと進んだ結果、彼等はこうして生きて森を出ることができた。
視界に現れる、明るい外の景色。
洞窟の二つ目の出口。
しかし面々はその寸前で足を止める。
そして。
「ね、ねぇ。もう出ないよね?」
怯え、リンメイは三人に問いかけた。
「さ、サラマンダー。もう出ないよね」
「し、しらねぇよ」
悪態をつく、アラン。
そのアランの背を、マリアが軽く押す。
「アラン。貴方が先に行きなさい!」
「は、はぁ!?」
「貴方はわたしたちのリーダーでしょ? 少しはリーダーらしいことしてくれない!? ほら、先陣を切りなさい!」
「そ、そうだぜ。アラン。ここはリーダーとして、先に外に出てくれ」
「ほら、はやく!はやくぅ!」
マリアに同調する、ゴウメイとリンメイ。
その二人の表情は、どこかアランを値踏みしているかのよう。
「ちっ」
と舌打ちを鳴らし、汗を滲ませながら、アランは洞窟の外へと意識を向ける。
そして。
「……っ」
恐る恐る、その一歩を外に踏み出した。
緊張の瞬間。
ごくりと息を飲む、アラン以外の三人。
そして、数秒後。
「さ、サラマンダーは」
「こ、こない。わね」
「よ、よかったぁ」
「よ、よし。そうとわかればさっさと街へ戻ろうぜ。あの野郎。く、クロエの野郎をぶっ飛ばそう」
アランの言葉。
それに三人は同時に頷く。
っと、そこに。
「ねぇ。聞いた?」
「なにが?」
「クロエって名前の冒険家の話」
「なにかあったのか?」
「なんでも街一番のお金持ちーーイライザ家に気に入られて、お抱えの冒険家になるかもだって」
「す、すげぇな。一生食っていけるじゃん」
「それに。王都直属の冒険家への推薦も話も同時進行で進んでるみたい。羨ましいなぁ」
通りすがりの二人の冒険家の声が響く。
そして、二人はそのままアラン達の前を素通り。
会話をかわしながら、離れていく。
「ね、ねぇ聞いた?」
「う、うん」
「クロエのやつ」
「……っ」
四人は悔しげに唇を噛み締めーー
「すぐに街へ戻るぞ!」
「許さねぇぞ、クロエ」
「今までの恩」
「まとめて返してもらいましょ」
そう声を響かせ、その拳を強く強く握りしめたのであった。
〜〜〜




