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【完結】この神が送り届けよう〜白の世界から迷子救出!〜  作者: 仮面大将G


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第94話 ロボットの世界 その2

 無機質なロボットの世界に城田の歌声が響く。



「白い城田の中に〜 お豆腐は煮えて〜♪

遥かな空の果てまでも〜 鍋は煮え立つ〜♪」



「お前何の歌歌ってんだよ!!ただ豆腐が煮える歌じゃねえか!!」



「うん?豆腐が煮えるのを見るのはこの世の何よりも幸福であろう?」



「それお前だけだろ!!なんてタイトルの歌だよ!!」



「『煮え立ちの日に』だ」



「やかましいわ!!煮え過ぎだろ!!」



 すると黙っていた真美がスっと立ち上がった。



「今〜厚揚げの〜時〜!♪」



「こらサビ歌うな!!なんで乗っかれるんですか!?」



「揚げ出そう〜!豆腐信じて〜!♪」



「揚げ出そうの説明だけお願いできます!?ていうかもう揚げてんじゃねえか!!煮てねえ!!」



「さて皆さん、最初の友達ロボット候補はこいつです」



「お前よく普通に進められんな!!」



 木海が指差した先には一体のロボットが立っている。白いボディに顔と手が付いており、よく見るお喋りロボットのような見た目だ。



「わお!めっちゃロボットだね!話しかけたらちゃんと湘南のチャラい人で返してくれるの?」


 

「なんで芸人の特技みたいなの期待してるんですか!!そんなんじゃないでしょ絶対!!」



「うむ。では我が話しかけてみようではないか。お前は年々夏が長くなっていることについてどう思うのだ?」



「何を聞いてんだお前!!」



 すると白いロボットの目が光り、そのまま話し始めた。



「夏って長い方がいいじゃん!サーフィンできる季節が長くなるってことっしょ?めっちゃテンション上がる〜!」



「ちゃんと湘南のチャラい人で返してきた!!すげえ高性能だな!!」



「どうですか?このロボットとは仲良くなれそうですか?」



「チャラいから無理!私もっと誠実な人がいいなー!」



「先輩からチャラい人求めたんですからね!?」



 次に木海が三人に紹介したのは、丸いロボット掃除機だ。



「こいつはどんなゴミでも吸い取ってくれる最新のロボット掃除機です!性能を見てみますか?」



「うむ。では我が捨てた羞恥心を吸えるか?」



「何吸わせてんだ!!お前が羞恥心捨てたのいつの話だよ!!」



「もう三日になるか」



「逆にそれまでは羞恥心あったの!?」



 するとロボット掃除機は城田の周りを回り始め、何かを吸い取った。次の瞬間、ロボット掃除機のボディが赤く染まり、言葉を発する。



「こ、こんな上裸コートで歩くなんて恥ずかしい……」



「本当に吸い取った!!めちゃくちゃ優秀だなこいつ!!」



「じゃあ次は私が捨てたプライドを」



「普通のゴミ吸わせてあげられます!?」



「どうですか?こいつとは仲良くなれそうですか?」



「先輩と城田が遊び過ぎるから無理!!」



 最後に木海が紹介したのは、大きな画面が顔部分に付いたロボット。大きな頭を支えるために、ボディは太くずっしりしている。



「こいつで無理ならこのミッションは無理です!こいつは人の心を映すロボット。今からあなたたちの心をモニターに映して貰います!」



「心……?あ!ご飯の上にハンバーグと目玉焼きを乗せてグレービーソースをかけたハワイの郷土料理のこと?」



「なんで心とロコモコ間違うんですか!!なんだ心とロコモコって!!早口言葉か!!」



「では皆さんの心を映して貰いますよ」



 木海がロボットのボタンを押すと、モニターに映像が流れ始める。

 そこには、鍋の中で煮え立つ豆腐の映像が流れていた。



「これ城田の心だろ!!まだお前豆腐煮てたの!?」



「うむ。腹が減ってな。やはり豆腐は煮るに限る」



「おい木海!!こんな豆腐のことしか考えてねえやつの心映してないで、俺たちの心映せよ!!」



「ええ?仕方ないですね、ほらどうぞ」



 木海が再びロボットのボタンを押すと、モニターの映像が切り替わった。そこに映っていたのは、瞬と真美の二人。何やら道で追いかけっこをしているようだ。

 画面の中の二人は、何かを言っている。



『ぐへへー、瞬くんを解剖して肝臓を取り出して、その後お腹空いたからラーメン食べに行ってやるう〜!』



『なんで肝臓は取り出して放置なんですか!!せめて有効活用してくださいよ!』



『肝臓の肝太郎だよ!』



『歌舞伎役者みたいな名前付けんな!』



 その映像を見た瞬と真美は、互いに目を見合わせる。



「これ、私たちが出会った時のことだよね?」



「ですね。これが今流れてるってことは……どういうことだ?」



 すると今まで黙って映像を流していたモニターロボットが、突然話し始めた。



「そりゃあよう、おめえらが戻りてえって思ってるってこったよ。元の世界にな」



「喋り方クセ強いな!!お前喋んのかよ!!」



「どうでい?俺のモニターで流した映像で、何を思ったい?」



「我は湯豆腐を食べたいと思ったぞ」



「お前とりあえず黙ってろ!!そうだな、俺はやっぱり帰りたくなったな……」



 瞬と真美がしおらしくなったところで、モニターロボットが更に声をかける。



「俺ぁおめえらがそろそろ元の世界に帰りてえって言ってるように思うぜ。一つだけ教えといてやらぁ。おめえらがすぐに元の世界に戻れねえのは、何者かが邪魔してるからみてえだぜ」



「それお前が言うの!?ぽっと出のキャラが!?」



「とりあえず仲良くなれたみたいですね。この世界はクリアとしましょう!」



「雑だな終わらせ方が!!え、含みあるけど大丈夫!?」



 真美はしおらしかったさっきの自分を忘れたかのようにいつものテンションに戻り、城田に話しかけている。



「わーい!城田さん、次はどんな世界?」



「うむ。次は動物園の世界だ。どんなアルビノの動物がいるか楽しみだな」



「アルビノ限定なの!?白けりゃ良いってもんじゃねえだろ!!」



 こうして三人は、ロボットの世界を後にした。だが瞬だけが少しもやっとした気持ちを抱えていたのだった。

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