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【完結】この神が送り届けよう〜白の世界から迷子救出!〜  作者: 仮面大将G


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第85話 王様の世界 その1

 城田が白いドアを開けると、いきなり広い王宮に出た。段差の上に乗った天蓋付きの玉座の周りには甲冑を着た騎士が数人並び、手前には大きなシャンデリアのようなものがぶら下がっている。


 その光景を見て真美は感嘆の声を上げた。



「わお!めっちゃ広いね!広すぎて私の部屋作りたいなー!」



「住むなこんなとこに!!いきなり玉座の間をリフォームすな!!」



「我もあそこに座りたいぞ。あの段差に」



「玉座じゃなくて!?段差で良いの!?」



 いつものように騒ぐ三人の元へ騎士の一人が近づいて来て、城田の喉元に槍を突きつけた。



「静かにしろ!これから王がお見えになると言うのに、騒がしいぞ!」



「騒がしいとは何だ?粘度の高い液体を霧状に噴出させることにより、各種照明機材の光源やレーザーの光のラインを見えやすくし、より照明効果を高めるための機械のことか?」



「それスモークマシンだろ!!説明も長えしボケも雑だし呑気だし何してんだお前!!」



「お前たち……ふざけているな?今ここで王に裁いて貰おうではないか!」



「わーい!私三枚おろしが良い!」



「その捌くじゃないですよ!!だから呑気かって!!」



 すると後方の扉が開き、数人の騎士が素早く並んだ。



「王の、おなーりー!!」



「そんな殿様みたいに来んの!?」



 瞬のツッコミが響く中、ゆっくりと男が現れた。パーマをかけたような髪質の茶髪には金色の王冠が乗り、赤いマントを翻して現れた男は、三人の前までやって来て軽く右手を上げた。



「ちわー。王様でーす」



「そんな三河屋みたいに!!」



「あんたらがこの世界に来たっつー三人組ですね。どーぞよろしくです。ちわー。王様でーす」



「うるせえなお前!!話の内容うっす!!」



 王様は三人の目の前でヤンキー座りをし、白くて細い円柱状のものを取りだした。



「なんでヤンキー座りなんだよ!!ていうかおい、こんな玉座の間でタバコなんか吸って良いのか?」



「あ、これココアシガレットです。好物なんですよねー。ちわー。王様でーす」



「好物が庶民的!!てかうるせえなお前!!」



「わお!私もココアシガレット好きだよ!シチューに入れると美味しいんだよねー!」



「味覚燃えるゴミの日に捨てて来ました!?」



「我はココアシガレットを砕いて粉状にし、オブラートに包んで飲むのが好きだぞ」



「粉薬の飲み方!!味しねえだろもう!!」



 王様はココアシガレットを齧りながら、騎士を一人呼び寄せてこそこそと耳打ちをする。

 騎士は三人の目の前にやって来て、敬礼してから言った。



「今から王様が会食をしながらミッションについて説明したいとのことです!」



「なんで騎士通した!?自分で言えよ!!」



「そりゃだって瞬くん、知らない国の王様だもん。日本語話せないでしょ?」



「さっきまで喋ってましたけども!?」



「なるほど、では我がスワヒリ語で話しかけてみようではないか」



「一か八かで選ぶ言語じゃねえよ!!間違え過ぎだわ!!」



 すると真美が早速王様に向かって声をかける。



「Je! ni sahani gani unayopenda ya Mwaka Mpya?」



「本当にスワヒリ語でいきやがった!!意味ねえだろ!!」



「Ninapenda kinton ya chestnut.」



「なんで答えられてんだよ!!え、ここタンザニア!?」



「『好きなおせち料理は何ですか?』『栗きんとんが好きです』と言っているぞ」



「それ聞いてどうすんだよ!!結局意味ねえじゃねえか!!」



「ではこれから王様との会食を行っていただきます。用意はもうできておりますので、こちらへ」



 騎士に先導され、三人は食事室へと通された。長い長いテーブルには黒豆や数の子、伊達巻に紅白かまぼこ、栗きんとんなどが並んでいる。



「おいおせち料理じゃねえか!!王様ってこういうの食うの!?」



「Sasa, tafadhali kaa popote upendapo.」



「そろそろスワヒリ語やめない!?なんて言ってるか分かんねえんだよ!!」



「ではお好きな席に座ってくださいって言ってるよ!」



「先輩はなんでスワヒリ語分かるんですか!!」



 三人は各々席に着く。瞬は王様から少し離れた奥の席、城田と真美は王様の両隣に座った。



「お前らえげつない根性してんな!!よくこの場でそこ座れるわ!!」



「じゃ、本題に入りますねー。ちわー。王様でーす」



「日本語に戻ったら戻ったでうるせえなお前!!」



 王様は瞬のツッコミをスルーし、三河屋口調で話し始める。



「僕王様なんですけど、名前はヨンセー二世って言います」



「ややこしいな名前!!四世だか二世だかはっきりしろよ!!」



「実は今、隣の国のロクセー十八世国王と友好同盟を結ぶ予定なんすけどね」



「またややこしいな名前!!」



「同盟を結ぶのに、どうも僕軽過ぎるって言われるんですよ。信用し切れないっつって。何でっすかねー?」



「どう考えてもその喋り方だろ!!録音して聞かせてやろうか!!」



「つーことで、僕が同盟を結べるように手伝って欲しいです。話は以上っすね。じゃ、おせち食べましょう」



「お前おせち食べたいだけだろ!!」



「わーい!私ブラックバスの照り焼きから食べるー!」



「外来魚の縁起物は無いですよ!?」



「我は紅白かまぼこの白だけを食べるぞ。そろそろゲームセンターの世界で獲得したホワイトチョコレートが切れて消えかかっているのだ」



「ああほんとだよく見たら薄くなってる!!その設定久しぶりに出てきたな!!」



 こうして三人は、ヨンセー二世と共におせち料理に手をつけた。

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