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【完結】この神が送り届けよう〜白の世界から迷子救出!〜  作者: 仮面大将G


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第89話 夏休みの世界 その1

 城田か白いドアを開けると、風鈴の音が聞こえてくる。

 瞬と真美が目を閉じて風鈴の音を聞いていると、城田はそっと白いドアを閉じた。



「え!?お前なんで閉めたの!?」



「いや、我は風鈴の音が苦手でな。聞くと髪型がスキンフェードになってしまうのだ」



「特殊なアレルギー反応!!いいだろそれぐらい!!我慢しろ!!」



「でもでも、スキンフェードになっちゃったら城田さん困るんじゃない?強いかゆみのある発疹とか38℃ぐらいの熱が出るかもだよ?」



「スキンフェードのこと水ぼうそうだと思ってます!?」



「真美よ、倦怠感を忘れるでないぞ」



「だから水ぼうそうかって!!いいから次の世界行くぞ!!」



「えー。知らないよ我の髪型で悶えても」



「安心しろ何とも思わねえから!!」



 改めて城田が白いドアを開けると、再び風鈴の音が聞こえてくる。

 三人が出たのは、庭に繋がる縁側だ。どうやら誰かの家に出たらしいが、話し声は聞こえてこない。ただ小さな庭が見える縁側に、風鈴の音が響くのみだ。



「わお!結構暑いね!こんな日はンドレが食べたくなるね!」



「ピンと来ねえ料理!!なんて言いました!?」



「ンドレだよ!カメルーンのソウルフード!」



「知らねえって!!え、それ食べて育ってきたんですか!?」



 瞬と真美が騒いでいると、城田の元に一人の男が近づいて来た。



「お客さん、今日はどうします?」



「うむ。おまかせで頼むぞ」



「OKっす!じゃ、スキンフェードにしますね」



「待ってスキンフェードって普通にカットされてなんの!?アレルギー反応でもなんでもねえ!!」



 どこからか現れた美容師が城田のカットをしている以外は、ただただ平和な夏のひと時。瞬と真美は縁側に座り、庭を眺めながら目を閉じた。

 二人の耳には、風鈴の音が入って来る。

 そして、もう一つ聞こえる音があった。



「お客さん休みの日とか何してるんすかー?」



「我は主に湯を沸かしているぞ」



「へー!なんかコーヒーとか淹れるんすか?」



「いや、やることが無いからなんとなく湯を沸かしているだけだ。早く沸いてしまうとやることが無くなるから、最初は30℃ぐらいでゆっくり温めているぞ」



「なんか優雅っすね!その沸かしたお湯はなんかに使うんすか?」



「うむ。冷ましてから飲むぞ」



「まじ二度手間っすねー!」



「おいうるせえな美容師との会話!!あと城田お前普段暇過ぎるだろ!!」



「ちょっと瞬くん!人がどう暇つぶししようが自由でしょ!私なんか魔法でコウモリを喋れるようにしてるんだから!」



「暇つぶしが魔女過ぎる!!コウモリと何喋るんですか!!」



「え?そりゃ今度コウモリが出馬する参院選での公約について」



「コウモリに日本の未来託すのやめて貰えます!?」



 城田のカットが終わったようで、美容師はどこかへ去って行った。ゆるふわボブになった城田が瞬と真美のところへ寄って来る。



「待て待て!!スキンフェードって話だっただろ!?」



「うむ。いつの間にかこうなっていたな。風鈴の音を聞くと美容師が現れて勝手にカットしてしまうのだ」



「それは分かったけどなんでボブ!?気持ち悪いな!!」



「髪型は我も選べぬのだ。文句を言われても困るぞ」



「でもでも、お金かかってないんでしょ?めっちゃいいじゃん勝手カット!」



「そんなキッ〇カットみたいに!!」



 三人が城田のゆるふわボブをなんとかしようと騒ぐ中、更に大きい声が家に響いた。



「ただいまー!あれ?誰かいるぞ?」



 バタバタと足音を立てて現れたのは、タンクトップに短パンを履いた坊主の少年。虫取り網と虫かごを持ち、麦わら帽子を被っている。



「あー!あんたたちか!そろそろこの世界にも来るって噂だったよ!」



「え?私たち噂になってるの?あれかな、私が文化祭のコスプレ企画で魔女の格好して魔法使ったらぶっちぎりで優勝したから?」



「なんですかその話知らない!!なんの魔法使ったんですか!!」



「あれは私が1年生の時の話だからねー!その時は生徒指導の竹山先生をスキンフェードにしたんだよねー!」



「スキンフェードしつこいな!!この話だけで一生分のスキンフェード言ってる気がする!!」



「それよりそこの坊主よ。我々が噂になっているとはどういうことだ?」



 珍しく城田が真面目に少年に尋ねる。すると少年は麦わら帽子を脱ぎながら答えた。



「なんだあんたたち自分で知らないの?もう結構な数異世界を回ってきたんでしょ?それぞれの世界で必ずミッションをクリアする三人組がいるって噂になってるよ」



「かなり強引にクリアしてきたミッションばっかりだけどな……。異世界ってそんな繋がってるもんなのか?」



「普段は繋がってないんだけどさ、なんかお菓子の世界のスティーブンソンって人があんたたちのこと触れ回ってるよ」



「なんであいつだけ色んな世界にいんの!?優遇され過ぎじゃね!?」



 三人と少年が話すのに合わせ、そよ風が吹いて風鈴が揺れる。その揺れる風鈴に反応した真美が両手で交互に風鈴をパンチしながら聞いた。



「何してんだ!!猫か!!」



「それで、あなたがここの管理人ってこと?」



「ああそうだよ!オイラは夏休みの世界の管理人、秋里だよ」



「世界にそぐわねえ名前!!」



「あんたたちは元の世界に帰るために旅をしてるんだってね?オイラも協力するよ!てことでミッションを伝えるよ!夏休みを満喫することだよ!」



「なんか抽象的なミッションだな……。具体的にどうなったらクリアとかねえの?」



「オイラと一緒にこの世界で過ごして、十分楽しんだって判断したら出してあげるよ!」



「おっけー!じゃあ早速飛行機でフィンランドに」



「この世界で満喫して貰えます!?」



 こうして三人は、秋里と共に夏休みの世界へと繰り出した。

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