ダチョウと蟷螂はスパイスですか?いいえ、誰でも 時空警察編
蟷螂の魔人はかなしそうにつきをながめながらおびえる妻とこにいった。
『私は私ではない…』
『日名子……』
子供の名前はひなこ。
『ぉ、とう……さん?』
『ひな……こ……』
泣きながら鋭利な手を縮める。傷つけてしまわぬよう。
『さようなら……』
『おとうさぁーん!!!』
泣きながら蟷螂の魔人がとびさっていくのをおいかけるが、ころんでしまう。
膝がずきずきする。
その痛みが現実だと教えてくれてさらにさみしくなった。
後ろから母親が抱き締める。
『日名子……父さんとおくにいっちゃったね。むかし、戦にいったときみたいにね』
泣きながら娘を抱き締めふるえる足を気丈にも直立にさせ子供を不安にさせないようにする。
母親の鑑だ。
やさしいこえでいった。
『もう大丈夫よ』
かえってきてそっと忍び寄る蟷螂の旦那。
傷つけないように二人を抱いていう。
『ごめんね、有難う。開けちゃわないね……』
一瞬自我をとりもどしかけたが二人の鍵職人のいしきがまざりあって少しだけ別の人となってしまった。
『わんわんっ』
離れた場所からいぬの声が聞こえる。
『みつけたわん!』
でかした!といったのは深井で頭だけ犬の魔人が魔人を探し当てた。犬の魔人は深井がつくっていたのだ。
このころ黒衣衆は黒い衣類を纏ったその威風とかわった風貌から畏怖されており死の兵団とよばれていた。
『みつけたぞーわしのチャクラムだな!わかるんだこのかんじ、マセキのオーラのようなものでわかる。チャクラムでつくられた魔人だ!よくぞみつけたなワン人!』
犬の魔人はワン人とよばれており嗅覚がするどくマセキを識別しかぎわけさぐりあてることができた。
『わん!間違いないワン!』
『なんですかあなたたちわ!』
妻が気合いを込めて叫ぶ。
『われわれは黒衣衆の深井とワン人である!』
『亭主はひとです!なにとぞ!なにとぞ!』
深井は動揺する妻の肩にそっと手をおきながらいった。
『安心なされよ、亭主は魔人とよばれるれっきとした人である』
そういって慰め安堵させた。
ほっと胸を撫で下ろし亭主が殺されないことを知るとまたなこうと感情が揺さぶられたがなくなみだものこっていかなかった。
『蟷螂の人よ!我等とこい!ともに天下統一をめざそうぞ!』
『開けちゃおうねぇ……開けちゃおうねぇ』
両肩をつかむと蟷螂の魔人は両手をあげて泣いた。
『開けちゃおうねぇ……新世界の扉を……開けちゃおうねぇ……』




