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【完結】この神が送り届けよう〜白の世界から迷子救出!〜  作者: 仮面大将G


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第97話 黒の世界 その1

 真っ暗で何も見えない中、アジアアフリカインドゾウの声が響く。



「ここで右足を止めて、右手も止めて……ああ!首が止まらなかったゾウ!」



「やかましいなお前!!もうちょっと緊張感持てる!?」



「でもロボットダンスを練習するところを誰かに見られるのは恥ずかしいゾウ……。真っ暗な今こそチャンスだゾウ!」



「もっと焦れよ!!気田が左手上げたらいきなり真っ暗になったんだぞ!?」



「そうゾウよ?だからチャンスだって言ってるゾウ」



「ダメだこいつバカだ!!」



 すると真っ暗な空間のどこかから、気田の声が聞こえて来る。



「瞬さん、ようこそ『黒の世界』へ。どうです?この何も無い真っ黒な世界は」



「黒の世界……?おい気田、こんなとこに俺を連れて来てどうするつもりだ!?それにお前何者だよ!?」



「質問は一つずつにして欲しいですねえ。仕方ないので一つだけ答えてあげましょう。僕のスリーサイズは右から88、88、88です」



「聞いてねえわ!!スリーサイズって普通上から言うんだよ!!何お前右から全部88って信号機か何か!?」



「ええ。歩行者信号です」



「じゃあ横に3つねえよ!!何の数字だったんだ今の!!」



 視界が奪われた中でも瞬のツッコミは鋭く響く。そんなツッコミに対し、気田はふっと笑ってまた声を発した。



「流石ここまでの旅でメインツッコミを担ってきただけある。なかなかのツッコミです。で、何が聞きたいんでしたっけ?僕の好きな演劇でしたっけ?」



「聞いてねえって!!お前記憶力どこに捨ててきたの!?」

 


「僕の好きな演劇は『アラズン』です」



「アラズンかよ!!演劇の世界のやつ!!あれ青森のりんご農家の話だぞ!?」



 気田はまたふっと笑い、真っ暗なままの空間で話を続けた。



「冗談ですよ。僕が何故あなたをここに連れて来たのか、僕が何者なのか、そして佐賀県の名物料理は何かですよね?」



「そうだけど最後のは要らねえよ!!佐賀の料理今知らなくていいわ!!」



「お答えしましょう。まず僕の本当の名前は黎田部落句(くろだぶらっく)。この『黒の世界』を支配する神です」



「黒田じゃねえのかよ!!……まあいいや、それでお前はなんで俺をここに連れて来たんだよ!?」



「それは、僕の因縁の相手である城田保和糸に勝利するためです」



「城田が……因縁の相手?」



 気田、改め黎田は声のトーンを落とし、どこか憎しみの籠った話し方に変わった。



「あの城田とかいうふざけた神は、僕の君主をコケにした男なんです。あの男は神様学校で同期だった僕の君主に対してこう言い放ったんです。『隣の客はよく鮭食う客だ』と」



「柿じゃなくて!?なんで鮭ばっかり食ってんだよ!!熊か!!」



「それを聞いた僕の君主は、『柿じゃなくて!?なんで鮭ばっかり食ってんだよ!!熊か!!』と言いました」



「俺のツッコミと同じこと言ったの!?なんか恥ずかしいわ!!」



「それから僕の君主は城田に対してライバル意識を持つようになりました」



「なんで!?あいついつも通りだと思うけど!?」



「僕の君主は、それ以降城田をなんとかしてやり込めたいと考えていました。そんな時にあなたたちが白の世界へやって来た。これがチャンスだと思い、僕があなたたちの帰り道を塞いだのです」



「俺たちが直接帰れなかったのお前のせいなの!?あれ、でも城田は神様ランクの問題みたいなこと言ってた気が……」



 黎田はそれを聞くと突然高笑いを上げた。



「ブーラックックック!」



「それ笑ってんの!?クセ強過ぎねえ!?」



「あのバカは自分の神様ランクの問題だと思っていたようですが、実際は違います。僕が妨害しなければ、あなたたちは警察の世界を通って直接元の世界へ帰ることができたはずです」



「警察の世界は通るのかよ!!なんでアルセーヌ・ショパンと会うのだけは避けられねえんだよ!!」



「さてそういうことなので、城田に一泡吹かせるために、あなたにはここで命を落として貰いますよ」



「えまじで!?俺こんなふざけたやつに命奪われるの嫌なんだけど!?」



「さあ、漆黒に染まって貰いましょうか!」



 黎田が左手を上げようとしたその時、世界が一瞬にして真っ白に染まった。



「なッ!?何が起こったんです!?あなた、何かしましたか!?」



「してねえよ!!俺が何かできる状況じゃねえだろ!!」



 黎田は瞬の目の前まで来ていたようで、その姿が明らかになった。真っ黒な髪に真っ黒な肌、真っ黒なスーツを着た男だ。目があるであろう部分はより黒く虚ろで、穴が空いているように思える。


 そんな黎田の姿に瞬が少し引いていると、真っ白になった世界に声が響いた。



『終点博多、終点博多です。お忘れ物、落し物の無いようお気をつけください〜』



「緊張感ねえなおい!!新幹線のアナウンスじゃねえか!!……待てよ、てことは!」



「好き勝手してくれたようだな、黎田よ。我もここまでされると黙っていないぞ。最近値上がりしたものを一つずつひたすら聞かせてやっても良いぞ」



「もっと内容のあること話せよ!!なんでこのタイミングで値上がりの話すんの!?井戸端会議か!!」



 新幹線のドアが開き、2号車から降りてきたのは、真っ白な男。白の世界の神、城田保和糸であった。

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