第8話 B級グルメの世界 その1
城田がドアを開けると、そこはまさに「B級グルメグランプリ」と呼べる会場だった。
「うわあ、凄いね!特にあの「白ご飯に卵を入れて炒めたらパラパラになった件」っていうのが美味しそうだね!」
「ラノベみたいなタイトルだけど要するにチャーハンだろ!!絶対普通ですよ!」
「真美よ、今「白ご飯」と言ったか?我の好物であるぞ」
「お前は黙ってろ!!」
「ちなみに大好物はグリーンカレーだ」
「なんで緑なんだよ!?白いもの食べないと消える設定じゃなかった!?」
がやがやと騒がしい会場の中でも、特段響き渡る瞬のツッコミ。だんだんと彼の声が大きくなっている気がする地の文である。
「久しぶりに出てきたな地の文!お前の感想はいらねえわ!」
「ちょっと瞬くん、地の文はほっといて行くよ?ここでは人気B級グルメのトップ3を当てないと出られないんだから」
「テレビで見たことある企画!!」
「外したら大バッシングだから気をつけるのだぞ」
「だから見たことあるって!大丈夫なのこの会話!?」
冷や冷やの瞬に対し、城田は堂々と会場内を歩き始める。
「とりあえず白い食べものならランキング入りしているであろう。白いものを探すぞ」
「それお前独自のランキングじゃね!?」
「お、早速あったぞ。白い富山ブラックだ」
「白か黒かハッキリしろよ!!」
城田は瞬のツッコミを無視して、ずんずんと富山ブラックの屋台に歩いていく。
対して真美はイモリの丸焼きの屋台へ走っていってしまった。
「わーいイモリだ!食べて見たかったんだよねー!」
「あちょっと先輩!また魔女みたいなもん食べようとして!」
「瞬くんもいる?半分こしよーよ!」
「こんなにキュンとしない半分こは初めてです」
瞬が真美の暴走を捌いていると、城田がトレーを持って戻って来た。
トレーにはラーメンとカレーが乗せられている。
「お前たち、何をもたもたしているのだ。我はもう最初のグルメを選んで来たぞ」
「城田さん早いね!何選んで来たの?」
「白い富山ブラックと紫のグリーンカレーだ」
「もう絵の具バケツぐらい色ぐちゃぐちゃじゃねえか!あと紫のグリーンカレーって初号機カラーなのなんで!?」
「瞬くん、そのツッコミはギリギリ過ぎない!?」
珍しく真美が瞬にツッコミを入れる。そんな二人を余所に、城田は早速食べ始めた。
「あ、これやっぱ食べてからランキング発表される感じなんだね?」
「そのスタイル見たことあるんだってば。大丈夫なのかよ……」
「うむ、美味であるぞ。トップ3入りは間違い無いな」
自信満々な城田を不安そうに見つめる瞬と真美。そんな二人が見えていないかのように、城田はもりもりと食べてあっという間に二品を平らげてしまった。
「美味であったぞ。たまには豆腐以外も良いものだな」
「お前普段豆腐しか食ってねえの!?修行僧か!!」
ではランキングを発表しよう。白い富山ブラックは、第……。
「地の文がランキング発表すんの!?いや確かにこの小説におけるナレーションではあるけども!!」
68位〜!!
「低っ!!かすりもしてねえじゃねえか!!」
「まあ城田さんの食の好みって特殊そうだしね」
二人が呑気な会話をしていると、城田に雷が落ちる。
「ぐあああああああ!!!!」
「え待って待って、制裁強烈すぎない!?」
「俺たち外したらあれ食らうんですか!?死ぬって!!」
焦る二人に、アフロになった城田が声をかける。
「大丈夫だ。お前たちは我の力でゴムのような体質にしてやる」
「違う意味で大丈夫じゃなさそう!!」
「さあ、続いては紫のグリーンカレーだ。何位だろうな?」
「なんでお前この罰ゲーム知ってて二品持って来られたんだよ!どえらい根性してんな!!」
紫のグリーンカレーは、第……。
「この瞬間ってドキドキするよね。テレビで見ててもだけど」
「俺は落雷に当たりたくないって意味でドキドキしてますよ」
96.7位〜!!
「小数点はどういう意味!?」
「あれだよ、多分左腕が無い人とか来たんだよ。赤髪の海賊っぽい人」
「おお余計な文を足さなきゃセーフだったのに!!」
スレスレの会話をする二人の前に、またしても雷が落ちて来て城田に直撃した。
「のおおおおおおおおおお!!!!」
「お前神なんだから自分で落雷対策しろよ!」
プスプスと黒い煙を上げながら、城田が口を開く。
「我は我自身に力を授けられないのだ。人間を強化することはできるのだが……」
「神様って結構不便なんだね。じゃあ今度から私の魔法でなんとかしてあげる!」
「最初からしてあげられませんでした!?」
「さあ、次はお前たちの番だぞ。今度こそ、トップ3に入っていそうなものを選んで来るのだぞ?」
「外しといて偉そうに言うな!!」
城田のせいで緊張感が無いが、瞬と真美の心臓は早鐘を打っていた。
果たして二人は落雷に当たることなく、この世界を脱出できるのか!?そして、アフロになった城田はどうやって元の髪型に戻るのか!?
次回「城田保和糸の縮毛矯正日記」
絶対見てくれよな!
「興味無い方に重きを置いた次回予告!!」
「まあ一応この小説の主人公城田さんだしね……」
「だとしてもだよ!!縮毛矯正日記は本題からズレすぎだろ!!」
「そこは私たちが軌道修正するしか無いね。頑張ろ?」
「はあ……。なんで俺たちがこんな苦労を……」
ポジティブな真美を、瞬も見習って欲しいものである。
「だから地の文が感想言うな!!」




