元聖女は騎士の決闘にはさまれる 2
「なぜ、聖女様を巻き込んだ」
ウィンド卿は、一瞬だけ私に視線を向けた後、鋭い視線をアラン様に向ける。
いつも、優しげに細められていた金の瞳は、今はまるで肉食獣のように獰猛に光っている。
「……それは」
でも、巻き込んだっていったい?
「まあいい。たとえ、どんな身分であろうと、騎士である限り、決闘を断るという選択はないはずだ」
「ノルン・ウィンド卿。決闘の末に何を願う」
「――――聖女様は、俺が守る。誰にも触れられないように」
「……貴殿にわざと負けてもいいとすら思ったが、気が変わった」
……どうしましょう。ウィンド卿は、何か勘違いしているみたいだわ。
そもそも、アラン様たちを巻き込んでしまっているのは私なのに。
それに、聖女ではなくなった私には、そんな価値はもうないのに。
「あの、二人とも勘違いを」
それに私は、二人には仲良くしてほしい。
私のせいで、決闘なんて危険なことをしないでほしい。
次の瞬間、なぜか二人して、一瞬表情を緩めて優しい視線を私に向ける。
「……え?」
決闘なんてやめてくれるのかと期待した直後、キィンッと剣と剣がぶつかり合う音が響き渡る。
私の目では、とても二人の動きを追うことができず、ハラハラとみているしかない。
……本当に?
ゴクリと渇ききった喉を潤す。
本当に私には、できることがないだろうか。
……聖獣様。私はもう聖女ではないけれど、今だけお力を貸してくださいませんか?
祈りを捧げるために組んだ手の間から、光があふれ始める。
『待っていた』
「……まだ、応えてくださるのですか」
『もちろん。むしろ、守れなくて申し訳ない』
「……逃げたのに」
『ふふ。逃げ切れていない。その証拠に、フィーリア、君の目の前にいるのは』
次の瞬間、まばゆい光と共に、私の手には光り輝く剣が一振り。
私が、聖女として認定されたのは、少しばかりの治癒魔法があるからではない。
聖獣様から、貸し出しを受けることができるからだ。
「っ……二人とも! 私が相手です!!」
借り物の光り輝く剣を不格好に構えて、宣言すれば、二人とも唖然とした表情のまま、戦いをやめる。
「フィーリア、それは……まさか」
「聖女様。まさか、それは」
構えたまま、ちょっとした出来心で剣を振ってみる。
すると、見事に剣は私の手からすっぽ抜けてしまう。
「あ! あぶな!!」
次の瞬間、剣はアラン様の手で、しっかりと掴まれていた。
光り輝く剣は、それにもかかわらず、消えることもなく、ますます強く光り輝く。
「聖剣が、消えることなく、資格を持つものの手に」
呆然としたままの、ウィンド卿の言葉。
たしかに、あの剣は誰も触ることができなかった。
他の人が触ったときは、すぐに消えてしまった。
私が聖獣様に借りた光り輝く剣を握ろうとたのに、目の前で光の粒になってしまったことで第二王子カルロス・イーグル殿下が、「偽物の聖剣を出すとは!!」と、とても怒っていたもの。
けれど、消えることなんてなく、それどころかその存在感をますます高めながら、光り輝く剣はアラン様の姿をキラキラと照らしていた。
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