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【完結】この神が送り届けよう〜白の世界から迷子救出!〜  作者: 仮面大将G


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第81話 ハロウィンの世界 その1

「よし、ではハロウィンの世界へ向かうぞ」



「おー!ところでハロウィンって何だっけ?自分にも相手にも利益があること?」



「それウィンウィンでしょ!!今からビジネスとか始めようとしてます!?」



「我もビジネスには興味があってな。困難な状況にも屈せず、継続的に頑張れる体力と精神力の持ち主になりたいものだ」



「それタフネス!!え、何また試されてる!?」



 困惑する瞬の元に、真美が何やら資料のようなものを持って近づく。



「ところで瞬くん、このカボチャを売っていけばお金がどんどん増えるシステムがあるんだけどやらない?」



「怪しいビジネスに勧誘すな!!おい城田、早く行くぞ!!」



「少し待て。今資料を読んでいるのだ」



「怪しいビジネスに参加すな!!」



 瞬に急かされた城田が仕方なく白いドアを開けると、そこは暗い暗い夜の墓場。ジャック・オー・ランタンがところどころに転がり、不気味な雰囲気を醸し出している。



「わお!めっちゃお墓だね!私も埋まろうかなー!」



「しれっと命絶つのやめて貰えます!?」



「我は墓場に来ると高い声の社長を思い出すぞ」



「ジャ〇ネット墓場!?何その通販で墓石売ってそうなやつ!?」



「すまぬな。ついとっくり」



「うっかりだろ!!不意打ちで酒注ぐな!!」



 三人が墓場で騒いでいると、墓場の向こうから人影が近づいて来る。

 何やら仮装をしてるようで、月明かりに照らされて円柱形のフォルムが浮かび上がった。

 円柱形の仮装をした女は、三人の元へやって来て話しかけた。



「ハッピーハロウィン!皆さんは元気に死んでますか?」



「元気に死ぬ定義だけ教えて!?」



「そりゃあれだよ!屋根の上を逆立ちで全力疾走しながら絶命するとか!」



「元気過ぎるわ!!多分そいつ死なねえって!!」



 円柱形の仮装をした女は、瞬と真美の会話をスルーして話を続ける。



「私はここの管理人、加藤です」



「普通だな!!え、かそう(・・・)でもねえの!?」



 加藤はツッコミを入れる瞬を見つめ、おでこを指で弾いてから話を続けた。



「なんで俺今デコピンされたの!?」



「さて、この世界はハロウィンの世界です!皆さんには、仮装をしてお菓子を集めて貰います!30人からお菓子を集めることができれば、この世界はクリアとなります!」



「ねえなんでデコピンされたの!?」



「なるほどー!で、ファンキー加藤さんは何の仮装してるの?」



「先輩ファンキーは要らないですよ!!」



「私は給水器の仮装です」



「給水器!?吸血鬼とかでなく!?給水器!?」



「ちゃんと水も出るんですよ!主におでことか脇から」



「汗だくじゃねえか!!そんなに暑いならやめとけよ給水器!!」



 加藤は額の汗を拭いながら、給水器の蛇口部分から冷水を出して地面に撒いた。



「おい蛇口から水出るなら言えよ!!びっくりするわ!!」



「とにかく、皆さんも仮装をしてお菓子を貰いに行きましょう!合言葉は知っていますか?」



「もちろん知ってるよ!トラックオンザストリートだよね?」



「ただの道行くトラックじゃねえか!!急に運送業とか始めました!?」



「我も知っているぞ。とっくりオンザストリートだろう?」



「おい路上飲酒すんな!!なんでとっくり引っ張るんだよ!!」



「皆さん違いますよ!正解は、トリツクシマモナイートです!」



「誰がそんなこと言うやつにお菓子やるんだよ!!トリックオアトリートだろ!!」



 瞬がようやくちゃんと訂正すると、加藤は頭を掻きながら言った。



「あははー、そうでしたそうでした。慣れないことすると間違えるものですね!」



「慣れてろよ!!お前ハロウィンの世界の管理人だろ!?」



「いやあ、ついぽっくり」



「うっかりだろ!!不意打ちで死ぬな!!」



 加藤は両手を腰に当て、足を肩幅に広げて目線を上げた。



「では!皆さんには今から仮装をして貰います!何になるかは自由です!はいスタート!」



「いきなりだな!!そんな急に仮装って言われても……」



「甘い!!甘いよ瞬くん!!よく噛んだお米ぐらい甘い!!」



「なんでほんのり甘いんだよ!!」



「仮装なんて無限の可能性があるんだよ!ビビっと来るものを選ばないと!」



 真美はいつになく熱くなり、瞬はその勢いに少し引いている。



「ビビっと来るものって……例えば先輩は何なんですか?」



「決まってるでしょ!私と言えば何?」



「先輩は要素が多いからなあ……。でも強いて選ぶなら魔法か相撲ですか?」



「ううん!咳止めトローチ!」



「なんで!?咳より思考が止まりましたけど!?」



 真美がトローチの仮装をしていると、城田がもっちゃりと現れた。



「どういう現れ方!?ダサいってこと!?」



「我はもう仮装を終えたぞ。見ろ、歯間ブラシの仮装だ」



「どうやってんだよ!!お前神の力で姿ごと変えたろ!!」



「うむ。今の我は正真正銘歯間ブラシだ。白い歯を守るぞ」



「一応白にはかかってんのな!!筋は通ってるわ多分!!」



 咳止めトローチの仮装をした真美と、歯間ブラシの仮装をした城田。二人に詰め寄られた瞬は、頭を抱えて座り込む。



「いやこんなのに囲まれて俺はどうしたらいいんだよ!!」



「もー仕方ないなー。じゃあ私が決めてあげるね!瞬くんはねー……」



 真美は顎に手を当てて考える。そして覚えているだろうか。瞬の一番嫌なこと。それは下半身がウミウシになることだ。

 瞬はそれだけは避けるため、両手を擦り合わせて祈った。



「下半身がウミウシは嫌だ……下半身がウミウシは嫌だ……」



「人魚の仮装だよ!」



「良かったあああ!!免れたあああ!!」



「下半身がウミウシの人魚ね!」



「免れてなかった!!それ人魚ですか!?」



「文句言わない!えい!」



 真美がどこからか取り出した杖を瞬に向けると、瞬は上半身裸、下半身ウミウシという姿になった。

 


「終わった……。俺の人生お先真っ暗だ……」



「さー!お菓子を貰いに行こー!」



「うむ。アーモンド小魚を貰えると良いな」



「お前スティーブンソン!?」



 こうして三人は、お菓子を集めに街へ繰り出した。

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