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【完結】この神が送り届けよう〜白の世界から迷子救出!〜  作者: 仮面大将G


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第99話 黄土色の世界

 黄土色に染まった世界で、瞬の大きな声が響き渡る。



「絶対黒の世界で終わりで良かったって!!なんでこんな黄土色とか地味な色出して来た!?」



「まーまー、黒で終わりだったら王道じゃん?それで終わりは面白くないよ?」



「王道やめて黄土にしてどうすんだよ!!ダジャレがくだらねえわ!!」



「我は狐色の世界の方が良かったぞ」



「どっちでもいいわ!!ほぼ変わんねえだろ!!」



「そや!!どっちでもいいやろ!!ほぼ同じやんけ!!」



「……は?誰の声だ……?」



 瞬のツッコミに被せ、どこからか関西弁でツッコミが聞こえて来る。三人は辺りを見回したが、どこにも人影は見当たらない。



「だーれー?関西弁でわざとらしいキャラ付けて来たのだーれー?今更だよー?」



「先輩やめてあげてください!!ここまで関西弁キャラほとんど出てこなかったんだから許してあげて!!」



「やかましいわ!!誰がわざとらしいキャラや!!」



「うむ……」



 城田が珍しくどこか考え込むような反応を見せる。瞬と真美の二人も、同じように気まずそうな顔だ。



「なんか……テンポ悪くない?ツッコミ二人いると私もボケにくいんだけど!」



「俺もそう思います……。ツッコミもやりにくいし!!」



 三人が気まずそうな反応をしていたのは、ツッコミ役が増えたことによってテンポ感が失われてしまったからだ。



「え!?なんやワイのせいでおもろなくなってる言うんか!?そんなアホな!!」



「……うん、そのわざとらしい関西弁が面白くねえんだよな……。お前本当は関西弁キャラじゃねえだろ?」



「……な!?ななな、何を言うてるんや!!そんなわけないやろ!!」



「図星だな。お前は何者だ?早くそのアロハシャツを着た姿を見せろ」



「アロハシャツは確定なの!?何を根拠にそう言ったんだよ!!」



 城田の声で、突然黄土色の空間から黄土色のアロハシャツを着た黄土色の肌で黄土色の髪の男が現れた。



「ほんとにアロハシャツだった!!え、お前この黄土色のやつと知り合いなの!?」



「いや、こんな黄土色の者は知らぬな。お前は誰だ?イギリスの首相か?」



「誰がやねん!!なんでイギリスで政治せなあかんのや!!」



「ではどこの首相だと言うのだ?早く答えろ。文字数が勿体無いぞ」



「メタいこと言うなや!!自分、ほんまにワイのこと覚えてへんのけ?」



 城田はそれを聞くと自分の頭に手を突っ込み、ぐるぐると掻き回してから再び口を開いた。



「うむ。今記憶を探してみたが、お前のような関西弁の者とは会ったことが無いぞ」



「何物理的に記憶探してんだよ!!今脳ぐっちゃぐちゃだろお前!!」



「おお瞬くんが久しぶりにツッコんだ!出番待ってたもんね!」



「ちょ、恥ずかしいからそういうこと言うのやめて貰えます!?」



 瞬と真美がいつものペースに入ろうとしている中、黄土色の男はため息をついた。



「はあ……。ほんまに覚えてへんとは……。大ボケもここまで来たら手つけられへんな」



「そろそろ勿体ぶりも鬱陶しいぞ。そのまま名乗らぬのなら我々はここでババ抜きを始めるが良いか?」



「良くないわ!!名乗る!名乗るから!ワイは黄土色の世界の神で、城田と神様学校の同期やった央度李依(おうどりい)や!」



「黄土じゃねえのかよ!!お前よくその名前でツッコミキャラになれたな!?」



 央度は憎しみを込めた鋭い目で城田を見ながら、神様学校時代の話をし始めた。



「あれはワイがまだ神様学校の学生やった時や。お前はワイに向かってこう言うたな。『隣の客はよく鮭食う客だ』って」



