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偽物聖女だと追放されましたが、モフモフばかりの獣人騎士団に雇われて幸せです  作者: 氷雨そら


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5/14

追放先は、モフモフ騎士団でした 5


「アラン様!」


 走り寄ったアラン様は、今は大きな白銀の狼ではない。

 美しいアメジストの瞳には、あいかわらず視線が釘付けになってしまう。


「あの、ご迷惑を……」

「迷惑なはずないだろう。どれだけ心配したことか……」


 まあ。アラン様はお優しいのね……。心配をおかけして申し訳なかったわ。

 申し訳ありません……。というのは、どこか違うわね。ありがとうございます、と言うべきかしら?


「では、護衛任務を終えて、先に集まりに合流する」

「ああ、バード。ご苦労」

「ありがとうございます。バード様!」


 バード様は、振り返らず手を振って去って行ってしまった。


「フィーリア、目覚めてくれてよかった。……話さなくてはいけないことがある」

「え?」


 手を引かれ、歩き出した廊下は端が見えないほど長い。

 いくら、王国が誇る精鋭、第三騎士団の詰め所だとしても、広すぎる。まるで、王宮みたい……。


 連れていかれたのは、長い廊下の端っこだった。

 金色のドアノブが着いたドアは、ほかの部屋に比べて豪華だ。


「団長室……?」


 迎え入れられた部屋は、明らかに大切な資料が所狭しと並べられた部屋だった。

 入っていいものかと戸惑ったのもつかの間、優しいけれど振りほどくことができない力で手首を掴まれて、そっと引き寄せられる。


「あの、私が入ってもいいのですか?」

「構わない……。というよりも、ここが一番機密事項を話すには都合がいい」

「そ、そうなんですか」


 私が眠っている三日間、なにかあったのだろうか。

 匿ってもらっているようなものだもの。何かご迷惑を駆けたのではないかしら?


「あの……」

「いくつか伝えなければいけないことがある。……まず、俺の傷を治してくれたことに礼がしたい」

「えっと、無意識だったので……。本当に私が治したのでしょうか」


 魔力が枯渇したほかには、まったく自覚がないのだけれど……。


 そんなことを考えていると、急にアラン様が上着を脱ぎ始める。


「――――見苦しいものを見せてすまない。だが、見てもらった方が、話が早い」

「…………瘴気が強い場所で、受けた傷ですか」


 恥ずかしがったりした自分が、情けなくなってしまう。

 アラン様の背中には、肩から腰まで斜めに黒い傷が付いていた。

 けれど、それはすでに消えかるように薄くなっている。


「この傷は、ずっと乾くこともなく、痛みをもたらしていた」

「……それは、お辛かったでしょうね」

「いや、この傷は俺にとって勲章のようなものだから」


 瘴気が強い場所でけがをすると、その傷が塞がることがなく、時に命を奪う。

 それにしても、いつまでも痛みを伴うような傷さえ勲章だと言い切れるだなんて……。


 感動のあまり、潤んだ瞳で見つめていると、アラン様が私から目をそらした。

 見過ぎてしまって、不躾だったかもしれない。


「ある人に助けられなければ、この場所に俺はもういないだろう。そして先日、もう一度助けられた」

「そうですか……」


 そっと、傷に触れてみる。

 すでに乾いているけれど、ここまでの傷を治すのは難しいだろう。

 やっぱり、私の力では、治せないレベルの傷ね……。


「ありがとう、フィーリア」

「え? 間違いなく私ではないです。こんな傷を治せるほどの治癒魔法、使えません」

「……そうか」


 それだけ言うと、アラン様は、上着を羽織る。


「それから、この場所に、おととい両陛下がいらっしゃった」

「え、ええ?!」


 それは、大変!

 両陛下がいらっしゃるとなれば、それこそ屋敷中が一か月前から準備に追われる。

 私が三日間眠っていたとなると、婚約破棄の翌日には、この場所に両陛下がいらっしゃったってことよね?


「私が、のんびり眠っている間に、大変なことになっていたのですね……」

「ん? たしかに、久しぶりにいらっしゃったが……。フィーリアに申し訳ないと、頭を下げていた」

「――――は」


 驚きのあまり、開いた口が塞がらなくなった私は、きっと間抜けな顔をしていたに違いない。

 婚約破棄は、そのまま手続きが進められたそうだ。

 聖女の資格剥奪については、すでに神殿の手続きが、第二王子派の神官により、終わっていたらしい。


「本当は、フィーリアの聖女剥奪をすぐにでも白紙にしたかったのだが、少し時間がかかりそうだ」

「……えっ。聖女の資格剥奪を、白紙……ですか?」


 余計なことをしないでください! 私は、自由がいいのです!

 あまりにも、アラン様の瞳が真剣だから、私は台詞を言い出すことができなかった。

 


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