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【完結】この神が送り届けよう〜白の世界から迷子救出!〜  作者: 仮面大将G


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第86話 王様の世界 その2

「それでー、アタックしようと思ってレシーブ上げたらー、ロクセー十八世のやつにアタック取られちゃったんすよねー」



「なるほどー!それでバレーボールが嫌になったんだね!」



「うむ。気持ちは分かるぞ。我も神様学校に通っていた時、体育の授業で行った人生ゲームで同じようなことがあった」



「体育でボードゲームすんな!!バレーボールと同じ状況にはならねえだろ!!あとなんで王様バレーボール部の設定なんだよ!!」



 全部ツッコミを入れた瞬は、肩で息をしながら黒豆をかき込んでいる。



「瞬くん黒豆好きなの?ロボット掃除機のように吸い込むじゃん!」



「普通の掃除機じゃダメでした!?いや別に黒豆が好きなわけじゃ……」



「では何故お前は黒豆を必死に食べているのだ?我は黒豆が好きではないから良いが」



「そっすよー。黒豆好きじゃないのに黒豆ばっかり食べてるの変ですよ?」



「いや……お前らが他全部食うからだろ!!」



 そう、長い長いテーブルにところ狭しと並べられていたおせち料理は、瞬が手をつける前に全て食べ尽くされてしまっていた。


 何故こうなったのかと言うと、ヨンセー二世と城田、真美の二人が会話をしているのに、瞬が全てツッコミを入れていたからだ。


 ヨンセー二世は学生時代バレーボール部に所属していた。中学でバレーボール部だった真美と話が合い、バレーボールあるあるを言っていたのだが、そこに城田が人生ゲームあるあるで参戦して来たため、瞬は食事を中断せざるを得なかったのだ。

 そしてその間におせち料理は黒豆を除いて全て食べ尽くされ、エネルギーを使って空腹の瞬は仕方なく黒豆を死守していたというわけだ。



「うむ。なるほど。要するに黒豆を吸い込んで黒豆瞬になろうとしていたのだな」



「話聞いてた!?誰が星の瞬ビィだよ!!……なんだ星の瞬ビィって!!」



「よーし!じゃあミッション始めよー!」



「俺の食事を待たんかい!!」



 瞬が黒豆を食べ終わるのを待って、三人はようやくミッションに向かった。

 しかし喋り過ぎて食べるのが遅くなるのはやめて欲しいものだ。相手のペースに合わせる必要は無いが、喋ることに集中し過ぎて遅くなるのは話が違う。自分の話で勝手に盛り上がり、著しく食べるペースが遅れるのはただ迷惑なものだ。お互いが気持ち良く食べ、喋るペースを保っていくことが、より良いカップルの関係性を築く第一歩なのではないだろうか。

 それにしても最近のカップルは



「話長えな!!誰が地の文の持論ばっか聞きてえんだよ!!あと俺ツッコミの義務果たしてただけだからね!?文句言われる筋合い無いからね!?」

 


「ちょっと瞬くん!早く体育館行くよ!」



「完全にバレーボールしに行くつもりだろ!!」



「いや、我はちゃんと人生ゲームを持って来ているぞ」



「お前は黙ってろ!!」



 三人はヨンセー二世と共に中庭に出て、暖かい日差しの下でどうしたら同盟を結べるか考え始めた。



「でもやっぱりさ、その喋り方が問題なんじゃない?私的にはもっとスワヒリ語感を強くした方がカッコいいと思うよ!」



「スワヒリ語は忘れろ!!でも喋り方が問題なのはそうですね」



「そっすかねー。これでも王様らしくしてるつもりなんすけどねー」



「嘘つけお前!!三河屋じゃねえか!!」



 すると城田がポンと左膝を叩き、何かを思い付いたようだ。



「なんで左膝叩いた!?」



「いや、前も言ったが脚気持ちなのだ。今のはセルフ検査だ」



「セルフでやって意味あんの!?まあいいからとりあえず何思い付いたのか言えよ!」



「うむ。思ったのだが、我の喋り方を真似するのはどうだ?我は神という設定上、ボケはするものの偉そうな話し方をするようにキャラメイクされている。それをこのヨンセー二世にも応用するのはどうだ?」



「キャラメイクとか言うな!!冷めるわ!!」



「でもでも、それ良さそうじゃない?ほら、城田さんって話し方は偉そうじゃん?ウツボカズラぐらい」



「ウツボカズラのこと偉そうだと思ってたんですか!?」



「じゃーとりあえずそれで交渉してみるっす。行けたらラッキーすね」



「全然期待してない!!」



 ヨンセー二世は城田の話し方を数時間練習し、ロクセー十八世を呼んで同盟を結ぶ時が来た。



「よし、では余が同盟を結ぶところを見ているのだ」



「うむ。これで完璧であるな。我が教えただけある」



「一人称違うだけで話し方一緒だとこんがらがるな!!早く終わらせて貰える!?」



 すると中庭に小さなエンジン音が聞こえ、原付に乗った男が現れた。男は黒い短髪に金色の王冠を乗せ、青いマントを纏っている。

 男は原付を止めると、四人の前に来て言った。



「ちわー。王様でーす」



「こいつもかよ!!だから三河屋かって!!」



「同盟結びにきやしたー。ヨンセー二世さんよろしくー」



「うむ。余がヨンセー二世である。同盟を結ぼうではないか」



「おー。なんかいつもと違って威厳あるっすねー。このロクセー十八世としてもやり甲斐あるっす。じゃ、同盟締結ってことで」



「あっさり終わった!!え、こいつどの口でヨンセー二世のこと軽過ぎるって言ってたの!?」



「やったー!これでこの世界はクリアだね!城田さん、次はどんな世界?」



「うむ。次は自動販売機の世界だ。着々と元の世界に近付いているから安心しろ」



「サクッと次行こうとしないで貰える!?俺まだ整理できてねえんだけど!?」



 こうして三人は、王様の世界をクリアしたのだった。



「本当にクリアなのかよ!!え、本当に!?」

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