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【完結】この神が送り届けよう〜白の世界から迷子救出!〜  作者: 仮面大将G


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第98話 黒の世界 その2

「城田……!何故お前がもうここにいるのです?」



「我に察知できぬ危険など無い。瞬の身に危険が迫っているのを察知し、急いで新幹線でここに来たのだ」



「でもアナウンス博多って言ってなかった!?ここ博多なの!?」



「うむ。広い意味で言えば博多だ」



「博多に広い意味も狭い意味もねえよ!!博多は博多だわ!!」



 城田はゆっくりと黎田に近寄り、二人は至近距離で向かい合った。

 そのまま城田は右手を上げると、黎田に何かを手渡す。



「これを受け取るが良い。福岡土産だ」



「良いんですか?僕福岡大好きなんですよ!やったー!」



「このタイミングで土産渡すな!!黎田もそれで喜ぶな!!ここバカばっかりか!!」



「ゾウゾウ!やっぱり首を止めるのが上手くいかないゾウ!」



「お前はロボットダンスの練習やめろ!?」



 暴れ回るアジアアフリカインドゾウを全身で押さえながら、瞬は城田と黎田に視線を戻す。

 二人は座って紙袋から福岡土産を出し、どれを食べるか物色していた。



「わー!明太子がたくさんありますね!生明太子に炙り明太子!明太ごはんまでありますよ!」



「うむ。色々買って来たぞ。福岡はあまおうも有名であるな。このあまおうタルトはどうだ?」



「豚骨ラーメンも種類たくさんありますね!僕豚骨ラーメンには目が無いんです!」



「それに加えて通りもんもあるぞ。福岡と言えば通りもんであろう」



「お前ら何仲良くなってんだよ!!因縁の相手とか言ってたのは何だったの!?」



「ゾウは明太えびせんべいが食べたいゾウ!」



「入って来んなお前!!大人しくしとけ!!」



 城田と黎田は次々に福岡土産を開封し、ひょいひょいと口に入れていく。城田はいつの間にか炊飯器を用意しており、アツアツの白飯をよそって黎田に渡していた。

 黎田は左手を上げて座布団とちゃぶ台を出し、お茶まで淹れている。



「おいこら何リラックスしてんだ!!せっかくクライマックスっぽいシーンだったのに!!」



「ふぁふぁふふふぉふぁふぃふぁふぇはよいほほへふぁるふぉ」



「食ってから喋れ!!いやてか食うのやめろ!!」



 黎田はごくりと明太ごはんを飲み込んでから、再び口を開いた。



「なんで邪魔するんですか!せっかく美味しい福岡土産を堪能してるっていうのに!」



「お前が敵キャラだからだよ!!何あっさり懐柔されてんだよ!!」



「……はっ!そういえば僕敵キャラでした!忘れてた!仕方ない、ここで瞬さんには消えて貰うことにしましょう」



「思い出してからの切り替え早過ぎるわ!!あと多分だけど俺消した後お前すぐ食事に戻るだろ!!」



 黎田は右手に炙り明太子を持ち、左手には鎌を出現させた。鎌を振り上げた格好のまま、黎田は瞬に向かって走り出す。



「おいツッコミ入れてる場合じゃねえ!!逃げねえと!!」



「ゾウゾウ!ゾウに任せるゾウ!逃げるゾウ!」



 アジアアフリカインドゾウは瞬を背中に乗せたまま駆け出す。真っ白になった世界で、ゾウに乗った瞬と真っ黒な黎田の追いかけっこが始まった。

 それを眺めながら、城田はもつ鍋に手をつける。



「この野郎一人だけ食事継続しやがったな!?何しに来たんだお前!!」



「我の役目は黎田を懐柔すること。それはもう終わったであろう?」



「失敗に終わってんじゃねえか!!ていうかやべえ、黎田速えぞ!!ゾウ、もっとスピード上げてくれ!!」



「ゾウゾウ!これ以上は無理ゾウ!ナイスバディなメスゾウがいないと頑張れないゾウ!」



「チャラいなお前!!アジアアフリカインドゾウって名前なのにイタリア出身だったりする!?」



 そんなことを言っているうちに、アジアアフリカインドゾウのスピードがだんだんと落ちていく。遠くに速い足音が聞こえる。黎田はもうすぐ後ろまで迫っており、何度か瞬の背中スレスレに鎌を空振りしている状況だ。



「大人しく捕まってください!城田に『人間を守れなかった神』というレッテルを貼り、僕の君主の神様ランクを上げるために!」



「待ってお前の君主って城田よりランク下なの!?モハ〇ド・アリより下ってこと!?」



「うるさいですよ!さあ、次の一撃であなたは終わりです!」



 瞬が振り向くと、黎田が鎌を振り上げたところだった。ああ、もうダメだ。こんなふざけたやつに自分は殺される。もっと生きたかったなあ。そんなことを考えながら、瞬は目を瞑った。

 瞬の耳には速い足音と黎田の怒号だけが聞こえている。瞬はより強く目を瞑った。



「ぎゃあああああああ!!」



 次の瞬間、黎田の怒号が悲鳴に変わった。



「なんだ!?何が起こった!?」



 瞬が目を開けると、さっきまでいた真っ黒な影は見えない。

 代わりに瞬の視界にいたのは、両腕がゴリラになった小柄な女子高生だった。



「真美ちゃん参上!私のかわいい後輩くんに何してくれてんのー!」



「先輩!!何してるんですか!!」



「城田さんが脳内に話しかけてくれたの!『隣の客はよく鮭食う客だ』って」



「せめて意味あること話しかけろよ!!なんでそのフレーズ気に入ってんの!?」



「それでこれは瞬くんのSOSだって思ってね!急いでシロオリックスを走らせて来たんだ!」



「まだシロオリックス乗ってんですか!!……いや俺もゾウ乗ってたわ!!人のこと言えねえわ!!」



 真美がゴリラの両腕でマッチョポーズを決めていると、吹っ飛んで倒れていた黎田がゆっくりと起き上がった。



「くっ……。不意打ちとは卑怯な……!」



「あー!まだ生きてる!ダメだよちゃんと吹っ飛んで行かないと!」



「鬼ですか!?いや鬼っていうかゴリラだけど!!」



 黎田は再び鎌を手に取り、今度は真美の方へ向かって走り出した。



「こうなったらあなたから消してあげましょう!こんなことをしてタダで済むとおmぼっごお!!」



「うるさいよ!吹っ飛んじゃえー!」



 真美は黎田の言葉を遮って再びゴリラの腕を振りかざし、思いっきり殴りつけた。黎田の腹にクリティカルヒットした真美の拳は綺麗に振り抜かれ、黎田は遥か彼方へと飛んで行ってしまった。



「わお!めっちゃ飛んだね!成田から成田ぐらい飛んだかなー?」



「一周して戻って来てんじゃねえか!!それじゃダメでしょ!?」



「真美よ、よくやったぞ。これで邪魔者はいなくなった」



「お前は福岡土産食ってただけだけどな!?」



 三人が再開していつものペースに戻った矢先、真っ白だった世界が一瞬にして黄土色に染まった。

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