「うんそのエピソード聞いた!!黎田から聞いた!!で俺と同じツッコミしたんだろ?」



「そうや。ワイはその時『柿じゃなくて!?なんで鮭ばっかり食ってんだよ!!熊か!!』ってツッコミを入れた。ただそのツッコミを入れるまでに、大体3時間かかったんや」



「かかり過ぎだろ!!野球の試合ぐらいかかってんじゃねえか!!」



「そうやな。3-1でチワワ・ゴールデンズの勝ちや」



「なんでメキシカンリーグなんだよ!!誰も知らねえだろそのチーム!!」



 央度は天を仰ぎ、両手を広げて地面に両膝を着いた。



「そん時に思ったんや!!『もっとツッコミが上手くなりたい』って!!やから関西弁も習得して、この60年間をツッコミの練習に費やしてきた!!」



「お前バカなの!?60年ツッコミ練習してる暇あったら仕事しろよ!!神じゃねえの!?」



「黎田を部下にしたんもツッコミの練習のためや。あいつはようボケるからな」



「存在意義がボケだけなのあいつ!?悲しいキャラだな!!」



 央度は立ち上がり、もう一度キッと城田を睨みつけた。



「ワイは城田に復讐する機会をずっと待ってたんや。よくもワイに長い時間ツッコミの練習ばっかりさしてくれたなってな」



「お前が勝手にやってただけだろ!!自主練だからね!?」



「そしたらそこの二人が白の世界に迷い込んだっちゅうのを聞いたんや!幸い、城田は1ヶ月なんもせんかったみたいやから、旅路を邪魔する準備はしっかりできた」



「おい俺たちがスっと帰れなかったの間接的に城田のせいじゃねえか!!」



「こいつらを元の世界には帰させへん!そしたらお前の神様ランクも下がるし、その自信満々な態度も多少は改めるやろ?さあ、痛い目見て貰おうやないか!」



「あー!ちょっと城田さん、私の反応でババ探してるでしょ!ダメだよそんな小狡いことしちゃ!」



「だが運だけで決まるゲームというのはつまらないものだぞ。顔色を伺うくらいはしても良いだろう」



「何ほんまにババ抜きしとんねん!!ワイが語ってんの聞いてへんかったんか!?」



 するとババ抜きをしていた城田が立ち上がり、カードを20枚ほどその場に捨てた。



「煩いぞ央度よ。お前のことなど覚えていないと言っているだろう。だがこのタイミングで話しかけてくれたのはナイスだ。体良くゲームをやめられたぞ」



「ちょっとー!もうすぐ私上がりだったのにー!央度さんも余計なことしないでよね?」



「なんでワイが怒られるんや!!おかしいやろ!!な?坊主?」



「誰が坊主だよ!!せめて名前で呼べ!!……でもさ、お前本当に城田を蹴落としたいだけなのか?俺にはそうは見えないぞ?」



 瞬の言葉に、央度は大きく目を見開く。



「どういう意味や?ワイはこいつをどうにかしてやりたいって……」



「本当はさ、気持ち良くツッコミを入れたいだけなんじゃねえの?だって60年もツッコミの練習してきたのに、やることが俺たちの邪魔って矛盾してるし。お前さ、本当は城田と漫才みたいな会話がしたいんじゃねえの?」



 瞬は同じツッコミとして、央度の気持ちを見透かしていた。瞬もかつては上手くツッコミを入れることができなかった。だが周囲のボケに合わせてツッコミが上手くなっていき、今のツッコミマシーンに成長したのだ。

 そんな瞬には、央度の気持ちが良く分かっている。央度は、ただ城田にツッコミを入れたいだけなんだ。瞬はそう思っていた。



「ワイは……ワイは……」



「正直になれよ。城田に素直にツッコミをいれて、仲良くしたらいいだろ。それに何の問題があんだよ?」



「うるさいうるさい!!ワイは城田に復讐するんや!!そのために今まで生きてきた!!さあ、黄土色に染まるんや!!」



 そう言うと央度は両手を前に突き出し、黄土色の光線のようなものを発射する。

 瞬の視界は、一瞬にして黄土色一色になった。

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